結婚せずに第三王子殿下のお世話係を続けていいらしい
いつ結婚の話が持ち上がるだろうと戦々恐々としつつも、第三王子殿下のお世話を続ける日々。
第三王子殿下は、あの後ご機嫌を直して私と仲直りしてくれた。それが有り難いような、もうちょっと駄々こねて欲しかったと寂しいような。
だが、そんなある日有り難いお話をいただいた。
「このまま、結婚せずに第三王子殿下のお世話係を続けていいんですか!?」
うちの爵位をお父様から継いだばかりのお兄様は、私に微笑みかける。
「うん。国王陛下からそうして欲しいと懇願されてね。今まで冷遇してきた手前、第三王子殿下のそんな健気なわがままを断れないとかなんとか」
「ぜひぜひお受けいたします!第三王子殿下、そんな可愛いわがままを言ってくださっていたなんて…嬉しいっ!…でも、結婚は破談になりますけど大丈夫ですか?」
「それが…王命で、あっちの有責で婚約破棄することになってね。だから結婚は心配ない。ちなみにあちらから多額の賠償金も入るから、こちらとしては問題ない。心配はいらないよ」
「え!?」
「ああ、大丈夫。破談にはなるがまあ…言いたいことはお互い色々あるだろうけれど、王命という盾もあるし拗れはしないさ。何度も言うけれど、幼馴染と浮気していたあちらの有責だし」
なんだかものすごいことになってしまった。
「…でも、こんな一大事なのに婚約破棄にはクレマン自身が喜んでいてね。病弱な幼馴染を嫁に迎えたいそうだよ。だから本当に、アンナが気にすることはない」
「あらぁ…」
お兄様の呆れたような怒ったような顔で色々悟った。もう心配してあげるのはやめよう。
そうともなると、色々なんとかなりそうで私はほっと胸を撫で下ろす。
「お兄様、ありがとう。ご迷惑をおかけしますけれど、よろしくお願いいたします」
「ふふ、可愛いお前のための迷惑ならばいくらでも」
お兄様は相変わらず私に甘い。ともかく、そうして私は婚約者と別々の道を進むことになった。
「アンナ!」
「第三王子殿下、お待たせしました」
「ううん、気にしないで!お兄さんとのお話、なんだったの?」
「それが…前に言っていた婚約なんですが、ダメになりました」
「!…それってつまり!!!」
ぱっと明るい表情になる第三王子殿下に、微笑んで伝える。
「…はい。第三王子殿下と、これからも一緒にいられますよ!」
「やったー!」
「第三王子殿下、可愛い我がままを言ってくださったと聞きました!ありがとうございます!」
「えへへ、うん!」
「でも、婚約破棄っていいことではないので本来なら喜んじゃダメなんですよ」
私がそう言えば、第三王子殿下はしゅんとする。
「そっか。ごめんなさい」
「いえいえ。私は大丈夫ですからお気になさらないでください。他の人には、喜んじゃだめですよ?」
「うん!」
ということで、お世話係続けます!




