とある幼馴染の勝ち宣言
私はリナ・イネス・オロール。伯爵家の娘。私には好きな人がいる。幼馴染のクレマン・ヒューゴ・マルタン。公爵家の長男で、とってもかっこよくて、とっても可愛い私にはぴったりの人。
それなのに邪魔な女がいた。アンナ・ミラ・ディオール。公爵家の娘。
恵まれた生まれのくせに私からクレマン様を奪う嫌な女。そのくせ、私と違って地味な女。私より可愛いわけでもないくせに、許せなかった。
だから言ってやったのだ。
『その…アンナ様、ごめんなさい。私のこと、怒ってますよね?クレマン様の心を奪ってしまって、本当にごめんなさい』
『でも、クレマン様を本当に愛して支えられるのは私だけなんです』
『それに…アンナ様では、クレマン様の横に立つのはちょっと…ね?』
『ごめんなさい、クレマン様に相応しくないなんて、アンナ様が一番良くわかっていらっしゃいますよね…』
『どうか、クレマン様のために身を引いてください。少しずつ、距離を取って側から離れてあげてください。ね?』
あの女は言い返してこなかった。黙って涙を堪えていた。
そうして、あの女は本当にクレマン様から距離を置いた。バカすぎて笑える。
しかも、冷遇されている第三王子殿下のお世話係になった。
冷遇されているのを知っていて自ら名乗りを上げるとか、バカじゃない?
「けどあの女…上手いことやったわね…」
何故かあの女が世話係になってから、第三王子殿下は元気になり冷遇もされなくなった。まあどうせ偶然だろう。運だけは良いムカつく女。
「まあでも?そのおかげでクレマン様と結婚できるわけだし」
第三王子殿下に懐かれたらしいあの女は、王命で婚約の破棄を命じられたらしい。
国教に反した行い云々とかでクレマン様の有責なのは納得いかないけれど、ともかく婚約は無しになった。あの女はクレマン様に捨てられたのだ。
そしてフリーになったクレマン様から、プロポーズをされた私。
「やっぱり最後に勝つのは可愛い私よねぇ」
クレマン様のご実家も私とクレマン様の婚約を認めてくれた。これでクレマン様と結婚できる。
ずっと好きだったクレマン様。憧れの人と結婚できることこそが私の幸せ。
私は今、世界一幸せな女の子だ。
「クレマン様のご実家は、有責での婚約破棄のせいでお金をたくさん払ったみたいだけど…」
借金はせずに済んだと聞いている。領地も豊かだし、大丈夫だろうとクレマン様から聞いた。
あとはまた少しずつ貯金していけば大丈夫だよね!
こっちはそんなにダメージはない。あの女はクレマン様を失った。
私はあの、生まれだけが良い運だけの女に勝ったんだ!!!
「うふふ…ふふふふふふ!!!」
ざまぁみろ!私は幸せになったわ!貴女はそんな地味な見た目なんだから、それなりの男とでも婚約してそれなりの人生を送れば良いのよ!
「ああ、気分が良い!」
…病弱だったのは昔の話で、今はピンピンしているのは秘密のお話だ。




