89話 食堂と書斎
「うっ…頭いたぁ……」
目が覚めると1番に頭の痛みに顔を顰める。なんか昨日の夜の記憶が朧げだし…。えっと…確か昨日、夜になかなか眠れなかった時にローザさんが部屋に来たんだ。それでローザさんについて行って部屋に行ったんだ。うん、ここまではちゃんと覚えてる。それでローザさんの部屋の地下に行ったんだ。地下にはアイリスさんの身体があったんだ。それで部屋に戻って………そうだ、私お酒飲んで、それで…………。
「ダメだ…お酒飲んでからの記憶がない……。私変なことしてなよね…?」
「クァアア……」
「あ、ヴァイス。おはよう」
「ワフッ!!」
ベットの端で寝ていたヴァイスもちょうど起きたみたい。目を覚ますようにあくびをしながら身体を伸ばしてる。こう見ると結構身体長いなぁ。ヴァイスが身体を伸ばしているのを横目に見ながら身だしなみを整える。髪のリボンは解かれてベットの近くに置いてあったから髪を手早く整えてリボンを結ぶ。
コンコン
「あ、リ、リリィさん。起きていますか?」
「あ、アルバさん。はい、もう起きてます。っいたた………」
ベットから起き上がると頭が痛んで抱える。こ、これが二日酔い……。頭を抱えながら何とか部屋の扉まで辿り着いて扉を開ける。アルバさんは心配そうに私の顔を覗き込んでる。相当顔色悪いのかな…。
「リ、リリィさんだ、大丈夫ですか?凄い顔色が悪いですが………」
「ちょっと…二日酔い、で…あはは……」
「だ、大丈夫、ですか?あ、そ、そうだ。ローザ様から薬を貰ってたんだ。これ、どうぞ。ふ、二日酔いの薬、みたいです」
「あ、ありがとうございます」
アルバさんから渡された小瓶の栓を抜いて早速飲み干す。前飲んだ薬と違って味に癖がなくて比較的飲みやすい。っていうか結構美味しい。速効性なのか飲んだら幾分か頭痛がマシになった気がする。ローザさんにお礼言わないと。
「ありがとうございます。少しよくなった気がします」
「よ、よかったです。ローザ様の薬はよく効きますから。と、特に二日酔いの薬は1番効きます。…ローザ様自身がよく二日酔いで苦しんでますから……」
「あぁ……」
「と、とりあえず朝ごはんの用意ができてるので食堂にあ、案内します」
「ありがとうございます」
「ワフッ!」
アルバさんに着いて行って廊下を歩いて行く。まだ少し眠くてうとうとするけど何とか目を覚ます。ぼーっとしながら歩いてるとふと前のアルバさんが欠伸をする声が聞こえた。
「アルバさんも眠いんですか?」
「あ、ご、ごめんなさい!つ、つい欠伸が……」
「謝らないでくださいよ!私も眠いですし。今も欠伸をするの我慢してますから」
「クアァ……」
「ふふっ!ヴァイスも大きな欠伸してます」
「ぼ、僕のは少し違うっていうか…。僕はその、吸血鬼なので夜行性、なんです。だ、だから夜に弱くて………」
「確かに吸血鬼って夜のイメージがありますね…。あ!アルバさん朝に起きてて大丈夫なんですか?その、朝日とか…」
「ぼ、僕はこれでも一応は純血の吸血鬼ですから……朝日とかにはある程度の抵抗はあるので大丈夫です。し、心配してくれてありがとうございます」
「そうなんですか。純血ってことはやっぱり凄いんですか?」
「い、一応、ですけどね……あはは………」
アルバさんなんだか気まずそう。声にいつも以上に覇気がない気がする。あんまりこの話題に触れられたくないのかな。もしかして結構デリケートな話だったのかな…。
「あ、こ、ここです。着きました」
「は、はい!」
食堂の前に着くと中から既にいい匂いが漂ってくる。中には意外と人が少ないみたい。やっぱり夜型の人が多いから朝は起きてる人が少ないのかな。あたりを見渡しながら空いている席に座る。アルバさんがいつの間にか持って来てくれた朝ごはんがテーブルに置かれる。パンに熱々のスープそれにみずみずしいサラダ。健康的な朝ごはんだ。ヴァイスにも食べられるものを用意してくれたみたい。でもテーブルに並べられたのは1人分だけ。
「1人分だけ…?」
「あ、はい。ぼ、僕はお腹空いてないので」
「そうなんですか?なんだか自分だけ食べるの申し訳ないですね」
「き、気にしないでゆっくり食べてください」
「そうですか…」
やっぱり人間の私と吸血鬼のアルバさんじゃ違うんだ。クロードさんも私とは違うところあるのかな。やっぱり1番は寿命、なのかな……。いやいや、朝から暗くなっちゃダメだよ。
「いただきます!」
「ワフン!!」
最初にパンにかぶりつく。見た目以上に凄いふわふわだ!パンを飲み込んでスープを手に取る。ふーっと息を吹きかけて冷ましてやけどしない様にスープを啜る。トマトベースのスープで野菜がたっぷり入ってて美味しい!レシピ教えて欲しいな。自分でも作ってみたい。ヴァイスも美味しそうに勢いよく食べている。
