婚約者の様子
第三王子殿下のお世話係になり、充実した暮らしをする私。
もはや趣味とも言える第三王子殿下のお世話を楽しんでいて、毎日が幸せだ。幸せばかりなのに、お給料も貰える。
せっかくのお給料なので、半分は家に入れている。もう半分は私のお小遣いにしている。ただ、あまりお金を貯めこむのも良くないのでお小遣いの一部だけ貯蓄してあとはウチの領地の孤児院と養老院に寄付している。
「ふう、今日もよく頑張った」
楽しいとはいえ、元気になった第三王子殿下の子供特有の謎の体力で身体はヘトヘト。入浴をして疲れを癒す。
私が第三王子殿下のお世話係になったことで、結果的に両親にも仕送りなどができて領内の施設に寄付も出来た。
お世話係という仕事なので年中無休だが、両親や兄にはしっかりと手紙を送っているしあちらからも返事は届く。寂しさは感じない。
「結局あの人、私のことはまるで眼中にないんだなぁ…」
兄からの手紙で知ったこと。最近存在自体忘れ始めていた私の婚約者殿は、どうやら煩わしい私からの干渉が無くなって幼馴染を大切に出来て幸せそうにしているらしい。
「なんで私、そんな人が好きだったんだろう…」
はて?と首をかしげる。いや、それは良い人だったとは思う。思うけど、婚約者に対してこれは無い。
「堂々と浮気しているようなものだよね」
正直、もう嫉妬とかは一切感じない。むしろドン引きである。
「第三王子殿下のお世話係になってよかった」
離れてみて、冷静になればどんな仕打ちをされていたのかわかってきた。百年の恋も冷めた。
「…とはいえ、このままいくといつかは結婚しないといけないんだよね」
婚約者はまだ、婚約者のままだから。
「…いっそ、契約結婚に持ち込むとか?」
婚約者には…クレマン様には、幼馴染さんを愛してもらう。私は籍だけ入れて、第三王子殿下のお世話係を続ける。
「さすがにムシが良すぎるか。ダメだよね…」
一瞬名案だと思ったが…さすがに醜聞が広がることは間違いないし、それをクレマン様に要求する勇気もない。
「ずっと第三王子殿下のお世話係を続けたいな…」
クレマン様と婚約破棄してしまいたい。けれど、家のための結婚なんだ。しないわけにはいかないよね。
「第三王子殿下…」
まだ、結婚適齢期まで二年はある。それまでに第三王子殿下との思い出をたくさん作ろう。それしか出来ない。
「ずっと、一緒にいたいんだけどな…」
叶うことなら、大人になるその日まで見守って差し上げたい。
「なにか、良い方法があればいいのにな」
そんなもの、思いつかないけれど…。
「…ああ、長風呂しちゃった。そろそろ上がろう」
お風呂を出て、着替えて髪を乾かす。ベッドに潜り込めば、疲れからかスッと意識が落ちた。第三王子殿下との幸せな夢を見ながら、身体を休めていた。




