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魔王復活目録  作者: わか3
フォーメン街編
96/128

96話 エルフの里




「みんな収穫はどう?」


 集合時間の15時になって最初の場所へみんな集まった。


「ぼ、僕の方はなにも……申し訳ないです」

「謝らないで。私の方も収穫なしよ」


 2人は何も情報を掴めなかったみたい。私も少し、噂程度だけど情報を掴めることができた。


「リリィちゃんは…その顔だと何かあったみたいね」

「はい。と言っても噂程度の話ですけど」

「今は噂程度でもありがたいわ。私とアルバは噂さえも掴めなかったんだから。早速聞かせてちょうだい」


 ローザさんとアルバさんと近くの席に座って私が持っていた本をテーブルに広げる。


「精霊の森についての内容ね。これがどうしたの?」

「ここをみてください。癒しの泉ってところです」

「癒しの泉?あぁなるほど…そういうことね!」

「癒しの泉…ほ、本当に噂程度の話ですね」

「精霊の森……。確かに精霊の聖なる魔力が満ちてるあの場所なら癒しの泉なんてものもあるかもしれないわね」

「ローザさんは行ったことないんですか?」

「場所が場所だからね。ちょっとまって」


 ローザさんが空間から地図を取り出して広げる。ローザさんは海に浮かんでる孤島を指差して次に海沿いの森を指差す。


「この島が精霊の森。それでこの海沿いの森。この森はエルフの里って言われてるの」

「エルフの里?」

「エルフっていう種族は知ってるかしら」

「えーっと確か…精霊と契約をして自然と共に生きる種族、でしたっけ」

「そう。よく覚えてたわね。偉いわ」


 ローザさんのところで読んだ本に載ってたエルフの内容ちゃんと覚えててよかった。大きな耳で他の種族よりも長生きするっていう種族。他の種族と違って精霊と契約して魔法を使う種族らしい。まだ会ったことはないからどんな人たちなのかはよく分からない。


「エルフは基本的にこの里から出てこないの。精霊の森に行くにはこの里を通るしかないの。でも少し問題があって……」

「問題ですか?」

「ぼ、僕たち魔族はエルフとは仲が悪いんです……。だから里を通らせてくれるとは思えないんですよね…」

「仲が悪い?どうしてですか?」

「そもそもの価値観とか、まぁ色々あるんだけどね。1番はやっぱあの話かしら」

「何かあったんですか?」

「私が生まれるよりも昔の話よ。ある魔族が里に眠っているという秘宝を狙って里を襲撃したの。襲撃で里はめちゃくちゃ。そのせいで私たち魔族がエルフにいい印象を持たれてないってわけよ。まったくいい迷惑よね」

「秘宝…気になりますね」

「本当にあるのかは知らないけどね。まぁ本題はそこじゃないわ。精霊の森に行くには必ずこの里を通らないといけないの」

「でも、精霊の森は海に浮かんでる島なんですよね。ならわざわざ里を通らなくても、例えばここから舟で行けばいいんじゃないですか?」


そう言ってエルフの里から少し離れた陸地を指差す。


「それが駄目なのよね。この海が特殊な潮の流れをしててね。エルフの里以外から精霊の森に行こうとすると潮の流れで阻まれるのよ」

「つまり…」

「エ、エルフの里以外からは精霊の森には入れないってことです…。ど、どうしましょうかローザ様」


 潮の流れで阻まれる…。精霊の力なのかな?不思議なこともあるんだな。


「そうねぇ…クロードを治す手がかりが精霊の森にあるのなら必ず行きたい。アルバ、今日の月は?」

「え、えっと…満月のこと、ですよね…。そ、そしたらちょうど一週間後です」

「一週間…。まぁ十分ね」

「えっと…なんの話ですか?」

「あぁごめんなさい。ちゃんと説明しないとね。精霊の森にはこう言い伝えがあるのよ。『精霊の森は普段は何人も立ち入ることはできない。だが月が完全に満ち、聖なる魔力が森を満ちる時、森は人々を招き入れるだろう』ってね」

