とある少年の幸せの話
やっと、アンナを手に入れた。
アンナと初めて出会ったのは六歳の頃。人が恋しかった僕に、アンナはたくさんの愛情をくれた。
それどころか、様々な知識と健康もくれた。
兄上たちと交流するチャンスさえくれた。
そして、僕の世界は急速に拡大した。
「アンナと出会わなければ、いずれ僕は衰弱していただろう」
今ならわかるが、奇跡的な回復だった。
しかもその後、本宮に移って相応しい教育まで受けられるようになった。
それまでにアンナのくれた知識のおかげで家庭教師の先生にもついていけた。
アンナのお世話のおかげで、痩せてた身体も少しはお肉がついて見た目も良くなったからバカにされることもなかった。
「アンナがお世話係を辞めちゃうと聞いた時にはどうなることかと思ったけど」
結婚適齢期になったアンナは、お世話係を辞めるかもしれないと正直に話してくれた。
僕は兄上たちに相談して、婚約を邪魔した。
悪いことだったけど、その後の元婚約者たちを見るに結果オーライだっただろう。
「そして、あの事件が起こった」
アンナと僕の婚約が決まる理由になったあの事件。
僕の暗殺未遂。
傷を負ってしまったアンナには本気で申し訳ない。
今でもアンナの傷痕が身体に残ってしまったのがすごく辛い。
けれど。
「あの事件がなかったら、僕たちの婚約は多分なかった」
申し訳ないという気持ちに嘘はない。けれど、婚約できたことを喜ぶ自分がいるのも間違いない。
あの件で、父上も王妃殿下も味方についてくれた。
兄上たちも、僕の恋を反対しなくなった。
アンナのお兄様は怒っていたらしい。けれどもなんとか、僕とアンナの婚約を認めてくれた。
結果、僕たちは婚約できた。
「あの不快なアンナの元婚約者たちはまだ気になるけど」
結局、あの人たちはアンナに教会で正式に謝ったことで一応は許された。
曰く、あの人たちの領地の特産品も今では普通に売れて商売できてるらしい。
税収も安定しているとか。
ちょっとムカつくけど、アンナが許しているし神もお許しならば言えることはない。
神がお許しでないなら時間差になるが、きっとこの先罰も下るだろう。
「ともかく」
その後の僕はひたすらアンナに相応しい王子様になれるよう努力した。
たくさん勉強して、鍛えて、文武両道の王子様を目指した。
結果的に興味のない子たちから言い寄られるようになっちゃったけど、アンナと結婚できるくらいの男になれたと思う。
婚約を発表すれば、言い寄られることも無くなるだろうし。
「そして、思ったより唐突なタイミングになっちゃったけどこの婚約もアンナに伝えられた」
元々婚約は内定していたわけで、あとは正式に婚約を結んで大々的に発表するだけ。
…幸せすぎて、にまにましてしまう。
幸せだなぁ。
アンナのことも、幸せにする。
もっともっと、二人で末永く幸せになるんだ。




