94話 フォーメン街
「皆さーん到着しましたよ!フォーメン街です!!」
御者さんに声をかけられて窓の外を覗き込む。窓から外の様子を見るとここからでも街の中に生えてる大樹が見える。あの大樹なんだろう。
「ふー…やっと着いたわね。座りっぱなしでお尻が痛いわ」
「ひ、日差しが……」
「大丈夫ですか?アルバさん」
「は、はい……魔除けの魔法もあったので…。で、でもそこまでの不調じゃないので平気です。あ、ありがとうございます」
「あまり無理しないでくださいね」
馬車から降りたアルバさんはフードを深く被って過ごしやすい季節にも関わらず脂汗を流してる。多少は日光が大丈夫とはいえ今はお昼だから日差しが強くてやっぱり少しはキツイんだ。心配だ。
「ここから見える大樹があるでしょう。あの大樹こそがフォーメン街を象徴する国立図書館なんですよ」
「あの大樹が、ねぇ。中々の年季がありそうで随分立派ね」
あの大樹が図書館なんだ。大樹が図書館って火事になった時とか大変そうだけど大丈夫なのかな。魔法か何かで防火対策してるのかな。
「あの図書館は一般の出入りは可能なの?」
「はい。一部の本は制限されてますけどあらゆる場所から集められた本が読み放題ですよ。エルフの里、ジュナイダー王国、そしてウォルトカリアの本もあるんですよ。まさに情報の街です」
「なるほど…これは期待できそうね。じゃ、行きましょうか」
「あ、お客さん!許可証は持ってるんですか?」
「許可証、許可証ね。えぇ勿論よ」
「それならよかった。最近ヒスイ街とトレイダ街で魔族が暴れたって噂があったっもんで街へ入るのに許可証が必要になって。まったく困ったもんですよ」
クロードさんのことだ…。でもローザさん許可証なんて用意してたんだ。準備がいいんだなぁ。あれ、でもローザさん魔族なのに許可証なんて取れたんだ。うーん…でも見た目は人間だし取れないことはない、のかな?
「さて行きましょうか」
「はい!」
「は、はい……。…ローザ様いつのまに許可証なんてものを……。い、いやでもあの感じは………」
「アルバさん?」
「い、いえ!い、行きましょうか」
アルバさんが何か小声で言ってたけどよく聞き取れなかった。歩きだしたローザさんとアルバさんに早足で着いていく。2人とも脚が長いから一歩が大きくて歩くのが速い。頑張って着いて行かなきゃ。
****
「さて、あの警備をなんとかしなきゃね」
「許可証持ってるじゃないんですか?」
「そんなの持ってる訳ないじゃない」
「えぇ!!??」
「だ、だと思いました……」
「そ、それじゃあどうやって街に入るんですか?」
「まぁ見てなさい。2人はそこで待ってて」
そう言うとローザさんは1人で街の入り口の門の方へ歩いていった。門には勿論門番の人が2人いる。2人は武装していてとても強行突破出来そうな感じには見えない。ローザさんはその2人に近づいて何か話してる。
「ローザさんどうするんでしょう」
「い、嫌な予感がします……」
「嫌な予感、ですか?」
「ロ、ローザ様たまに強引というか、脳筋なところがあるので…」
「の、脳筋ですか?あのローザさんが」
まるで考えられないけど…。でも昔から一緒にいるアルバさんが言うんなら間違いない、のかな。
「あ、あぁ……やっぱりこうなりましたか…」
「え、えっ?なんで門番の人が倒れてるの?」
アルバさんが門の方を見て呟いて私も門の方に目を向ける。門の前に立っていた門番の2人が地面に倒れていた。私たちに気づいたローザさんが笑顔で手を振ってる。な、なんて無邪気なんだ…。
「い、行きましょうか…。門番の件はローザ様がなんとかしてくれたみたいなので」
「は、はい…」
アルバさんと一緒にローザさんの元へ向かう。ローザさんの足元で倒れている兵士の人たちをよく見ると寝息を立ててる。もしかして気絶してるんじゃなくて寝てるだけ?この状況前にもどこかで…。
「私特性の睡眠薬よ。ちょっとやそっとじゃ起きないでしょうね」
「睡眠薬…クロードさんがヒスイ街に使った睡眠ガスみたい」
「あら。それきっと私が作った睡眠ガスね。クロード、まだ持ってたのね」
「ローザさんが作ったんですか?知り合いに作ってもらったて言ってた……ローザさんのことだったんだ」
「昔試作品で誰でもいつでも使えるように睡眠薬をガス状にしたの。それを何個かクロードにあげたの。そうだ!リリィちゃん用に何個か作ってあげようか?護身用に何個かあった方が安心できるでしょ」
「そ、そうですかね?」
「そうよ。あぁそれから麻痺薬に軽い毒薬なんかもいいわね。人間は脆くて弱いから沢山あっても困らないわね」
「あはは……お気持ちだけ頂いておきます」
確かに少し脳筋、なのかも。クロードさんも少しそういうところがあったし、ジャッカスさんもそんな感じがした。四芒星って人たちはみんなそういう人たちの集まりなの?
