どうして私たちがこんな目に
「どうしてよ!!!」
枕をベッドに何度も何度も繰り返し叩きつける。納得いかない。
おかしいとは思っていた。みんな我が家やクレマン様の家とのお付き合いを辞めて、領内も貧しくなっていって。
それが全部、あの女の所為だなんて!!!
「上手くやりやがって、あの地味女っ!!!」
怒りで手が震える。あの女、第三王子殿下のお世話係の地位を利用して上手く王家に取り入っていやがった。
なんて頭の回る嫌な女なのっ。
そして私とクレマン様の仲を裂くように、貴族連中に王家を利用して小細工をしたんだ。
「最低!本当に最低っ…」
そして、クレマン様は領民たちに迷惑は掛けられないからとある提案をしてきた。
それは…教会にて正式に、あの女に面と向かって謝罪すること。クレマン様と私の二人で。
「そんなのやだ…」
教会にて正式に謝罪するというのは、神の前で謝罪するということ。神の前で罪を認めるということ。それは貴族にとって最大の屈辱。
その屈辱を飲んで謝罪するからこそ、その後は許されるのだけど。
「やだよぅ…」
でも、領民たちのためと言われれば断れない。領民たちのおかげで私たち貴族は成り立っている。もし反発がすごくなったら、やっていけなくなる。
これ以上わがままは言えないと、頭ではわかっていた。
そして、それ以上にクレマン様に嫌われたくなかった。こんな悲惨な状況で、あの女には謝りたくないだなんてわがままを言ってしまえばクレマン様はきっと私に幻滅する。
「…謝るしか、ない」
もう、謝罪は避けられない。
「悔しいっ…」
私は何も悪くない、クレマン様に捨てられるあの女が悪いのにっ…どうして、こんなことに。
「自分は王家の信頼を得てお気に入りポジションになって、私とクレマン様を引っ掻き回すだけ引っ掻き回すだなんてっ…性格が悪いよっ…」
王家の人達だって、見る目が無さすぎるよ…あんな女より、クレマン様の方が何倍も素敵な方なのに。
クレマン様に責任を被せて、あんな女を庇うだなんて。
「でも…もうどうしようもない」
クレマン様は正式に教会に連絡を入れて、謝罪の場をセッティングした。あの女も受け入れたらしい。あの女の兄も、妹が良いならと公的な謝罪を受けることを許したそう。
もう、逃げ場はない。
そもそも、クレマン様とのこれからの幸せな結婚のためには涙を飲んで謝罪する他にないんだ。
「うっ…ぐすっ…」
どうして私たちがこんな目に。クレマン様に相手にされない容姿のあの地味女が悪かったのに。どうして。




