朝ごはん
「夏希ー!髪乾かしてきたよー!」
「ん、おかえり。ご飯もちょうど準備終わったよ」
「わあーい!夏希のご飯ー!!!」
「ふふ、ゆめは僕の手料理好きだよね」
「うん!とびきり美味しいからね!」
久しぶりの夏希のご飯に胸が弾む。席に着く。
「じゃあ、食べていい?」
「もちろんだよ」
「いただきます!」
「いただきます」
「うん、やっぱり美味しい!」
焼き魚は完璧な焼き加減、ご飯もふっくら炊けて美味しくて、味噌汁は優しい味。ほうれん草の白和えやたくあん、ひじきの煮物もとっても美味しい!
「やっぱりこの味だぁ…好きなんだよねぇ…」
「ふふ、そう?」
「うん…たまぁに頑張って自分で作ろうとしても、こうならないしさぁ。結局冷凍食品に戻るんだよねぇ」
「…そっか。これからはまた、僕が作ってあげるからね」
「うん!楽しみ!」
幼い頃からずっと一緒だった私たち。実家はお隣同士で、お互いに家を行き来していた。
私の親は共働きの夫婦だった。親が家にいない私。夏希は夏希で、資産家の両親は色々忙しかったらしくやはり親が家にいない。私たちは寄り添いあって生きていた。
親から冷凍食品を食べるように言いつけられていた私に、夏希は冷凍食品より美味しいよと家政婦さんに多目にご飯を作ってもらって私にも分けてくれて。
そして、夏希は大きくなると自分でも家事をしてみたいと、自分の分の料理や自分の部屋の掃除だけ率先してやるようになり、家政婦さんに教わっていて。
凝り性の夏希はいつのまにか家政婦さんを超えるほど家事上手になり、特に料理の腕は最高になったのだ。そしてやはり、私に度々ご馳走してくれていた。本当、ありがたかった。
「やっぱり、私には夏希が一番だよー」
「そ、そう?そうかな、そうだよね!ぼ、僕も…僕にも、ゆめが一番だよ」
「私たち、お互いが必要不可欠だよねー」
「だ、だよね!」
「…あれ?でも、私なにか夏希の役に立ってる?」
いつも私が夏希に甘えてばかりなんだけど。
「う、うん!僕ね、ゆめが大事なんだ!ゆめの存在が、僕の支えで!僕にとって、ゆめがいてくれることが既に役に立ってるというか…なんというか…はは、僕なに言ってるんだろ…」
「…〜っ!!!夏希ーっ!!!!!」
ご飯を食べている最中にお行儀は悪いんだけど、食べるのを中断して席を立ち、夏希に抱きつく。
「え!?ゆ、ゆめ?」
「夏希大好きー!私も夏希が心の支えだよー!」
いつだって、辛い時には夏希がそばにいてくれた。昨日、ドS野郎に夜の相性の悪さから別れを告げられた直後も。泣いて電話した私の元に駆けつけてくれて、自棄酒に付き合ってくれて。こんなダメな私なのに、いつだって見捨てないで寄り添ってくれる。
「…あのね、夏希。ずっと、これからも…そばにいてくれる?」
「もちろん、そのつもりだよ。これからずっと、ゆめのそばにいるからね。ゆめが嫌がっても」
「うん!ふふ、ずっとだからね!」
「うん、ずっとだよ」
その後食事を再開したけど、やっぱり夏希のご飯は美味しかった。