帰り道
仕事も終わって、帰宅する。里奈ちゃんとは途中まで一緒だったけど、その後別れると独りぼっち。街灯があるとはいえ、暗い道を歩いていくのはちょっとだけ怖い。…なんて、おばけなんていないとは思うんだけど。
そんな暗がりで、背後から足音がした。最初は誰か歩いてるのかなぁと思ったけど、足音は私の後ろまで段々近寄ってきて、背後で止まった。
あれ、止まった?なんで?
そう思っていたら、背中が熱くなって。
その後、痛みが押し寄せてきた。
「…っ」
あまりの痛みに、その場に倒れる。
背後から目の前に回ってきた女の子は、あの甘味処で出会った女の子だった。
「…桃の叶くんを取るからいけないの!!!」
叫ぶような責めるような声に、抗議したくても声すら出せない。
「叶くんはいつだって優しくて、頼りになって、かっこよくて、それなのにあの日桃を拒絶したのはあんたのせい!絶対そう!」
ああ、そうですか…。
「桃の叶くんを返して!返せぇっ!!!」
もう一度、今度は頭目掛けてナイフが振り下ろされて…。
「…ゆめちゃん先輩から離れろー!!!」
何故か里奈ちゃんが、あの子に捨て身でタックルを仕掛けたのが視界に入った。
「きゃっ!?」
「なにがきゃっだぶりっ子女!!!」
里奈ちゃんが一発あの子をぶん殴った。結構めちゃくちゃ重い音がしたんだけど大丈夫か。
「大人しくしなさい!」
里奈ちゃんがあの子を縛り上げ、安全を確保すると私に駆け寄る。
「ゆめちゃん先輩、待っててくださいね!」
「…っ」
お礼とか、なんでとか、色々言いたいけど痛みで声が出ない。
そして、里奈ちゃんがどこかにスマホで電話した。内容的に救急車と警察を呼んだらしい。その後、里奈ちゃんは私のスマホを操作した。指紋認証のためにスマホを差し出されたので、里奈ちゃんにも手伝ってもらいロックを解除する。
掛ける先なんて、わかってた。
「もしもし叶さん!?今大変なんです!すぐ来てください!」
ああ、これはあとで里奈ちゃんからも夏希からも怒られるかなぁ…。
「ゆめちゃん先輩、叶さんすぐ来るって!救急車も来てくれますからもうしばらくの辛抱です!」
「、」
言いたいことはたくさんある。声にならないのってこんなにもどかしいのか。
「ゆめちゃん先輩…」
ぼろぼろ泣く里奈ちゃんを抱きしめてあげたいけどそれも出来ない。里奈ちゃんは、大切な人が死ぬかもしれないとなると多分普通の人より取り乱す。お父さんのことがあるから。
「ゆめちゃん先輩…」
止まらない涙を無視して、必死でハンカチを横になった私の背中の怪我に当てて血を止めようとしている。この子に、こんな場面見せたくなかった。
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