アンナの自慢話をする
「…でさ、アンナにプレゼントがしたいって言い出してさ。アンナに花束をプレゼントしてて微笑ましかったんだよなぁ」
「へえ、第三王子殿下はとても愛らしいですね!」
「だろ?それもこれもアンナのおかげだな。うちの弟はアンナにそれはもう懐いていてなぁ」
「さすがはアンナ様だ」
「俺や兄上もアンナのことは本当に信頼していてな」
同年代の貴族連中と茶を飲む機会があり、俺はここぞとばかりにアンナの話をする。
「第一王子殿下や第二王子殿下からの信頼を得られるなんて、アンナ様は本当に素晴らしいお方なのですね」
「弟を安心して任せられる。人として誰にも負けない魅力があるよ」
「おお…」
「その魅力に気付かないような男がいるのなら、さぞ見る目のない凡骨だろうなぁ…」
俺の言葉に目の色が変わる奴も、当然いる。
「そうでしょうね!アンナ様のような素晴らしい女性に捨てられた男がいるのなら後はないでしょう!」
「だよなぁ」
「それも国教に反する行いをしたのなら、許されることではない」
「俺もそう思うよ」
「きっと、そんな男がいれば周りから人が離れていくでしょうね」
口々にここにいない誰かさんを責め立てる連中。きっと、家に帰れば両親にこの話をするだろう。そうなれば当然、この話を聞いた全員が王族の不信を買った男からは逃げようとするだろうなぁ。
いくら公爵家の息子殿とはいえ、周りから距離を取られればいずれは破滅に向かうだろうに…どうしてこの展開を予想できなかったんだろうか。サミュエルのお気に入りだと知った時点で、手のひらを返せばまだやり直せたかもしれないのに。
「まあでも、もしそんな男がいたとして…それを誑かして喜んでいる女がいたとしたら、当然地雷だよな」
「それはまた慎みのない…もしそんな女性がいたとしたら、高貴な血が流れているとは思えませんね」
「きっと、病気か何かで貴族としての教育を受けられていないのでしょう」
「常識を身につけないまま外に放り出すなど、親も貴族の風上にも置けませんね」
「まあ当然、そんな女性はそもそも貴族ではないと思いますが」
言いたい放題だな。この分なら伯爵家も立場がなくなるだろうなぁ。
「まあだが、もしそんなことが起こったなら一番の問題は国教に反する行いだろうなぁ」
「そうですね!」
「まったくです」
「許されませんね」
父上のこともあるからかあまり強く言及はしないが、たしかに拒絶を示す連中。
「まあともかく、何事においても自衛は大事だよな」
「そうですね!もし仮にそんな男女がいたのなら関わらないのが一番です!」
「少なくともうちは今後近づかないでしょうね」
「自衛は大事ですよね、本当に」
うんうんと頷くのを見て、まあこんなもんでいいかと話題を逸らす。仕込みは完了。ここまで露骨にやれば、目に見えて効果が出るのも早いだろう。あくまでも第二王子だからできることで、兄上にはこんな真似させられないからな。うん、頑張った。