「さ、早く中に入っちゃいましょう!」
「はい!」
「か、風邪引かないでくださいね…」
****
「さて早速図書館に向かいましょうか」
「図書館はあの大樹って言ってましたよね」
ローザさんのおかげで無事?に街に入ることができた。フォーメン街は他の街と違ってレトロな雰囲気の街だ。赤いレンガの建物に植物が絡み付いておしゃれな建物が多い。
「あんだけ大きな大樹だったら迷うこともないわね。あぁそうだ。一応リリィちゃんも帽子を深く被って顔を隠しておきなさい」
「竜の騎士団にバレないように、ですよね」
確かにローザさんとアルバさんはフードを深く被って顔がわかりにくい様にしてる。2人は魔族だし顔がバレてるかもしれないから隠さなきゃいけないんだよね。私もクロードさんと一緒にいるから顔がバレてるかもしれないから顔を隠さないといけないんだ。言う通りに帽子を深く被っておこう。
「ほら言った側から」
ローザさんが目線を向けた先にはヒスイ街で見た竜の騎士団の白い制服を着ている人たちが二人組で歩いている。見回りかなにかなのかな。私がその人たちを見ていたら視線に気付いたのか相手側もこっちを見てきた。つい咄嗟に目線を逸らしてしまった。不自然だったかも。
「大丈夫よ。私とアルバはできるだけ魔力を抑えてるから相当魔力の察知が得意じゃないと気づかれないわ」
「でも私魔力抑えられないです」
「リ、リリィさんの魔力は人間のものなので大丈夫、だと思います…。た、多分魔力が多い人ぐらいに思われてるだけだと思います」
「だといいですね」
私たちはそのまま何事もなく大樹、国立図書館へ到着した。遠くからじゃわからなかったけど大樹に大きな扉が付いていて窓も取り付けられてる。本当に大樹が建物になってるんだ。図書館には沢山の人が出入りしていて本当に誰でも出入りできるんだ。
「大きいですね〜」
「こんなに大きな図書館があるなんて。凄いわね」
「ローザさんの国には大きな図書館はなかったんですか?」
「そうね。私の国、ウォルトカリアは昔から戦争や争いが絶えない国だったから本なんてすぐに燃えちゃうし建物も壊れちゃうのよ」
「ほ、本当に大事なことは石板に残してたんです。そ、それでも残ってるのはごく一部、ですけど…」
「大変なんですね。ウォルトカリアって」
「そうねぇ。アイリス様が魔王になってからは本の復元や研究が進んだから図書館ができる様になったわね。懐かしいわ」
「そう、ですね」
2人が懐かしむ様に遠くを見つめる。2人にとってその時の出来事は今でも鮮明に思い出せるんだ。クロードさんもそうだったけどアイリスさんの話をしてる時はみんな懐かしそうに、嬉しそうに話してくれる。それほど大事にな思い出なんだろうな。私もお兄ちゃんのこと今でも鮮明に思い出せる。私もお兄ちゃんの思い出は大切でかけがえのないものだから。
「随分と懐かしい話しちゃったわね。さ、入りましょう」
大きな扉を潜って中に入る。中は思った以上に広くて天井も高い。何階建てかになってて真ん中の階段が螺旋状になってる。壁一面に本が並んでいて近くには本を読む様にテーブルと椅子が並んでいて沢山の人が読書を楽しんでいる。明かりはランプが宙を浮いていて不思議で少し幻想的だ。
「それじゃあ別れて手がかりになりそうな本を探しましょう」
「はい!」
「わ、分かりました」
「あ、そうだ。リリィちゃんはもし何かあったらこの蛇に話かけて頂戴」
ローザさんは服の袖から蛇を1匹出して私の腕へ絡みつかせた。ローザさんの髪の色と同じ青色の蛇だ。
「この子は私の使い魔よ。この子に話しかければ私にも伝わるから何かあったら話しかけて頂戴」
「分かりました!」
「そ、それでは今13時なので15時にここでまた集合しましょう」
「そうね。それじゃみんな頑張りましょう」
そうして私たちは一度解散して各自クロードさんの治療法の手がかりになりそうな本を探すことになった。私は取り敢えず魔族のことが書かれてる本棚を探すことにした。ローザさんのところの書庫と比べて何倍もの本が並んでる。ひとまず魔人のことが書かれてそうな本を手に取ってみる。適当にページを捲るけど書かれてることはローザさんのところで読んだ本とあまり変わらない。うーん……医学書とかの方がいいのかな。魔族に関しての医学書とかあるかな?




