第一王子殿下からのお礼
「やあ、サミュエル。アンナもおはよう」
「おはよう、ラジエル兄上!」
「おはようございます、第一王子殿下」
第一王子殿下が朝から第三王子殿下を訪ねていらっしゃった。本宮に移ってから、第三王子殿下と第一王子殿下が共に過ごす時間は増えた。
「そうそう、アンナ。これを上げるよ」
「え、第一王子殿下。これは?」
「ちょっとしたプレゼントさ。開けてみて」
「…あ、これ」
「そう。サミュエルのハガキ大の肖像画。いやぁ、街で売ってるのを見かけてね。つい買っちゃったよね」
そう言われて驚く。
「街で見かけた?視察に行ったんですか?」
「うん、お忍びでね」
「だ、第一王子殿下!危ないですよ!」
「大丈夫大丈夫!喜んでくれたかな?」
「それはもう!」
そんなやり取りをしていると、第三王子殿下が私の服の裾を引っ張る。
「どうしました?第三王子殿下」
「ラジエル兄上とばかり仲良くしないで」
「あ、す、すみません」
んんんんんんん、ヤキモチ可愛い!
「でも見てください、第三王子殿下!第三王子殿下の肖像画ですよ!このサイズならいつでも持ち運びできます!第三王子殿下のことをいつでも考えていられますよ!」
「僕ならいつでもそばにいるんだからそれは要らないでしょ」
むっとした顔の第三王子殿下も可愛い。
「ラジエル兄上も、意地悪しないで」
「すまない、意地悪のつもりはなかったんだけど…」
そう言いつつクスクスと笑う第一王子殿下。
「笑い事じゃない」
「いや、すまない。あまりにもサミュエルが必死なものだから…」
「だって、それだけアンナが大好きなんだ」
そんなことを言われると、とても嬉しくなってしまう。
「第三王子殿下、ありがとうございます。私も第三王子殿下が大好きですよ」
「本当に?」
「本当です!」
「…むう」
第三王子殿下に信じてもらえるように、第三王子殿下を抱きしめる。
「え、アンナ?」
「大好きだから、抱っこしたり出来るんですよ。嫌いな人や気にならない人にはしないでしょう?」
私がそう言えば、渋々納得してくれた第三王子殿下。
「もう僕以外と仲良くし過ぎないでね」
「はい、ほどほどにしておきますね」
第三王子殿下は、第一王子殿下にも目を向ける。
「まだ他にもハガキ大の肖像画あるの?」
「あるけれど、私の分とラファエルの分だからサミュエルにはあげられないよ」
「そう。もうアンナにあげる分がないならいいや。あんまり嬉しくないけど」
「そう怒らないでよ。サミュエルがアンナにお世話になってるから、そのお礼で渡したんだよ。アンナはサミュエルが大好きだってわかってるから、それをプレゼントしたんだ」
「…むう」
第三王子殿下はその後も小さなヤキモチを妬いたままだったけれど、なんとか第一王子殿下と私と仲直りしてくださった。




