とある少年の成長
ベッドで横になる。咳は出ない。今はカーテンから差し込む柔らかな光を見るに、朝早くだろう。ぱっちり目が覚めてしまった。
アンナが来てくれてから半年、僕は随分と元気になった。
走り回れるようになったし、咳は頻度が減った。ご飯も美味しく感じられるようになったし、熱も出ない。
それだけじゃなくて、読み書きも簡単な計算も教えてもらえて、お散歩だって毎日行けるし、ボール遊びも今ではお手の物だ。
「この半年で僕、出来ることがたくさん増えた」
全部、アンナのおかげだ。
「今日も楽しかったな」
リフティングの練習をしていたら、アンナだけじゃなくて近くにいたメイドたちも応援してくれた。
僕に会いに来てくれたラジエルお兄様とラファエルお兄様も上手いと褒めてくれた。
そういう関係を築くきっかけをくれたのもアンナだ。
「アンナがいなかったら、僕はどうなっていたんだろう…」
今は元気に走り回っているけれど…もし、アンナ以外の人がお世話係になってたら。
もしかしたら僕は、風邪を拗らせただけで起き上がれなくなってたかもしれない。
アンナは、僕の恩人だ。
「アンナのために、なにかしてあげたいな」
そうだ、と思いついてベッドから出て紙とクレヨンを取り出した。
「アンナと僕の遊んでいるところを絵にしてプレゼントしよう!」
アンナの絵を描く。可愛い可愛いアンナを表現するのはとても難しいけれど、喜んでもらえるように一生懸命に書く。
「アンナ、喜んでくれるかな」
ウキウキしながら、僕とアンナの絵を完成させた。
「おはようございます、第三王子殿下。今日は早起きさんですね」
「おはよう、アンナ。あのね、プレゼントがあるよ」
「え?なんでしょう」
アンナに紙を差し出した。
「…え、これは…私と第三王子殿下ですか…?」
「うん、プレゼント!仲良く遊んでる時の絵だよ!ほら、サッカーボールもあるでしょう?」
指を指して見せれば、アンナは何故か号泣する。
「え、アンナっ!?」
「第三王子殿下、嬉しいですぅ〜っっっ!!!」
そんな風に喜んでもらえるなんて思わなかった。ありがとうございます、くらいのものだと思ってた。
…アンナったら、本当に僕が大好きなんだから。そんなアンナが、僕も大好きだけど。
「そんなに嬉しいなら、もっとたくさん描いてあげる!アンナの可愛いところ、たっくさん!」
「ありがとうございます、第三王子殿下!でも、これを大事にしますので大丈夫ですよ」
アンナは遠慮しいだなぁ。
「アンナ。普段はアンナが僕を大切にしてくれてるんだから、たまにはアンナも僕に甘えてね?」
「…ふふ、はい!第三王子殿下、大好きです!」
きょとんとした後、笑顔で頷くところも可愛い。甘え方を教えてもらったから、今度は僕が甘やかしてあげたいな。




