愛妻弁当
二日間の休みも終わって、今日からまた仕事。ゆめとずっと一緒にいたい僕としてはとてもつまらないが、僕が会社を休んだところでゆめは仕事だ。意味がない。なので頑張る。ゆめにもかっこいいって思われたいし。
頑張ってやることをやって、疲れ果てた頃にお昼休憩の時間になった。デスクワークが目がしぱしぱして困る。目薬をさすと、朝作ってきたお弁当を広げた。
「夏希ー、一緒に食おうぜー」
だる絡みしてくる竜峰にうへぇと思う。その顔を見て竜峰は吹き出した。
「なんだよその顔ー、ちょっとくらいいいだろ?」
「はいはい」
「それ、愛妻弁当?」
竜峰に言われて、顔が真っ赤になる。片手で隠すが多分意味はないのは知ってる。
「え、マジ?いいなぁ」
「まだ、まだ妻じゃないけど…」
「まだって強調するなぁ!はは、そんな好きなんだな」
こくりと頷けば、髪をグチャ混ぜにされた。
「ちょっと」
「いいじゃんいいじゃん、よかったな報われて」
「うん…」
「お前相当その子のこと好きだもんな」
普段はそんな話自分からはしなかった。けど飲みの席で酔った時めちゃくちゃ語ってたらしい。その後は面白がってわざと酔わされてゆめの話をさせられてたらしい。まあ、竜峰がほどほどのところで介抱してくれたらしいけど。
「幸せにしてやれよ?」
「絶対する」
「よし!…で?幼馴染ちゃんって料理苦手って言ってたけど味はどうなの?」
「朝、一緒に作ったから美味しいよ。そもそもゆめは手先は器用だから。…まあ、火加減とか間違えちゃうみたいだけど」
「あらまあ朝からお熱いこと!!!」
きゃっ!とバカやってる竜峰は無視。竜峰の弁当からミートボールを一つ奪う。
「あ!」
「美味い」
「そりゃ俺の弟が作ったんだもん当たり前だろー」
「ブラコンめ」
「はは、ていうかお前もなんか寄越せよー」
竜峰がそう言うから、仕方なく卵焼きを一切れくれてやる。
「ほい」
「さんきゅー、これ夏希の焼いたやつ?」
「ゆめが作ってくれたのは渡さない。このミニハンバーグは特に渡さない」
「はいはいはいはい…んー、夏希んちって甘い卵焼きなのな。うまー」
「ゆめが甘い方が好きらしいからね」
「あ、そっちですか…」
竜峰は遠い目をしてるけど、僕は知っている。竜峰は、僕のゆめへの熱量に負けないくらい弟を溺愛してる。まあ、愛してると言ってもベクトルが違うし種類も違う。純粋な家族愛だ。行き過ぎてるけど。
「…でも、その子も幸せだよな。そんなに愛されて」
「そうでもないと思うよ」
「え」
「ゆめは僕の執着を知らない。だから僕を選んだんだ」
「…隠し切れれば、幸せなんじゃね?」
ぽけっとした顔でそんなことを言う竜峰のおでこに、デコピンをお見舞いしてやった。
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