蒸しタオル
「ぐずっ…ぐずっ…」
「ゆめ、良い子」
「夏希ありがと…もう大丈夫…」
「本当に?」
「うん」
夏希は私を離すけれど、心配そうな顔をしている。
「ゆめ、温めたタオル持ってきてあげる」
夏希は蒸しタオルを作りに行く。その間に涙を拭いて鼻水をかむ。
「持ってきたよ」
「ありがとう」
夏希から蒸しタオルを受け取って、顔を拭く。蒸しタオルの優しい温かさに、顔がすっきりするだけじゃなく心もすっきりする。
「ふぁー。あったかくて気持ちいい」
「ふふ、よかった」
ちらっと夏希を見る。
「泣いちゃってごめんね?」
「謝ることじゃないよ。ゆめは怖い思いしたんだから、もっと甘えていいの」
ぷんすこと怒る夏希に、思わず笑う。
「あはは!うん、じゃあ甘えるついでに二人でプリン食べたいなー」
「プリン?いいね。ゆめの退院祝いにと思ってちょうど昨日、ゆめのお気に入りのお店のプリンとチーズケーキとマカロン買っておいたんだ」
「え!?本当に!?」
「うん。賞味期限もまだあるから急がなくていいけど、せっかくだしプリンは今食べちゃお」
「わーい!」
夏希がプリンを持ってきてくれて、二人で一緒に食べる。
「んー、この固めのプリンが美味しいんだよー」
「固めプリン大好きだもんね」
「とろとろプリンとかクレームブリュレとかも好きだけど、レトロプリン大好きー!」
「ふふ、よかった」
優しく微笑む夏希に安心する。やっぱり夏希のそばが一番落ち着く。
「夏希、あのね」
「うん」
「今日も夜、一緒に寝てくれる?」
「もちろん。…もしかして、夜寝るの辛い?」
「ううん、寝れてるし睡眠不足とかはないけど…一人はやっぱり怖くて」
入院中はどうしようもなかったけど、やっぱりあの時みたいに夜暗いところで一人はしんどい。
「ごめんね、ゆめ…僕本当に気が利かないね…」
「え、そんなことないよ!」
「ゆめを一人にするんじゃなかった。入院中もそばにいれば良かった」
「いや、それは無理だって」
夏希の言葉に思わず笑う。
「ふふ、あはは!まあでも、その分今日から毎晩一緒に居てよ」
「うん、もちろん」
「夏希と一緒にいれば、なにも怖くないね」
私がそう言えば、夏希は私を抱きしめる。
「もう二度と、誰にも傷つけさせないから」
「ふふ、うん。信じてるよ」
「…愛してる」
ぎゅうぎゅう抱きしめられてそんなことを言われて、思わず赤面する。
「な、夏希」
「ゆめがいないと、僕は生きていけない」
やっぱり、夏希の方が色々重症だなぁと思いつつ抱きしめ返す。
「夏希を置いていったりしないから、大丈夫だよ」
「うん…」
「夏希も甘えてくれていいんだからね」
「じゃあずっと家にいて…」
「それはだめー」
こんな夏希とのやりとりも楽しくて、私は心から笑えた。




