第三王子殿下とちょっとだけリハビリ
「さて、第三王子殿下」
「なあに?アンナ」
「ちょっとだけ、付き合っていただけますか?」
「いいよ、なあに?」
「軽いマッサージを試していいでしょうか?」
ご飯を食べ終わって少しのんびりした後、そんなことを言い出した私に第三王子殿下はきょとんとした。
「マッサージ?」
「はい。身体を少しでも動かした方が良いと思いまして」
「じゃあ、お願いしようかな」
にっこり笑って受け入れてくれた第三王子殿下。よかった。
「では、早速失礼しますね」
ベッドの上で横になっている第三王子殿下に、リハビリ用のマッサージを施す。
養老院に慰問に行った時、色々と教えてもらったので問題はない…と思う。
「おおー、マッサージってこんな感じなんだね」
「はい、痛くないですか?」
「んー…痛いけど、なんか効く感じがする。嫌な感じじゃないからもっと続けて欲しいな」
「わかりました」
よしよし、良い感じかも。
そのまま一時間くらい頑張ってリハビリ用のマッサージを続けた。
「…はい、終わりですよ。どうでしたか?」
「んんー!なんかスッキリした感じかな。痛かったけどとっても気持ちよかった!」
「それは良かった」
「ねえねえ、また明日もやってくれる?」
「はい、しばらくは毎日やりましょうね」
私がそう言えば、第三王子殿下は目を輝かせる。
「いいの!?ありがとう!マッサージとっても好き!」
「それならよかったです」
「アンナはすごいね、僕、今日は人生で一番楽しい日だったよ」
心底嬉しそうにそんなことを言ってくれる第三王子殿下。
「第三王子殿下、ありがとうございます。私も第三王子殿下とこうして過ごせてとても楽しい一日でした。第三王子殿下、これからたくさん毎日を楽しみましょうね」
「うん!」
頑張ってリハビリを終えた第三王子殿下とそんな約束をして、また第三王子殿下をベッドの上で横にする。
「そろそろお風呂の準備をしますね。少し休んでいてくださいね」
「うん」
お風呂の準備をしに部屋を出る。そこで、メイドの一人に声をかけられた。
「あの…」
「はい。どうしました?」
「その、あの。どうしてそこまで第三王子殿下に尽くすのですか?」
「…?」
質問の意図がわからない。
「…第三王子殿下は、正直冷遇されていらっしゃいます。優しくしても、なんの旨みもないですよね?」
「…はぁ」
まあそれはそうだけど。
「可愛いじゃないですか」
「え」
「可愛いから、愛おしいから大切にするんです。おかしなことはなにもありませんよ」
ぎょっとした顔を見て思わず吹き出す。今度は怪訝そうな顔をされた。
「あはは、ごめんなさい。ただのお世話係がこんなこと言ったらそれはそんな顔されますよね。でも、本当に第三王子殿下は可愛いんです。見た目だけじゃなくて、性格もすごく。…きっと、貴女方もいつかわかると思いますよ」
そう言って私は背中を向けたから、彼女の表情は分からなかった。




