映画館
「着いたね、夏希」
「そうだね」
映画館に着く。大きな映画館だけあって、人も多い。はぐれないように、繋いだ手をぎゅっとした。
「あの映画だね」
「座席空いてるかな」
結構な人がいたけれど、奇跡的に二つ並んだ席が空いていた。二人で隣り合って座れるのはそこだけで、間に合って良かった。
「事前に予約しておけばよかったか」
「でもちゃんと二人で見られるよ」
「そうだね」
ポップコーンとポテト、コーラと烏龍茶を買って座席に向かう。
端っこの席だが、悪くはない。なにより大きめサイズで買ったポップコーンとポテトが私を魅了するのでなにも問題はない。
「映画鑑賞の醍醐味はこれだよねー」
「花より団子だね」
「だって、この空間で食べるポップコーンは至福なんだよー」
「わかるわかる」
そしてしばらくすると映画が始まった。ポップコーンを味わいつつ鑑賞する。
このアニメ映画は、幼馴染同士の甘酸っぱいほのぼのとしたお話らしい。
ストレスフリーで観られるほのぼのとしたストーリーだけど、ふとした瞬間のドキドキと両片思いのむず痒い感じがなんともクセになる。映画化するわけだ。
「ゆめ、ゆめ」
「なに、夏希」
「これにして正解だったね。面白い」
「わかる!最高だね」
今日の映画は当たりだ。本当に良かった。
そして、終盤。お互い両片思いだったことが発覚して、晴れて両思いになり付き合う二人。
慣れない触れるだけのキスをしたところでお話は終わった。
「ゆめ、ゆめ」
「なに?…ん」
夏希に、映画のラストと同じ触れるだけのキスをされる。
「…ふふ、あの二人を見習ってみました」
「もう、夏希ったら!…ふふっ」
二人でクスクス笑い合う。幸せを噛み締めて、映画館を出た。もちろん、手は繋いだままで。
「はぁ…映画最高だったね!」
「本当にね。ゆめと見られて良かった」
「私も夏希と見られて楽しかったよ」
実は、あの二人に私たちを重ねてみていたなんて口が裂けても言えないけど。
「このまま家に帰るのもいいけど、何か食べてから帰る?」
「うん、そうしよう!」
「じゃあ…あ、あそこに喫茶店があるね」
「行こう行こう」
二人で手を繋いで喫茶店に入る。
すると、思わぬ出会いがあった。
「あ、ゆめちゃん先輩!?」
「え、里奈ちゃん!?」
お一人様で喫茶店を楽しんでいた里奈ちゃんとばったり会ったのだ。
「ゆめちゃん先輩、良かったら相席しましょうよ!…て、あ、デート中か。彼氏さんですよね?ごめんなさい」
「いや、気にしないで?せっかくだから相席させてもらおうか、ゆめ」
「うん!」
「え、いいんですか!?やったー、休日もゆめちゃん先輩と一緒に居られるー!」
「ふふ、はしゃぎ過ぎだよ」
私がクスクスと笑えば、里奈ちゃんが照れ笑いする。夏希はそれをにっこりと笑って見守ってくれていた。




