表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

室内

【ep.1 正誤表】

 × 20-84

 ⚪︎ 20-64


 お詫びして訂正いたします。



 ⃘の帰るはずだった場所を ⃞が視界に収めた時にはもう日が暮れかかっていた。

「ただいま」

 教わった通りに塀を回りこむように進んで見つけたモニターに声をかけると一瞬で認証が終わり、さも当然のようにセキュリティは訪問客を招き入れた。

 本当に入れた……

 ⃞は安堵した。声質も目鼻立ちも自分でも言っていた通りそのものだったが、こんな時代の豪邸のセキュリティを突破できる程……? やはり双生児だったんじゃないか。この屋敷には何かがあるような気がする。例えば本当は自分の家はここで、自分は何かの拍子にそれを忘れるとともに別の記憶が脳に浸透したのであって、⃘はそういった思考状況を探知してこの家に取り憑いたアンドロイドスパイウェアか異星人だったんじゃないか。


 入り口横の雨除けの下には「セグウェイ」がある。まさか玄関から門へ移動するためだけに、例えば屋敷の中で「セグウェイ」に乗ったのち、召使いにわざわざ玄関を開かせ、見送りの挨拶を背中に受けながら颯爽と飛び出し、門の前まで着いたところで「セグウェイ」を下車してここに立て掛けて、一連をなかったことにして街へ歩き出すんじゃないのか。

 乗らないでおこう……

 自分は何も判らない。これに乗っていいのかどうかも、この家のしきたりも、その主人も。

 玄関の重い扉を開けると同時に、ハウスキーパーらしき女性が此方にお辞儀をした。

「お帰りなさいませ」

 頭を上げるなり顔に驚きの色が浮かんだ。垂れた血が悲惨な ⃞を気遣わしげに振り向きながら治療キットを運ぶドローンのスイッチを取りにいく傍ら、既に誰かに連絡を走らせている。


 エントランスホールに取り残されてシャンデリアを見つめていると⃘に出会う直前の酩酊したような心地が近づいてくるような気がした。

 広い絨毯に高い天井に心音まで吸い込まれてゆく大豪邸は水を打ったような静けさだった。程なくして手当てに必要なものを載せたドローンが音もなくふわりと現れた……


 その後 ⃞が楽園で過ごした上品な時間を仔細には描こうとしない。それは作者が経験の無い事を書けるほど想像逞しくないからで、それはさておきここで世界観に少しく質量を持たせる目的で地政の異状を瞭然とすべく宇から日本を見てみよう。おや、あれに見えるは日本文化のご先祖様こと世界の中華がよく倭国を悪し様に罵るときに謂う通りの小日本じゃないか。御想像に違わず本州のみである。宗主国様はどうしたというのか。視界の端、右手に見える、生死を問わない「寝そべり族」が無言のうちに物語るのは鎮痛剤Fentanylを始めとした医薬品のオーバードーズが猖獗した末路だった。技術革新が人をダメにしてソファではなく地面に仰臥させるのは何の因果なのだろう。もちろんその発祥の国もそれはそれで紊乱というより糜爛していて、というか世界が全体的に荒廃していた。特に韓国は性別による徴兵の有無が引き起こす政治観の齟齬などが災いし出生率が0.72から持ち直さず少子化した末に大陸からの移民に押し除けられ事実上消滅し、そのディアスポラを根拠に旧約聖書の発祥は朝鮮民族にあると主張しだした辺りで各国のユダヤコミュニティが動くなどしたし、北朝鮮は核実験の大成功で物理的に消滅した。

 蜘蛛の子のように周辺各国に散った北の工作員達は本当に後継団体を作らず、北朝鮮反体制派「N」こと「新朝鮮」は本当にそれらを無くし得たか。


 継承が期されずしては何事にも未来はないが、ところで利己主義に固く膠着した国家にはそれを消費する穀潰しが涌いていた。

 かつて反出生世代だった高齢者が民主主義を吾が世の春と謳歌し消費行為にゴールテープを切るような耽溺を果たす陰では、中年が若年をいびることで世代性の屈辱を晴らし、若年がその報いとして運命を切り拓くつもりで臓腑を切り拓くそのとき遺骸の喉に凶器を突き立て思想性と大義の旗印とする殺人が空前絶後の大ブームだった。

