とある次兄の訴え
「…俺、頑張ってきたよな?」
サミュエルに会う前だって、兄上の支えになりたいと頑張ってきた。
サミュエルに会ってからの半年間は、サミュエルの助けになるためにもっと頑張った。
大人たちに俺は優秀だ、将来があると見せつけた。
俺の存在を、頑張りを、無視させたりなんてしない。
だから…今がチャンスのはず。
「父上にお願いしよう」
サミュエルをこれ以上離宮に縛り付けないでくれと、頼みに行く。
手に汗をかくほど緊張するけれど、ぐっと堪えて前を向いた。
父上の部屋に着くと、ドアをノックして声をかける。
「父上、今お話する時間はありますか?」
「…入って良いぞ」
「はい」
部屋に入ると、既に寝間着姿の父上。邪魔をしたかと思ったが、勢いでそのまま話を始める。
「父上、お願いがあります」
「単刀直入だな。なんだ?」
「サミュエルをこれ以上離宮に縛り付けないでください」
「…まあ、とりあえずそこに座れ」
父上に促されて、父上の座るソファーの向かいに座った。
「お前たち兄弟は、本当にそっくりだな」
「え?」
「先程お前の兄にも、第三王子の処遇改善について直訴された」
「!」
兄上は、やっぱりすごい。即断即決、そして決して間違えない。…どうせなら、一言教えてくれてたら嬉しかったけど。
「…お前は、よほど兄に憧れているようだが」
「…はい」
「あの子の才能は凄まじい。私と違って最高の為政者となるだろう。だが、お前も私からみたら充分な才能に恵まれているよ。剣の腕もそうだが、お前の心の強さこそすごいと思う」
突然褒められて目を見開く。
「家族を愛する心。それさえあれば、きっと間違えない。目先のものに囚われてその心を忘れるならば、それは狂人だ」
かつての父上のことだろうか。
「けど…」
「ん?」
「父上はそれを過ちと思うかもしれませんが、それがなければサミュエルは生まれてない。俺は、サミュエルがいてくれて嬉しいから…」
どう言えば伝わるのか、わからないけれど。
「俺は、父上のしたことは間違いだったかもしれないけど、それは肯定しちゃいけないかもしれないけど、でも…サミュエルと会わせてくれて、兄弟にしてくれて、感謝しています」
俺の言葉に今度は父上が目を見開く。
「…はは、まだラジエルの背中ばかり追いかけている子供かと思っていたが案外大人だな」
「え、いえ、そんな」
「…ラジエルにも言ったが、少し考える時間が欲しい。実行に移すとしても、やはり時間は欲しい」
「…」
「だが、お前たちがたくさん考えてこうして私に訴えかけているのはわかっている。決してそれを蔑ろにはしない」
その言葉に、少し安心した。
「ほら、明日も鍛錬があるのだろう?そろそろ戻れ。寝ろ」
「は、はい。失礼します」
「ラファエル」
呼び止められて振り返る。
「…すまなかった。ありがとう」
短すぎる言葉に、どれほどの思いがあるのか読み取れない。そこまで俺は大人じゃない。けど。
「俺こそ、父上には感謝してます。…失礼しました」
ドアを閉めて、私室に向かう。胸には、少しの安堵があった。




