第三王子殿下をお姫様抱っこして少しお散歩
「ところで第三王子殿下」
「なあに?」
「今日はまだお外に出ていませんよね?」
「…?お外?」
きょとんとする第三王子殿下に血の気が引く。え、まさか。
「あまり、お外には出ませんか?」
「病弱だから、出ちゃダメだって」
なんということか!せっかくあんな広くて綺麗なお庭があるのに!
本宮の方には近寄らないとして、離宮の周りくらいは見せて差し上げたい!
…というか、そもそも陽の光あんまり浴びてないのか!少しずつでも慣らさないと!!!
「じゃあ、今日からアンナのお散歩に少し付き合ってくださいませんか?」
「え、いいの?」
「ええ、あまり長い時間は無理ですが」
私の腕力的に。
「では、行きましょう」
「う、うん」
私は第三王子殿下をお姫様抱っこする。軽い。軽すぎる。とはいえ、私も力持ちではないのでちょうどいいくらいなのだが。
お庭に出て、第三王子殿下に花を見せる。
「ほら、第三王子殿下。ここがお庭ですよ。これがお花です」
「わあ…!すごい!」
第三王子殿下は目を輝かせる。今日はちょうど、暑くも寒くもなく柔らかな日差しが降り注ぐ良い日だったので第三王子殿下には庭を堪能してもらう。
「ねえ、アンナ。アンナはどれが好き?」
「そうですね…この白い薔薇ですね」
「ふふ、綺麗だもんね!匂いもいいなぁ」
「それもありますが…」
第三王子殿下がこちらを見る。
「?」
「…なんとなく、第三王子殿下のイメージにぴったりな気がして」
自分で言って照れてしまう。そんな私を見て、第三王子殿下は笑顔になる。
「そうかなぁ…ふふ、アンナにそう言われると嬉しいなぁ」
「て、照れますね」
「じゃあ僕はあっちのチョコレート色の薔薇が好き!アンナみたいだもん!」
んんんんんんん!!!私の主人は世界で一番可愛い!!!
「あ、ありがとうございます。第三王子殿下」
「ふふ、うん」
こんなに可愛い人は世界を探しても他にいないだろう。なんて愛おしいのか。
「あ、そろそろお部屋に戻りましょうか」
「え、もう?」
「はい。明日はもう少し長めにして、ゆっくりと身体を慣らして行きましょう」
「はぁい…」
聞き分けの良い第三王子殿下に少し胸が痛くなる。良い子すぎる。このくらいの年齢ならわがまま放題なものだろうに。
「時間も時間ですし、戻ったらお食事にしましょうね」
「お食事かぁ…」
第三王子殿下を連れて、お部屋に戻る。第三王子殿下がベッドの上で少し休んだあと、食事が運ばれてきた。
第三王子殿下は食事を見て、しょんぼりとした。