お世話係を外れる…?
「…ん」
「目が覚めたかい?アンナ」
「第一王子殿下…?」
気が付いたら柔らかなベッドの上。横を見れば椅子に腰掛けた第一王子殿下。
「…すまなかったね」
「え」
「覚えていないかな?サミュエルを庇って銃で撃たれたこと」
思い出して、血の気が引く。今更恐怖が襲ってきて、手が震える。
「サミュエルを守ってくれてありがとう」
「…あ、は、はい」
「ここは安全だ。心配しなくていい」
「はい、はい…っ」
「…怖かったね。本当によく頑張ってくれた」
第一王子殿下の労わりの言葉に、少しだけ救われる。恐怖が薄れることはないけれど。
「君のおかげでサミュエルは無事だ。安心して休んでくれ」
「はい…」
「…どうする?もうお世話係は外れるかい?」
「…え?」
「トラウマになったのではないかな」
すごく優しい声でそう言われて、涙が溢れた。
「…アンナ?」
「いや、いやです、やだ、やだ、やだっ…」
「…」
「こわ、こわかったです、でも、まだだいさんおうじでんかのおそばにいたいっ…」
「…ああ、ごめんよ。そうだね、アンナ。サミュエルにもアンナが必要だ。ごめんね。大丈夫、そう言ってくれるならこれからも側にいれるよう取り計らうよ」
グズグズと泣く私の頭を撫でてくださるその手に、どう思えばいいのかわからない。
「…本当に、ごめん。これは私が悪かった。泣かないでおくれ。大丈夫。ここまで来たら…たとえ誰がなんと言おうと、サミュエルとアンナが永遠に一緒に居られるようにするよ」
「えいえん…?」
「サミュエルより年上だし、なんなら私と同い年だし、お世話係だし…幼い憧れだろうと諦めさせる気でいたけれど。もう、二人を引き離したりしないから。ずっとずっとサミュエルと一緒にいてやってくれ」
「ずっと…?」
「そう、ずっと。ずーっとだよ。嬉しいかい?」
必死にコクコクと頷く。言葉の意味はあまり気にならない。ただ、第三王子殿下と一緒にいられればよかった。
「そう…わかった。年下趣味はある?後悔はしないでね。してももう、サミュエルのそばから離してはあげられないよ」
「としした?」
「…ああ。こんなにも可哀想なくらい混乱した君から言質を取ろうとした時点で、君を逃がす気がないんだろうな…私は。サミュエルを守って大怪我をした時点で、サミュエルのそばに縛り付ける気満々だ」
「?」
「…ゆっくりお休み。サミュエルとのことは、私とラファエルに任せるといい。可哀想だけれど、もうサミュエルのそばからは逃げられないと諦めてね」
よく分からない。けど、なんとなく私にとって幸せなことな気がするから。
「はい」
こっくりと頷いて、笑顔を見せた。第一王子殿下は、ちょっと困ったように笑った。




