90話 限界まで
「お待たせ。魔族に関する本ならここら辺がいいわよ。読みやすくて分かりやすいからおすすめよ」
「あ、ありがとうございます」
本を3冊積んで持ってきてくれたローザさんから本を受け取る。結構ずっしりして一瞬身体を持っていかれそうになった。咄嗟に体勢を立て直してローザさんにお礼を言う。
「ローザ様……」
「分かってるわよ。確かに少し疲れてきたし休んでくるわ」
「ぼ、僕も一緒に行きます。ちゃ、ちゃんとやすんでくれるか不安、なので」
「はぁ…心配性ね。リリィちゃんも一緒においで。リリィちゃんとヴァイスちゃんだけじゃ心配だし」
「は、はい」
「ワン!」
ローザさんの部屋に一緒に向かう。ローザさんの足取りやっぱり少しふらふらしてる。ハイヒールの音が不規則になっている。ローザさんの隣で歩いてるアルバさんも心配そうにしてる。そのまま無事に部屋に辿り着いてローザさんはすぐにベットへなだれこんだ。大丈夫そうに見えたけどやっぱり限界だったんだ。
「5、いや…10分経ったら起こして………」
「わ、分かりました」
そう言ってローザさんは寝息を静かにたてて眠ってしまった。本当にすぐに寝ちゃった。
「あ、こ、紅茶でも飲みますか?」
「ありがとうございます。その、ローザさん大丈夫なんですか?」
「だ、大丈夫ですよ。ロ、ローザ様は昔からよく研究に熱中して、ね、寝不足になるんです。そ、そしたら泥のように眠ってしまうんです。い、いつものことですので安心してください」
そう言いながらアルバさんは何もない空間からティーポットとカップを取り出す。ティーポットから湯気がたちのぼってることから温かいことが分かる。ティーポットをカップに注ぐ。砂糖の数を尋ねられ私は2個と答える。その通りにアルバさんは角砂糖をカップに落としティースプーンでくるくるとかき混ぜて渡してくれた。
「ありがとうございます。いつも温かい紅茶常備してるんですか?」
「そ、そう、ですね。こ、これはハーブティーでハーブはここで、さ、栽培してるんです。か、患者の人たちによく振る舞ったりしてるんです。あ、味は保証します」
紅茶からふわっといい匂いが香る。息を吹きかけてゆっくり飲む。ほのかに甘みがあってすっきりして飲みやすい。これなんてお茶だろう。紅茶には詳しくないから分からないなぁ。
「美味しいです。この紅茶。アルバさんが淹れてるんですか?」
「い、いえ。こ、紅茶が趣味な人がいてその方がよく紅茶を淹れてるんです。ぼ、僕はローザ様にって渡されているんです」
「なるほど…。その人に美味しかったですって伝えてください」
「わ、分かりました」
紅茶を机に置いて本を一冊手にとる。結構一冊が分厚いな。えーっとタイトルは『世界の種族』か。今私が知ってるのは、人間に魔族。あと獣人って種族だっけ。えーっとなになに?
『この世界には様々な種族が存在します。大きく分けて5つ存在します。人間、魔族、エルフ、獣人、そして精霊です。この世界で最も多く存在しているのが人間です。』
「エルフと精霊…。精霊って確かヴァイスに加護を授けてるって人?だっけ」
「ワフッ?」
「ヴァ、ヴァイスさん精霊の加護を受けてるのですか?」
「ワン!」
「炎の精霊の加護ってクロードさんが言ってたました」
「ほ、炎の精霊…。さ、流石フェンリル」
「ワフン!!」
誇らしげに鳴くヴァイスを見て笑いが溢れる。ヴァイスの頭をそっと撫でると嬉しそうに顔を緩ませた。可愛いなぁ。
「アルバさんは精霊見たことありますか?」
「ぼ、僕はないです。せ、精霊は基本的に人の前には姿を現さない存在、なので」
「そうなんですか……見てみたいですね。精霊」
「は、はい」
****
『魔族には様々な分類があります。他の種族に比べ複雑な種族です。魔族の分類は亜人、魔物、魔獣に分けられます。亜人の中で代表的な種族は魔人と呼ばれる種族です。魔人は頭から角が生えており、その角は魔力を生成する器官になっています。その為魔人は魔法を扱うのに長けています。』
