処分
「リナが…そんなことを?」
「ああ。問答無用で不敬罪が適用される」
「そんなっ…!?」
「…はずだったが、今回は実際もっと重い」
「え…?」
治安部隊の人間がうちに来た。
と思ったら、数日前突然家を飛び出したリナがやらかしたと言われた。
不敬罪が適用されると聞いて真っ青になったが、それより重いと言われて困惑する。
「アンナ様は第三王子殿下とのご婚約を発表したばかり」
「は、はい」
「この意味がわからないのか?」
そこまで言われて、ようやく思い至る。
「ま、まさか…」
「国家反逆罪を適応すると、国王陛下がご下命なされた」
「そんなっ…」
国家反逆罪となると、問答無用で死刑となる。しかも、その家族にも当然責任は及ぶ。
この国では、連座で死刑まではいかない。だが、爵位や領地は国に没収されるし一生働いても払いきれない賠償金を背負わされる。
足りない分は鉱山で奴隷として働くことで返すしかなくなる。
年老いた両家の両親も、まだ幼い子供たちも例外なく奴隷として連れて行かれる。
もちろん僕も。
「ど、どうして…」
「あんたが手綱を握っておかないからだ」
「せ、せめて子供だけは!」
「いいやダメだ。ここまで丁寧に説明してやったんだ、もういいだろう。連れて行け!」
「あ…ああ…」
僕たちは、こうして留置所に連行された。
そして後日、それぞれバラバラに鉱山の奴隷として引き取られた。
妻の処刑に立ち会うこともなく連れていかれたのは、子供たちにとっては救いだっただろうか。聞けばアンナが第三王子殿下に、子供たちのためだと懇願してくれた結果らしい。
…僕があの時、アンナに見惚れたから。
僕がアンナのことばかり考えるようになったから、この悲劇は起きたのだろうか。
私の処刑の日。私は他の残酷な処刑ではなく、ギロチンにかけられることになった。「アンナ様のご慈悲だ」と言われたけれど、そんなもの要らなかった。
首を切られる間際に呪いあれと叫ぼうとしたけれど、処刑を見に来た観衆たちに顔に石を投げつけられたせいで上手く言葉が出なくてそれすら出来なかった。
首を切られて晒し首にされて、私の惨めな人生は終わった。
ああ、クレマン様どうして…。
どうして…?
「徹底的にやってもいいって言ったのに、結局甘いんだから」
サミュエル様にそう言われて頭を下げる。
「すみません、サミュエル様。でも、やっぱり可哀想で」
「子供たちが可哀想なのは分かる。あの元婚約者夫婦には知らせずに、奴隷ではなく孤児として施設に預けたのは百歩譲っていいと思うよ。けど、あの女の処刑方法まで優しくしてあげる必要ないのに」
「ごめんなさい、自己満足なのは分かっているのですけど…」
私がそう言うと、サミュエル様は私をぎゅっと抱きしめる。
「そんなことないよ。子供たちには救いになるはず。あの女は知らないけど」
「サミュエル様…」
「そんな優しいところも好きだよ」
そう言って頬にキスをされる。
リナさんのことを考えてブルーな気分になっていたけれど、それもかき消えて幸せな気持ちになった。




