第三王子殿下と三度目の読み聞かせ
その後も字の練習を頑張って、食事と入浴も済ませれば恒例の読み聞かせタイムに突入。
「では、第三王子殿下。今日はどの絵本にしましょうか」
「じゃあこのキラキラした絵本!」
「ああ、泉の女神のお話ですね」
「泉の女神?」
「はい、神様のお話ですよ。では、始めましょう」
第三王子殿下とラッコさん座りをして、一緒に絵本をめくって読む。
「へえ、泉に物を投げると上位互換の物と交換してくれるんだね」
「画期的ですよね」
「でも、じゃあ例えば動物とか人間が入っちゃったら?」
「おや、鋭い。それがこの後の展開ですよ」
「わあ、楽しみ!」
キラキラした目で絵本を読む第三王子殿下に癒されつつ、読み進めていく。
「動物だったら、普通に逃がしてくれるんだね」
「優しいですよね」
「そうだね」
で、ここからこの絵本の山場になるが大丈夫だろうか。
「へえ…!人間を入れたら本人はもう帰ってこないんだ!」
「怖いですよねー」
「でも面白いかも」
「そうですか?」
その辺りの感性は、小さな頃の私とは全然逆なんだろうなぁ。
「まだ時間がありますし、他にももう一冊読みますか?」
「いいの!?じゃあこれ!」
「猫ちゃんのお話ですね」
「どんなお話?」
「猫の探偵団が事件を解決するお話ですよ。さあ、始めましょう」
そうして私はラッコさん座りはキープしつつ、読み始める。
「へえ、猫が酷い目にあってるんだ」
「犯人を突き止めるのが今回のこの猫ちゃんたちのお仕事なんですよね」
「はやく捕まえないとね」
ページをめくるたび、ワクワクした表情の第三王子殿下が可愛い。
「へえ!この優しいおじさんが犯人なんだね!」
「案外優しいだけの人には裏があるんですねぇ」
怖い話である。
「わあ!ちょうどいいタイミングで人間が加勢してくれた!」
「人間も、捨てたものではないということですね!」
そして、最後のシーン。
「これで街は平和になったんだね」
「めでたしめでたし、ですね」
ここまで読んだところで、第三王子殿下が咳き込み始めた。
「ごほっ、ごほっ」
「第三王子殿下、こちらを!!!」
吸い込むタイプの、いつものお薬を手渡す。第三王子殿下は吸い込んでくれた。
「さあ、第三王子殿下。横になって休みましょう」
「うん…」
「大丈夫です、第三王子殿下。私がきちんと、第三王子殿下が眠れるまでそばにいますからね」
そう言って横になった第三王子殿下の手を握り、お腹をトントンして差し上げる。
「大丈夫、大丈夫。今日も良い夢をみてくださいね」
「うん。…アンナ」
「はい」
「ごほっごほっごほっ、ごほっ、ありがとう」
「第三王子殿下…こちらこそ、ありがとうございます。大丈夫ですからね」
トントンしながら、今日は何を歌って差し上げようか考える。
そして子守唄を歌うと、第三王子殿下は何曲目かで眠ってくれた。
「第三王子殿下、おやすみなさい」
私は第三王子殿下の部屋を後にした。




