第三王子殿下との婚約の成立
「ということで、婚約を正式に結ばせていただきますね?義兄上」
「はい。妹をよろしくお願いします、第三王子殿下」
「いやはやめでたいな」
「国王陛下、約束を守ってくださってありがとうございます」
「いやいや、それはこちらのセリフだ」
サミュエル様と私の婚約を正式に結ぶことになって、王宮に呼び出されたお兄様。国王陛下とサミュエル様、お兄様と私で書類にサインして婚約が成立した。
「お兄様、約束って?」
「婚約が内定した時の話だよ」
「それって?」
「九年前、色々あった時にアンナの知らないところで色々決まってたんだよ」
「え!?」
その言葉に驚いた。
「ど、どうして」
「僕はその頃にはアンナへの恋心を自覚してたから」
「え!?」
サミュエル様からさらなる爆弾が落っことされて頭が処理落ちしている。
「アンナが良いってその頃から言ってたんだけど、事件があって王妃殿下がお願い事を聞いてくれたからアンナとずっと一緒にいたいって言ったんだ」
そんな前から恋愛感情を持っていてくれたのか…全然気付かなくて申し訳ない…。
「王妃からその話を聞いて、私から兄君にお願いしてな」
「アンナの幸せのためならと、婚約の内定って形で受け入れたんだ。うちにとっても光栄なことではあるしね」
「でも、約束ってどんな内容ですか?」
私が問えば、お兄様は言った。
「『…あと数年後、第三王子殿下が結婚適齢期になる頃、それまで第三王子殿下が変わらず妹を愛してくれていたなら、望んでくれていたならばお受けしましょう』って言ったんだ」
「ええ!?」
そんなふざけた約束いいの!?
「『それまではこちらも新たな婚約は結びません。神に誓います。ですから、そちらも第三王子殿下が他の子を望まない限り他の女性と婚約は結びませんように。この条件で良いのなら、喜んで受け入れます』とも言っていたな」
「ええええええ!?」
よ、よく受け入れてもらえたというかなんというか…。
「まあでも、これでわかってもらえたかな」
「え?」
「僕がアンナを、ずっと前から本気で愛してるってこと」
そう言ってウィンクしてくるサミュエル様に、心臓がドキッと跳ねて顔が熱くなる。
「おや」
「ほう」
お兄様と国王陛下がそんな私に反応するけど、今はそれどころじゃない。
「さ、サミュエル様…ドキドキしてしまいますから…」
「本当に?嬉しい」
そう言って本当に嬉しそうに笑うサミュエル様に心臓が爆発しそう。
今まで本当に、一切恋愛感情なんてなかったのに!ずっと年下の、ずっとお世話してきた主人なのに!
「改めてこれから、よろしくね」
「は、はい…」
サミュエル様に対してあんまりにもときめいてしまって、私は撃沈した。