「つ、つまりは満月のときしか森には入れない…ってことです。一週間後の満月を逃せば次は一ヶ月後ってことになります…」

「できるだけ時間はかけたくないのよね。時間をかければかけるほどクロードのことがバレかれない。私の隠れ家だって絶対にバレない訳じゃない。クロードの死体が見つからないことできっとあっちは大騒ぎなはず。いつ私の隠れ家が嗅ぎ付かれるのかは時間の問題ってところね」

「そんな……」

「それじゃ作戦会議をしましょうか」


 ローザさんは大きめの紙を取り出してテーブルに広げてペンで大体の地図を書く。地図に精霊の森とエルフの里、そして私たちが今いる場所を書き記す。私たちが今いるところ、フォーメン街からエルフの里は意外と近そう。ローザさんの隠れ家があったトレイダ街とフォーメン街よりも近そう。


「さてどうやってエルフの里に潜りこみましょうかねぇ」

「しょ、正面から行ける訳ないですもんね…」

「どうしますかね…」

「まぁ忍びこむしかないわよね。真夜中のうちにこっそり忍びこんで舟をちょうだいするしかないかしらね」

「う、うーん……で、でもそれしかないかも、ですね」

「でもクロードさんは動けないんですよね。その状態のクロードさんを連れて忍びこめますかね?」

「確かにそうね…。アルバ、クロードを運んで走れそうかしら?」

「う、うーん…ど、どうでしょう…。少しならいけるかもですけど長時間はちょっと…」

「どうしましょうね…」


 クロードさんの身長は高い方だからクロードさんを運べるのはクロードさんよりも背が高いアルバさんくらいだけど、流石にアルバさんでも長時間は無理、だよね…。


「キャン」

「!ヴァイス、ここ図書館だから静かにって…そうだ!」

「どうしたの?リリィちゃん」

「ヴァイスならクロードさんを背負って移動できます!」

「ほ、本当ですか?」

「はい。ヒスイ街で脚を怪我したクロードさんを背負って建物に跳び上がったんです。ヴァイスならクロードさんを運んで走れるはずです!」

「リリィちゃんがそう言うんならきっと大丈夫ね。うん、クロードのことはヴァイスちゃんに任せましょう」

「お願いねヴァイス」


 膝に抱えた鞄にそっとささやく。鞄から小さな鳴き声が聞こえてきて、「任せて」と言ってるみたいで心強い。


「これでクロードの問題は解決したわね。エルフの里までは馬車は出てないから歩きで行くしかないけど、里にいるエルフたちに途中で気づかれたくないのよね。特にエルフは魔力に敏感だし特に魔族特有の魔力だと気づかれやすいと思うのよね」

「それじゃあどうすれば…」

「できる限り魔力を抑えて気づかれないようにしたいんだけど、リリィちゃんは魔力抑えられないのよね」

「はい……」

「リリィちゃんは覚えがいいから教えればすぐにできちゃいそうね。一週間の間に私が教えてあげる」

「い、一週間で、ですか?さ、流石に無茶じゃ…」

「いいえ。アルバは知らないだろうけどリリィちゃん、本当に凄いのよ。ここに来る間に防御魔法覚えちゃったんだから」

「え、えぇ!?そ、それは、確かに凄いですね…。ぼ、防御魔法をあの短期間で覚えてしまうなんて…」

「だからリリィちゃん。頑張りましょうね」

「は、はい!」


 うぅ…プレッシャーだ…。で、でも頑張るしかない!ローザさん教えるのうまくて結構すぐにできちゃいそうかも。


「でも、いくら魔力を抑えたって里の中に入ったらきっと気づかれるわね。そうなったら一気に海辺の方まで駆け抜けるしかないわ」

「強引ですね…」

「エ、エルフの魔力感知はピカイチですから仕方ない、ですね……」

「それじゃ、満月の夜にエルフの里前の魔力が察知されないギリギリのところで待機。真夜中の静まり返った時に里に侵入。できるだけ見つからないように海辺のあるであろう舟を目指す。途中で見つかることは想定内だから、もし見つかったら全力で逃げる。作戦はこんなところかしらね」

