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【長編版】病弱で幼い第三王子殿下のお世話係になったら、毎日がすごく楽しくなったお話  作者: 下菊みこと


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内々で処理される

「祖父上は、なにがしたかったのか未だに理解できない…」


結局。祖父上は伯父上によって別邸に幽閉されたらしい。伯父上は自ら王家に多額の献上金を納めた。賠償金の代わり、なのだろう。本来ならそれだけで許されることではないが、この件を表沙汰にしたくない父上にとっては都合がいいらしい。


「父上は、兄上の王位継承に障るから…この件を表沙汰にする気は、ない」


こちらとしては不満たっぷりなのだが…父上はサミュエルの暗殺未遂事件を隠蔽。箝口令をしき何事もなかったことにした。ただ、サミュエルの護衛は増やしたらしい。全て、俺と兄上のためだろう。嬉しくはないが、どうしようもないことだ。


「サミュエルやアンナはもちろん、母上も心配だよなぁ…」


母上は何も言わないが、その実塞ぎ込んでいる。けれど公務は完璧にこなして、何事もなかったように振る舞っている。…ただ、俺や兄上を明らかに避けている。父上にすら公務以外で近寄ろうとしない。


「…で、一番の問題は」


アンナとサミュエル。アンナは、この数日でだいぶ回復した。医者の治療とアンナの回復力のおかげだろう。痕は残るそうだが、命には別状はないらしい。


サミュエルは…声が未だに出ないらしい。もう涙も枯れた様子だ。


今まではアンナの回復を優先させてサミュエルとは会わせていなかったが、色々限界だろう。兄上も同じ考えのようだったので、これから兄上と一緒にサミュエルをアンナの元に連れて行くことになった。


「…よし」


先にサミュエルの部屋に行っている兄上の元に向かう。部屋をノックして声をかける。


「兄上、サミュエル。俺です」


「入っておいで」


兄上の声に、ドアを開ける。窶れた弟は、兄上の手をぎゅっと握ってドアの方に引っ張っている。アンナの元に行こうとしているのだろう。


「サミュエル、焦らなくても今連れて行ってやるから」


「…!」


「そうだよ、サミュエル」


サミュエルは俺の手も握り引っ張る。なので抱き上げてやった。


「サミュエルの歩幅に合わせて行くよりこっちの方が早いだろ。行くぜ」


「アンナの元にすぐに行こうね、サミュエル」


「…!」


何度も頷く弟が、こんなにも可愛くて可哀想で。だから、急ぎ足でアンナを匿っている部屋に向かった。















「…アンナ、入っていいかな?」


アンナを匿っている部屋のドアを兄上がノックする。


「どうぞ」


その声にサミュエルの瞳が揺れた。


そして、兄上がドアを開ける。


「…アンナ!」


「第三王子殿下…!」


サミュエルが、しばらく振りに声を出した。カラカラの、掠れた声。それでも、サミュエルの声が出たことにほっとした。

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