とある少年の心情の変化
「…むー」
最近、ラジエル兄上もラファエル兄上もアンナとの距離が近い!
「むむむむむむ」
なんか、二人がアンナと仲良くしているとモヤモヤする。
…やだ!
「アンナは僕のお世話係だもん!」
アンナとの仲良しを見せつけてやる!
「おはよう、サミュエル。アンナも」
「おはよう、ラジエル兄上!」
「おはようございます、第一王子殿下」
にっこり微笑むラジエル兄上に、アンナも優しい笑顔で返す。…むー!
「アンナ!」
「わ、第三王子殿下?」
抱きつくとアンナは抱きしめ返してくれる。
「おやおや、アンナごめんね。サミュエル、あんまり女性に対して気軽に抱きついてはいけないよ」
「やだ!」
「あ、第一王子殿下。大丈夫です。第三王子殿下がこんな風に甘えてくれるのはとても嬉しいので!」
「アンナはサミュエルに甘いなぁ…サミュエル、ちゃんとアンナを大事にしないとダメだ。サミュエルは子供とはいえ男の子だろう?ほら、離れて」
「やーだー!」
ぎゅうぎゅうとアンナに抱きつく。アンナもぎゅうぎゅうしてくれる。ラジエル兄上はちょっと呆れたようで困った顔で笑った。
「もう…もしかして、アンナを私に取られると思ってる?」
「うん!」
「ええっ!?」
ラジエル兄上はすぐに察したらしい。アンナは驚いている。
「大丈夫、私にはもう信頼できる側近がいるからね。サミュエルの腹心を取ったりしないよ」
「むー」
腹心。それはそう。でも、そうじゃなくて。
「あんまりアンナと仲良くしないでね」
「困った子だなぁ」
まあ可愛いけどとラジエル兄上は僕の頭を撫でる。とりあえずアンナを離してあげる。
「ふふ、でも第三王子殿下に甘えていただけて嬉しいです!」
「えへへ」
「仲が良いようで何よりだよ。…さて、そろそろ行かなきゃ。サミュエル、今日もお勉強頑張るんだよ。将来のサミュエルのためになるからね」
「はい、ラジエル兄上!…いってらっしゃい!」
「良い子。いってきます」
ラジエル兄上を見送る。今日はラファエル兄上は鍛錬で朝は会えないって言ってたな。寂しいな。でもアンナとイチャイチャしないでくれるから嬉しいとも思ってしまう。
家庭教師の先生が来る前にお勉強の用意をして…ちらりとアンナを見れば、アンナは視線に気付いてにこにこ微笑んだ。
可愛いなぁ。
大好きだなぁ。
…そう、これは多分おそらく。
「アンナ、大好きだよ」
腹心とかもそうだけど、女の子として大好きなんだ。