「そう、ですね…。ぼ、僕とローザ様がいたら里のエルフたちにも多少は対抗できます。さ、最悪クロードさんだけでも精霊の森に連れていければいいので…。あ、あくまで今回は精霊の森に行くのが目的、なので」


 結果的に強引な手段になっちゃったけどこうするしかないなら仕方ないよね。エルフ、か。昔読んでもらった絵本に出てきてたな。魔法と弓矢が得意だって書いてあった。絵本にもエルフは森に住んでるって書いてあったし、私が読んでもらった絵本は結構本当のことが書かれてたんだな。


「それじゃあ行きましょうか。そうだ、街でみんなにお土産買っていってあげましょうか。きっと喜ぶわよ」

「いいですね!何がいいですかね」

「色々見てまわりましょうか」


 私たちは図書館を後にして街を色々見て回った。ローザさんたちが魔族だってバレないようにできるだけ人通りの少ない場所を選んだ。意外と人通りの少ない場所でもお店があるんだな。といってもお酒のお店が多くて私にはよく分からないや。


「ワイン専門店…ちょっと寄っていいかしら」

「ロ、ローザ様…」

「ちょ、ちょっとだけよ!」

「わ、分かりましたよ…少しだけですからね」

「さっすがアルバ!じゃ、いきましょー!!」


 スキップしながらお店に入っていくローザさん。前に一緒にお酒を飲んだ時も思ったけどローザさんってお酒好きなんだ。ローザさんの後を追って私とアルバさんもお店に入る。ローザさんはお店に並んでるワインを輝いた目で眺めている。時折何か呟いてるけどよく聞こえない。でもすごく楽しそう。


「ロ、ローザ様のお酒好きにも困ったものです…はぁ……」

「ああいうやり取りを見るとやっぱり2人って長く一緒にいるんだなぁって思いますね」

「そう、ですかね?あ、あんまり実感はないですけど…」

「信頼してるんだなぁって会話の節々から感じますよ」

「い、言われたことなっかったですね…。で、でも確かにもう随分と長いこと一緒にローザ様と一緒にいますね」

「どれくらい一緒にいるんですか?100年とか、ですか?」

「た、多分100年以上ですかね。あまり覚えてない、ですけど…」

「ちょっと気になりますね。ローザさんとアルバさんのお話」

「よ、よかったらお話しましょうか?」

「え、いいんですか?確かに気になりますけど…」

「あ、あの調子だと時間かかりそうなので。ひ、暇つぶしみたいな感じで…面白い話かは分かりませんけど」

「き、聞きたいです!聞かせてください」

「そ、そしたら外に出ましょうか。こ、ここだとお店の方に聞かれてしまうので…」


 夢中になっているローザさんを後ろ目にお店を出る。お店の外は相変わらず人がいないから話を聞かれる心配もないね。


「ど、どこから話しましょうかね……そ、それじゃあまずは僕の家の話をしましょうか」

「アルバさんの家、家族の話ですか?」

「は、はい。ま、前に僕は純血の吸血鬼と言いましたが、純血の吸血鬼は数が少なくてほとんどが混血、または吸血鬼のなり損ないの紛い物なんです」

「じゃあアルバさんって凄いんですね」

「ぼ、僕はそんなんじゃないんです。ぼ、僕の家は純血の吸血鬼しかいなくて、所謂エリート一家だったんです。で、でも僕だけは純血の吸血鬼なのにも関わらず力は弱いし、こ、この通りひ弱なもので…。な、なので家族から落ちこぼれって言われてたんです」

「そんな…」

「あはは…で、でも事実なので。ぼ、僕はそんな家に居づらくなって家を飛び出したんです。そ、その時にローザ様と初めて出会ったんです」




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