雑魚寝
「夏希は今日は休んだの?」
「うん、有給ゆめと同じくらい余ってたからゆめの退院まで使い倒すことにした」
「え」
「どうせ残る有給もゆめと同じくらいだし、いいよね?」
「いや…ええ…?」
まあ、有給って何かあったらそりゃ使うよね…うん。夏希にとって私の怪我は一大事だもんね、うん。私も同じ立場なら無理言って休んで夏希とずっと一緒にいるし…そんなことにはならないとは思うけど。
「…会社の人には、なんて?」
「そのまま状況説明した。というか、あの桃って奴が逮捕されたから大体知られてた。僕の顔を見た竜峰が酷い顔してるからって追い返して来て…有給申請後で出来るようにしてくれるって、竜峰が」
その竜峰って人がぼろぼろの夏希をフォローしてくれたんだ。感謝しなきゃ。本来なら有給申請って事前にしなきゃいけないのに。
「竜峰さんって人、いてよかったね」
「うん…幼馴染ちゃんのこと守れるのは夏希だけだろって喝入れてくれた。それがなきゃ僕…」
「夏希…」
泣きそうになる夏希を抱きしめてあげたいけど、体が痛い。くそぅ。
「…とりあえず、明日も明後日も毎日来るから。面会開始の十四時から終了の十九時まで居座るから」
「…うん、もうそれでいいや。病院の許可は?」
「個室だから特別だよって」
「許可もらってるならまあ…うん…」
「ゆめ、手を握っててもいい?」
いいに決まってるだろうに、よほど心にきたらしい。
「いいよ。手を握ったまま椅子で雑魚寝しちゃいな」
「うん」
椅子に座って、手を繋いで、無理な体勢で眠りにつく夏希。最初は目をつぶって仮眠って感じだったけど、そのうち熟睡し始めた。よっぽど疲れたらしい。そりゃそうか。
そして、十八時に私の食事が運ばれてくるまで夏希はナースさんが来ようが担当の先生が来ようが熟睡していた。
ナースさんも先生も、夏希が本当に私を心配していたと教えてくれた。色々申し訳ない。
そして起きた夏希は困ったように笑って私に謝る。
「ごめん、熟睡してた」
「全然いいよ。夏希も食べる?」
「ゆめが食べて。僕は帰りにファミレス寄るから」
「昨日と今日食べなかった分までファミレスで食べてね」
「わかってるよ」
いただきますと手を合わせて、ご飯をいただく。そんな私の食べるところを観察する夏希。怪我したばかりなせいか、食べるのが割ときつかったけど夏希を安心させるため全部食べ切った。
「ああ、美味しかった!ご馳走さまでした!」
「よかった、食べてくれて。いっぱい寝て、はやく元気になってね」
「うん」
そうこうしていると、面会時間ギリギリになる。
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日」
夏希の背中を見送る。ちょっと寂しいのは内緒だ。食べ終わって少しお話して、そうして見送りも終わると急に眠気が私を襲う。眠気に任せてそのまま寝た。




