泣きじゃくる彼女を抱きしめる
…結局、あの桃とかいう女はやっと起訴されたらしい。今は拘置所だ。少しだけホッとする。
ゆめは防犯ブザーを持ってくれて、GPSアプリも入れてくれた。
僕ももちろん防犯ブザーを持って、GPSアプリを入れている。
これでお互い安心だ。
だから、起訴されたことは伝えても大丈夫…かな。
「ゆめ」
「なに?夏希」
「今日退院したけど、通勤は明々後日からでしょう?」
「うん、夏希もだよね」
「そうだよ、だから…ちょっと不安にさせるかも知れないけど、大事な話をしよう」
ゆめと向き合う。ゆめはきょとんとするものの、聞いてくれる姿勢になった。
「さっきはゆめは心配しなくていいよって言ったけど…伝えておくね。あの桃とかいう女、起訴されたよ」
「え」
「今は拘置所。だから、しばらくは安心して過ごせるよ」
僕がそう言うと、ゆめは涙をぼろぼろ零す。
「え、ゆめ!?」
「あ、ご、ごめんね!その…安心したら涙が…」
そんなに不安にさせてたのか。いっそもっと早く教えてあげるべきだった…?
ともかく、ゆめが落ち着くまで抱きしめる。震えてしまって、可哀想に…!
「でも、捕まってくれて起訴もされてよかった…怖かったから」
「そうだね」
「うっ…ぐすっ…」
「いいよ、今は思い切り泣いて。怖かったね。今日まで、ずっと気を張ってたんだね。ごめんね」
「うぇえええっ」
子供みたいに泣き始めるゆめを抱きしめて、改めてゆめにこんな思いをさせたクソ女に怒りを抱く。
とはいえ、ゆめを守る責務がある僕は直接手は下せない。なので、あとでゆめのために弁護士を入れて、民事訴訟であのクソ女をさらに追い詰めるつもりだ。
まあ、どうしても今はまだ戸籍上他人の僕にしてあげられることは少ないけど…信頼できる弁護士を探して紹介して、弁護士費用を負担するくらいならできる。
「ゆめ。大丈夫、大丈夫だよ。ずっと我慢してたんだね、よく頑張ったね」
「夏希ぃーっ!怖かったよーっ!」
「うんうん、怖かったね。ゆめはずっと不安だったんだね。ごめんね」
「うぇえええっ!」
…いっそこのまま外に出られなくなって、家に居てくれたりしないかな。
「ゆめ、怖かったらずっと家に居てもいいんだよ。ゆめは僕が養うから、もっと甘えていいんだよ」
「それはだめ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ」
「…だめか。うんうん、わかったよ。ゆめの嫌がることはしないから大丈夫だよ」
「夏希だい゛ずぎぃ゛っ!!!」
「うんうん、僕も大好きだよ」
まあ、とりあえず今日ゆめがここまで感情を爆発させられたのは良かった…かな。抱え込んじゃうからね、ゆめは。気付けないなんて、僕もまだまだだな。入院した時点で泣かせてあげられたらよかったのに。




