今日もお姫様抱っこ
「では失礼致しますね」
「うん」
第三王子殿下をお姫様抱っこして、庭に出る。次は昨日とは反対側に行く。
「わあ!可愛い!」
「桔梗ですね」
「桔梗っていうんだ!」
「あ、今日の第三王子殿下の服と同じ色ですね」
「!!!本当だね!お揃いだ!」
にっこにこな第三王子殿下に嬉しくなる。たまたまだったけど、お揃いになってよかった。
「第三王子殿下、陽の光を浴びて散歩するのはどうですか?」
「すごく暖かくて、風が爽やかで気持ちいいよ!それに、アンナの腕の中はすごく安心する」
「それは良かった」
「いつか大人になったら、僕がアンナをこうして抱っこしてあげるからね」
第三王子殿下のお言葉に軽く目眩がするような気分になった。嬉しすぎる。
もちろんそんな未来はないことはわかっているのだけど、第三王子殿下は今は本気で言ってくれているのだからとってもとっても可愛らしい。
ずっとそのまま真っ直ぐに育って欲しい、なんて思ってしまう。
「ありがとうございます、第三王子殿下。でもそのためにはまず体力をつけないとですね?第三王子殿下、今日もリハビリマッサージ頑張りましょうね」
「うん、頑張る!」
「では、お部屋に戻って少ししたら早速やりましょうね」
「わかった!でももう少し散歩してもいいでしょう?」
「もちろんです」
今日はもうちょっとだけ陽の光を浴びてもらうつもりなので、願ったり叶ったりだ。そう思って歩いていると、前方から人の気配。
「…おや?もしかして…サミュエルかい?」
「…誰?」
「だ、第一王子殿下!?」
何故、どうして、離宮の側に?
「ああ、君が弟の専属のお世話係だね。弟をありがとう。そのまま楽にしてくれていいよ」
楽にと言われましても。
「サミュエル、私はお前の兄のラジエルだ。名前くらいはわかるだろう?」
「えっと、はい。サミュエル、です」
「兄弟なんだ、無理して敬語は使わなくていい」
こ、これはどういう状況なのだろうか。
「どうか、お兄様と呼んでおくれ」
「ラジエルお兄様…?」
「良い子だ。ラファエル…私の弟で君の兄だが、その子がサミュエルらしき子が庭に出てきていたと言っていてね。僕も遭遇できないかと思って少し散歩していたんだ」
…冷遇されている第三王子殿下だけれど、兄弟仲は悪くない?…というか、兄弟なのに初対面?
「まあただ…会えたところで何もしてやれないけれど。ラファエルも顔を見ると辛くなるからと逃げ帰ったようだしね。元気にしていてくれたらと思ったんだが…その様子だと、まだまだ身体は良くないんだね」
目を伏せる第一王子殿下に、第三王子殿下は言った。
「でも、アンナがいてくれるから大丈夫」
「アンナ…そのお世話係かな?」
「うん。アンナはお散歩に連れてきてくれるし、マッサージもしてくれるし、苦手な食べ物はあーんしてくれるし、寝かしつけてくれるんだ」
「ほう?」
「きっとすぐ元気になるよ」
第一王子殿下の視線が痛い。怖い。
「そうか…なら、安心だね。お嬢さん、弟をこれからもよろしく頼むよ」
そう言ってぽんぽんと頭を撫でられた。その後第三王子殿下の頭も撫でて、第一王子殿下は帰っていった。
その後、私と第三王子殿下は顔を見合わせて頷いて、お部屋に戻った。




