再会
「アンナ、アンナ…よかった、また会えたっ…」
「第三王子殿下…ご無事でなによりです…!」
「サミュエル」
「え?」
「サミュエルって、呼んで…?」
僕の言葉に、少し迷ったように視線を彷徨わせた後アンナは僕を呼んでくれた。
「サミュエル殿下」
「サミュエル!」
「…サミュエル様?」
「…うん!」
カサカサに掠れた声だけど、声が出て良かった。アンナにやっと、名前を呼んでもらえた。
「サミュエル様、お声が…」
「お茶飲めば大丈夫」
「ではどうかこちらを」
アンナがベッド近くのテーブルに置いてある、温かなお茶を差し出してくれた。
「うん」
ごくごくと飲んで見せればほっとした顔。やっぱりアンナは可愛い。
「サミュエル様、少しお顔が…」
「最近眠れなくて」
「大変っ…!少し寝ましょう!」
「アンナと離れたくない」
「なら一緒にお昼寝です、こちらへ!」
アンナがベッドをぽふぽふ叩くので、お言葉に甘えてアンナの隣に潜り込む。
ラジエル兄上もラファエル兄上も、邪魔はしないらしい。
「ご飯は食べてますか?」
「あんまり」
「じゃあお昼寝の前に何か食べますか?」
「お昼寝の後、アンナと一緒に食べる」
「わかりました。では、まずは寝ましょうね」
アンナが腕枕してくれて、もう片方の手で背中をトントンしてくれる。それにほっとして、気付いたら本当に寝ていた。
「ん…」
「おはようございます、サミュエル様」
「おはよう、アンナ…」
いい匂いがして目が覚めた。そしたら、僕の好物ばかりがアンナのためのテーブルの上に並んでいた。
「さあ、起きてすぐですが食べられますか?」
「うん、あの、これ…」
「私がリクエストしました!」
アンナが自信満々に言うから、思わず笑う。自分の好きなものにすればいいのに、やっぱりアンナは可愛い。
「さあ、一緒にお腹いっぱい食べましょう!」
「うん!」
ラジエル兄上もラファエル兄上もいつのまにか居なくなっている。空気を読んでくれたのか、単に忙しいのか。
「はい、サミュエル様。あーん」
「あーん」
どうやらアンナは幼い頃のように僕を甘やかす気なようなので、素直に甘える。アンナの手ずから与えられるご飯は、すごく美味しかった。
そんなこんなでこれでもかと一日中アンナに甘えたので、少し精神的に落ち着いた気がする。ふとアンナを見れば、憑き物が落ちたようにすっきりした顔。
「サミュエル様」
「なに?」
「ずっとお側にいさせてくださいね」
「…いいの!?」
アンナの思わぬ言葉にびっくりする。僕のせいで撃たれたのに、なんで?
「もちろんです。怖い思いもしたけれど、やっぱりサミュエル様と一緒にいられるのが一番幸せなので」
「…アンナ、大好き」
ぎゅうぎゅうと抱きつけば、強く抱きしめ返してくれるアンナ。
その後僕はラファエル兄上に回収されてしまって、部屋に連れ戻されたが明日もアンナに甘えに行っていいらしい。
そんなこんなで、僕自身も憑き物が落ちたように回復したとメイドたちに言われるほど元気になった。