魔人…クロードさんの種族だっけ。だからクロードさんは魔法を使うのが得意なんだ。でもクロードさんの角は今完全に切断されてるから魔法を使えないんだよね。それに毒の後遺症もあるから戦えない……。クロードさんを治すためにローザさんは必死で何か手がかりがないかを探してる。限界になるまでずっと…。
横目でベットに突っ伏して寝てるローザさんを見る。起きる素振りもなくずっと寝てる。ずっとうつ伏せで息苦しくないのかちょっと心配だ。
「そういえばアルバさん。ローザさん起こさなくて大丈夫なんですか?とっくに10分過ぎてますよね」
「い、いいんです。あ、あの様子だときっと何日も寝てないので。ね、寝かせておいた方がいいんです」
「確かにローザさん疲れてそうでしたし、その方がいいですね」
ローザさんこの部屋の中に来るまで本当に限界そうだったしゆっくり休んでもらった方がいいよね。歩いてるときもふらふらだったし。
「そういえばアルバさんは吸血鬼、なんですよね」
「そ、そうですけど。そ、それがどうしました?」
「吸血鬼も亜人、なんですよね」
「そ、そうです。き、吸血鬼は数が少ないんですが………」
「ローザさんは確かナーガって蛇の魔物って言ってましたよね。変身能力で今の姿になってるって」
「そ、そうです。え、えっとナーガについては……あ、あった。こ、これです」
アルバさんは本を一冊手に取ってパラパラとページをめくっていってあるところでページを捲る手をとめる。アルバさんが開いて見せてくれたページを見る。そこにはナーガについて書かれている。
『ナーガ。蛇の魔物。情報が少なく詳細は不明。分かることは毒の生成が得意なことと人間に変身できる能力を持っていることのみ。その他の生体や生息場所は不明。』
1ページに小さくナーガについて書かれてる。他の魔物についてのページと違って魔物の絵も載ってない。ナーガって珍しい魔物なんだ。でも魔物っていうとカシワ村の山で遭遇したゴブリンと同じなんだよね。ヴァイスも魔物らしいし、魔物にもいろんな種類があるんだな。
「ジャッカスさんは鬼人って言ってました。鬼人もやっぱり珍しい種族なんですよね」
「そ、そうです。そ、そもそも魔物から亜人に進化する種族自体がごく僅かなので」
「そうよ〜。あぁ見えてジャッカスって貴重な種族なんだからね」
「ロ、ローザ様!お、お、起きてたんですか!」
いつの間にかベットから起き上がっていたローザさんはアルバさんの方に顎をのせてアルバさんが開いてる本を覗きこんでいる。音もなく背後にいたからアルバさんは驚いて身体を飛び上がらせた。
「えぇ。今さっきね。う〜ん!よく寝たわ〜」
「も、もう少し寝た方がいいのでは…」
「いいの。私は忙しいんだから。それにしてもまさかリリィちゃんがジャッカスに会ってたなんて。どう?元気そうだった?」
「はい。すごく元気そうでしたよ」
「それならよかったわ。ま、アイツのしぶとさならそう簡単には死なないと思ったけど。ジャッカスは今どこにいるの?」
「ジャッカスさんに会ったのはカシワ村っていう村の山だったんですけど、ジャッカスさんはそこから離れるって言ってたので今はそこにいないと思います。どこに行くのかも聞いてないので今はどこにいるのかは…」
「そう……まぁそれなら仕方ないわね。ジャッカスがどこに行ったのかも検討がつかないし…。まぁその内合流できることを願うしかないわね。さて、と。私も調べ物再開しないと」
「ロ、、ローザ様もう少し休んだ方が……」
「少し休んだから頭もスッキリしたし平気よ」
ローザさんは立ち上がって身体を伸ばす。アルバさんはローザさんを止めようとしたけどそれを静止する様に手の平を向ける。ローザさん大丈夫って言ってるけどほんの数分休んだだけじゃ疲れは取れてないはず。
「ローザさん」
「ん?なに、リリィちゃん?」
「私も手伝います!!」
「あら、いいの?その本は?」
「この本はいつでも読めます。それよりも、一刻も早くクロードさんを治したいんです」
「本当にいい子を連れてきたわね。クロード。……いいわ手伝わせてあげる」
「!!ありがとうございます!」
「でも、手加減はしないわよ。バリバリ働かせてあげる」
「はい!望むところです!!」




