暗殺未遂
「アンナ!おはよう、今日も良い朝だね!」
「おはようございます、第三王子殿下」
今日もご機嫌な第三王子殿下が可愛らしい。ここ最近、第三王子殿下はなんだかご機嫌だ。理由を聞いても教えてはくださらない。なんだか、将来素敵な奇跡が起こるかもと報告してくれたが。
きっと、第三王子殿下にとって良いお話が舞い込んだのかも。婚約とかだろうか。第三王子殿下の婚約者なら、優しくて愛情深い姫君がいいな。
ともかく第一条件は、第三王子殿下を幸せにしてくれる相手!…なぁんて、口を出す権利はないんだけど。
「さて、お着替えしましょうか」
「うん!」
ふと鳥のさえずりが聞こえて、ちらりと窓に目を向ける。…かすかに見えてしまったのは、こちらを狙う銃口。
あ、と思った。
身体が勝手に動いていた。
「…アンナ?」
窓ガラスをぶち抜いて、私の身体に穴を開けて弾は壁にめり込んだ。幸い、第三王子殿下は私が腕を引いて床に引き倒したため無事。抱きしめていたら貫通してたから、引き倒したのは正解だった。
恐怖心は多分麻痺してる。最悪、第三王子殿下さえ助かればそれでいい。そう思って確認に窓を再び見たが、銃口は見当たらない。
逃げてくれたようで、少しホッとした。
「…何事ですか!?」
護衛がやっと来た。遅いよ。…なんて、意地悪かな。
「第三王子殿下の暗殺未遂が起きました。第三王子殿下は無事です。私の身体に穴が開いて、銃弾は壁に」
「…!」
「今医者をお呼びします!」
一人が医者を呼びに行き、護衛は第三王子殿下の周りをガチガチに固める。第三王子殿下は呆然としていて、青ざめて震えていた。声も出ないらしい。抱きしめたいが、痛みでこれ以上は動けそうにない。
声ももう、出そうになかった。
「第三王子殿下、ここは危険ですのでこちらへ」
「…っ!」
青ざめたまま、こちらに手を伸ばしてくる第三王子殿下に微笑む。不安にさせるわけにいかない。それでも口をパクパクして手を伸ばしてくる第三王子殿下を抱えて護衛は出て行く。一人だけ残ってくれた。
「もうすぐ医者が来るでしょう。どうか楽になさってください」
気合いで起こしていた身体を横たえる。痛いというより熱いのは何故だろう。
「本来ならこれは自分たちの役目なのに、申し訳ございません。第三王子殿下をお護りくださり、ありがとうございました。ここからは自分の仲間たちにお任せください」
よろしくお願いします。
「医者をお連れしました、お世話係殿!!!」
あ、来てくれた。
来てくれたのはいいけれど、無意識に目を閉じてそのまま意識が落ちてしまった。




