お世話係に就任して半年
第三王子殿下のお世話係に就任して半年が経ち、私は離宮での生活にも大分慣れた。
「おはようございます、第三王子殿下」
「おはよう、アンナ!今日も良い朝だね!」
「そうですね、晴れてて良い天気です」
第三王子殿下は私がお世話係になってから、お姫様抱っこで連れ出して少しずつ日の光を浴びるようにしてきた。好き嫌いなく食べられるように、あーんしてあげて頑張って栄養を摂取してもらっている。さらに少しずつ、ほんのちょっとだけベッドから降りてみたり歩いてみたりして、筋力をつけようとしてきた。
その結果この半年でかなり劇的に体力がついてきた。今では中庭を満足できるまで自分の足でお散歩できるまでになった。免疫力もついてきたように見える。あるいは手ずから食べさせる作戦で苦手な食べ物が減ったのも大きいかもしれない。
「お水とタオルです。どうぞ」
「うん!」
桶の水でお顔を洗う第三王子殿下。さっぱりして、顔を拭いたら次はお着替えだ。
「第三王子殿下、お着替え失礼しますね」
「うん」
寝間着姿ももちろん可愛らしいけれど、子供服に身を包む第三王子は最高に可愛い。
「今日も素敵です、第三王子殿下」
「えへへ、うん」
髪も梳かして、これで支度は出来た。
「では、ご飯を食べに行きましょう」
「うん!」
第三王子殿下と手を繋いで食堂に向かう。体力がついたため、自分の足で歩けるようになった第三王子殿下。それでも私と手を繋ぐのは、それが安心するかららしい。理由が可愛すぎる。
「第三王子殿下、おはようございます!」
「みんなおはよう!」
メイドたちも第三王子殿下に積極的に話しかけてくれる。第三王子殿下はそれに優しく応える。
「さあ、第三王子殿下。たくさん食べてくださいね」
「うん、いただきます!」
いっぱい食べる第三王子殿下。今では結構な量をぺろりと平らげるようになった。肉付きの良くなった第三王子殿下だけど、今のところ太り過ぎてはいない。そうなったら、流石に止めるけど…不必要に太る気配はまだないので大丈夫だろう。
「ご馳走さまでした!」
食べ終わった第三王子殿下と手を繋いで、第三王子殿下の私室に戻る。
「さあ、第三王子殿下。今日もお絵かきをしましょうか」
「うん!」
第三王子殿下と共にお絵かきをして遊ぶ。遊びつつ、手先が器用になると嬉しい。
「アンナ、いつもありがとう」
「え?」
「アンナがたくさん外に連れて行ってくれたり、ご飯をあーんしてくれたりしたおかげでこんなに元気になったよ。本当にありがとう」
「第三王子殿下…っ」
感動のあまり泣きそうになる。
「字の練習やお絵かきや折り紙もとても楽しいし、出来ることが増えるのは嬉しい。全部アンナのおかげだよ」
そう言ってにこっと笑った第三王子殿下に、とうとう泣いてしまった。そんな私に、第三王子殿下は優しく背中をさすってくれた。




