婚約の内定
「ということで、サミュエルとアンナ嬢との婚約が内定した」
「おめでとう、サミュエル」
「よかったな」
父上とラジエル兄上とラファエル兄上に呼び出された。と思ったら、婚約が内定したという。
アンナの兄君はアンナに傷をつけたのには怒っていたらしいけれど、婚約自体は僕がアンナを数年後変わらず愛していれば認めてくれるらしい。
「ありがとうございます、父上。ラジエル兄上とラファエル兄上も、本当にありがとう。でも、数年後って…?」
「サミュエルの結婚適齢期…というと、今はまだ九歳だから…十八歳くらいっていうと、九年後かな」
「な、長い…」
「長いなぁ、諦めるか?」
「やだ!」
諦めるかと言われて即否定する。九年は長すぎるけど、アンナとの婚約のためだ。九年だって千年だって待ってやる!
「なら、一途に想いつつ待っていなさい。もし心変わりしたらすぐに言いなさい」
「心変わりなんてしない」
「そうか」
父上は僕の頭を撫でる。そして、アンナ嬢には秘密だぞと再び言い聞かせてくる。わかってるってば。
「では、もう下がって良いぞ」
「はい、失礼します。ほら、サミュエル。行くよ」
「失礼します、父上」
「…父上」
「なんだ」
父上ににっこり笑う。
「本当にありがとう!…失礼します!」
そして頭を下げて部屋を出た。父上はなんとも言えない顔をしていたけど、まあ伝わることは伝わっただろう。




