結婚に向けての話し合い
「結婚後も、家はこのまま今住んでるところでいい?」
「もちろん良いよ」
「結婚式場の見学と予約も、近いうちにしようね」
「早くない?」
「十ヶ月前には予約しておいた方がいいらしいよ。早めがいいと思う。あ、結納プランの方もさくっとお願いしとこうね」
そうなのか。さすがは夏希だなぁ。頼りになる。私、そういうこと知らなかったからな。
「とはいえ、両家とも顔見知りだから緊張することはないね」
「気が楽でいいね」
「そもそも、両家の両親とも僕たちが結婚するものだと信じて疑ってなかったしね」
「…え!?」
なんで!?
「僕たちずっと仲良しだし、誤解されても仕方ないと思うけど」
「ありゃまあ」
「結局現実になったしいいんじゃない」
「まあそうか」
私がそう答えれば、くつくつと笑う夏希。
「なに?」
「いや…なにもかも上手く行き過ぎて楽しいなぁって」
「うん?」
「…僕は、ゆめと結婚出来るなんて嬉しいよ」
にっこり笑ってそんなことを言われて、顔が真っ赤になるのが分かる。
「わ、私も夏希でよかったよ…」
ごにょごにょとそう言えば、聞こえてしまったらしく更に笑みが深まる夏希。なんか悔しい。手のひらの上でコロコロされてる気がする。
「むむぅ」
「そうそう、それで…仕事は、どうする?」
ああ、来た。話し合わないといけないお話。
「…辞められない。実家への仕送りも、奨学金の返済もあるし」
さすがに、仕送りや奨学金の返済まで夏希の負んぶに抱っこは嫌だ。夏希とは、信頼できる対等な夫婦で居たいから。
…まあ、もう頼りきっちゃってる部分があるから今更なんだけど、でもそのラインはさすがに超えちゃダメだと思うのだ。
「…そっか」
「夏希は専業主婦希望だった?」
「そうだね、家でゆめが待っててくれたらとっても嬉しかった」
すごく落ち込んでる夏希に悪いことしちゃったなと思う。
「えっと、あの、夏希」
「でも、ゆめと結婚出来るなら少しくらい我慢しないとね。全部僕の希望を押し付けるなんて、よくないし。ゆめのこと、大切にしたいからさ」
「夏希…」
やっぱりかっこいいんだよなぁ。見た目も中身も。
「ゆめには、早く僕を好きになって欲しいからさ。その希望は叶えるよ。でも、飲み会とかはなるべく自重してね」
「えー」
「ゆめは酒癖悪いから心配なんだよ」
「えー」
そこは叶えてくれないらしい。




