褒美
「え、私に褒美ですか?」
「うん。父上が、サミュエルに仕え尽くした褒美を与えるとのことだよ」
ある日いつも通り第三王子殿下と過ごしていると、これまたいつも通り第一王子殿下が会いにいらしたのですが…なんだかすごいことになりました。
「でも、私はあくまでもお世話係として当然のことをしたまでで…」
「それが有り難いと思ったから、父上は褒美を与えると言い出したんだと思うよ」
それはとてもとても光栄だけれど、いいんだろうか?
「アンナ、ご褒美を貰えるの?よかったね」
「は、はい!」
「サミュエルにも良いお話があるよ」
第一王子殿下は、第三王子殿下と目線を合わせて言った。
「これから、サミュエルは本宮で暮らすんだ」
「え?」
「兄弟みんなで、一緒に暮らせるよ」
「…っ!」
ぱあっと明るく笑う第三王子殿下。私もとても嬉しくなる。
「もちろんアンナも一緒だよね!?」
「うん、当たり前だろう?」
「わーい!」
ぴょんぴょん飛び跳ねる第三王子殿下。本当に元気になってくれて、私はとても嬉しい。
「ということで、褒美はなにがいい?」
「え?」
「父上が、聞いてきてほしいって」
褒美、と言われても。実家の方は上手くいっているらしいから手助け無用だし、婚約破棄を国王陛下に願うのも何か違うし。というか実家に迷惑がかかる。となると願うのは。
「じゃあ、第三王子殿下とのツーショットの絵を描いて欲しいです!」
「え、それだけ?」
「はい!」
私がそう言えば、第一王子殿下は困った顔。
「他に欲しいものは?」
「特にはありません!」
ドレスや宝石はお仕事で得た貯金を使えばいつでも買えるし、趣味といえば第三王子殿下のお世話なので欲しいものなど他にない。
「んー…わかったよ。じゃあ、そう伝えておくよ」
「ありがとうございます!」
「大きめのサイズをいくつか?それとも普通サイズのをたくさん?」
「普通サイズのをたくさんで!」
使用人の部屋も広いから、置き場所には困らないだろう。
私は第三王子殿下とのツーショットにご機嫌で、後のことを考えていなかった。
「え、こ、こんなドレスを着ていいんですか?」
腐っても私は公爵家の娘。だからわかる。このドレスは公爵家でもなかなか手が出せない高級品だ。
「はい、これを着て第三王子殿下とのツーショットを描きましょう。このドレスも褒美として受け取ってください」
「わ、わー、ありがとうございます…」
国王陛下が寄越した侍従にそんなことを言われて、やってしまったと後悔。
こんなおおごとになるとは思わなかった…。
「では、お二人ともこちらへ」
「はーい!」
「はい」
そして長い時間をかけてツーショットの絵をたくさん描いてもらう。画家も一人ではなく何人も集められているが、いずれも凄腕のアーティストばかりらしい。
ただ、第三王子殿下ももちろんめちゃくちゃおめかししててとても可愛らしいので眼福ではある。
そして出来上がった絵を全部もらって、私は結局ご満悦です。