 国語辞典の「切腹」が憂鬱な更新を済ませた亡国にはそろそろ受け継ぐ美徳が沮喪していたし、ひいては武士道という理想化された概念に肖ろうとする精神性そのものさえ苦しい増長や何かの間違いだったように赤面で語られる始末だった。


 断種法じみて効く令和教養主義の台頭に掻き立てられ得た人々は合理的な主体として画一的に行為した。格差拡大の中で物質主義は徹底的な退歩を示し哲学的開眼をもって観念こそ本体であると認識するに至る中上流階級のコードはVR空間への人工流出を後押しし、都心部も閑静だった。生活の面白い部分だけを恣意的に切り貼りしたダイジェストが本体であるように装う他所行きの活動のマンネリ化を飽食の極め付けに飲食店すら配送対応しなければ市場から淘汰される時代、出店とは極々僅かな業種を除いて既にフィジカルな概念ではなかった。

 相対的にブルーカラーの闊歩する各工場とその最寄り駅の間こそが最も景気良く人間の欲を望み退廃的に煌めく消費の力場となったが、嘗て中の上レベルの人間がこぞって飾って見せびらかしては喜んだその光輝も、物質的恍惚が豚の餌として蔑視される今日日、ガス灯よろしく鄙びて見える。


 デジタルトランスフォーメーションのほぼ完遂された区役所では苛烈な市場競争による志望倍率の高騰も相俟って人手がとても足りていて、どんな手続きも速やかだった。緑化の亢進したメトロポリスをバックにしたらクロマキーで抜けでもしたのか存在感ごと透明化した黒塗りの高級者こと緑の狸の努力が如何程だったのかについては都民一般に知る権利がない。

 そう、都知事はご存命だったのである。

 シンギュラリティの飛翔が創薬における死の谷を過去にし、老いが治療可能な病となった今、君が代発祥の地である揖斐川の長さ(㌖)に想いが馳せる宝算百十四、第126代天皇も半世紀前と何らお変わりのないご健勝ぶりであらせられた。


 翻って元仮想敵国、共産主義の国家元首も名誉(権力)の平等にだけは我慢ならなかったようで、大きなことを成し遂げなければならないと感じつつ残酷に近づいた任期満了に焦っていた。

 格差社会のエリートとは国家総動員法に基いて集められた鉄で製造される大砲のようなものだが、大きな政府の恐喝で先立つ軍事力にさせられた其等哀しき脱法兵器の多さに日本は長らく苦しめられてきた。2022年に制定された重要土地等調査法も(概ね)効果を示して国土の売買を抑制していたが、その年には既にGATSへの批准を見送って十数年が経っていた。原野商法も外交問題となっては一つの賭けであり、損益は密輸された僅かな重火器と乏しい兵力で築かれた砦の攻撃力やそれを起点にした内乱というリスクと、その利殖商法による防衛力強化というリワードの兼ね合いで決まる。欲シガリマセン勝ツマデハが標準装備のような人海に、各々自由にコントロールを失って墜落するように平和呆けをかました上で胡座をかいている無勢が勝る筈がなく、我が国の民間防衛は制圧された。

 沖縄と北方領土に留まらず九州と北海道まで侵犯された頃、日本島のマイノリティである先住民族日本人も流石に日常の選択ひとつひとつの政治性を意識する形で緩く堅く結束し、失敗続きの専守防衛に待ったをかける右傾化にて日本帝國の再臨が望まれた。政治上の責任を天皇に負わせるべきではないというフィクサーの鶴の一声から象徴天皇制が護持されたが、その陰では国家の綻びを獅子身中の虫が持ち味の消化酵素で甘い汁に変換して啜り斃すゲームが続行される運びとなった。終に四国まで中国になり、讃岐国阿野郡の牛川村があった場所、香川県が敵の最前線である。


 朝鮮総聯しかり同和団体しかり、なぜ「連合」と名の付く組織の影には共産圏の影がちらつくのか。

 なぜ、なぜ勝共連合を創設した旧統一教会のトップ文鮮明は、日本が拉致被害者奪還に向けて経済制裁を強める北朝鮮へ5000億円という少なからぬ額を献金したのか。

 安倍元首相が金日成の命日に暗殺されて地球上の左派がどんな気持ちになったか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