「お、美味しそうに食べますね」
「そうですか?でも実際凄く美味しいです!」
「そ、それはよかったです。シェフもき、きっと喜びます。シェ、シェフは10年前城で料理長をしていたんんです。う、腕は確かです」
「王宮料理人ってことですか?」
「そ、そういうことになりますね」
「でも魔族と人間の味覚っておんなじなんですね」
「そ、そうです。……す、少しいいですか?」
「はい?なんですか?」
口に残っていたものを飲み込んでアルバさんに返事をする。
「リ、リリィさんって魔族についてあまり詳しくないんです、か?」
「そう、ですね。私クロードさんに会うまで魔族に会ったこともなかったですし、魔族の存在もお父さんから聞いただけだったので」
「そ、そうなんですか。…………え、えっとよかったらですけど、このあと書斎にい、行きませんか?」
「書斎、ですか?」
「は、はい。書斎にはいろいろな本があるので、ま、魔族について詳しくないなら知っておいた方がい、いいと思いまして。その…ここは魔族が多いので知っておいた方がいいと思いまして……。そ、そのてん余計なお世話、でしたか…?」
「い、いえ!!嬉しいです!ぜひ、ぜひ行きましょう!」
「よ、よかったぁ……」
安心してほっと胸を撫で下ろすアルバさん。誘うのに気力を使い果たしたのかテーブルにつっぷしてしまった。腕とテーブルの間で大きなため息が漏れ出している。嫌なため息じゃなくて安堵からのため息みたいだ。
「そ、それじゃあ食べ終わったらさ、早速行きましょうか」
「それじゃあ早く食べちゃいますね!」
さっきよりも急ぎ目に食べる。足元を見るとヴァイスはもう食べ終わったみたいで座りながらあたりをきょろきょろしてる。ヴァイスは食べるの早いなぁ。
****
「ご馳走様でした」
急いで食べ終わって手を合わせる。アルバさんはヴァイスを撫でたりして暇を潰してたみたい。それにしても食べてる時に他の人からの視線が凄い気になった。アルバさんのじゃなくて少し遠くで座って朝ごはんを食べてる他の魔族の人の視線だ。珍しい人間が気になるのかちらちらとこっちを見られてる感じがした。ここにいる魔族の人はクロードさんみたいな頭から角が生えてる人じゃなくて鱗がある人やトカゲのような特徴を持ってる人が多いみたい。クロードさんとはまた違った種族なのかな。
「アルバさんお待たせしました」
「い、いえ。全然待ってないのでだ、大丈夫です。そ、それじゃあ行きましょうか」
「はい!」
「ワンッ!」
食べ終わった食器を持ってカウンターの方へ持って行く。カウンターの奥で作業をしている人たちにご馳走様を言って食堂を後にする。そのまま廊下を歩いて行って書斎へと向かう。向かう途中すれ違う人たちが私のことを見てヒソヒソ話したり、アルバさんに頭を下げて挨拶していた。アルバ様って呼ばれてたからアルバさんも偉い人なのかな。
「アルバ様って、アルバさんって偉い人なんですか?」
「え、偉いっていうか…そ、そのローザ様の直属の部下、なので…。ぼ、僕が偉いっていうよりもローザ様が凄いんです」
「確かにローザさんってオーラありますもんね。そういえばクロードさんってアイリスさんの右腕だって言われてたんですよね。それじゃあクロードさんと仲がいいローザさんも凄い人、なんですか?」
「ロ、ローザ様とクロード様は魔王直属の親衛隊で四芒星って呼ばれてる人たちなんです。お、おふたりは魔王軍の人たちから、そ、尊敬され憧れなんです」
そういえばルイさんがクロードさんは魔王の右腕って言ってたっけ。そのクロードさんと仲がいいローザさんも凄い人なんだ。あ、そういえばジャッカスさんもクロードさんと仲がよかったしジャッカスさんももしかして四芒星って人だったのかな。
「アルバさん。ジャッカスって人も四芒星なんですか?」
「ジャ、ジャッカス様、ですか?そ、そうですがどうしてリリィさんが、し、知ってるんですか?」
「ローザさん達と会う前にジャッカスさんと会ったんです。それでクロードさんと仲が良さそうだったからもしかしてと思って」
「ジャ、ジャッカス様とお会いになったんですか!?」
「え、そ、そうです」
「ま、まさかジャッカス様がご無事だったとは……あ、そ、そのことはローザ様は?」
「え、知らないと思います」
「こ、これは早くローザ様に報告しなければ…。だ、だけどローザ様は今お休みのはず……」
アルバさんが顎に手をあてて悩みはじめちゃった。そういえば10年前に仲間の人たちと離れ離れになってってクロードさんが言ってたし無事だったことが分かったんだから嬉しいんだろうな。ローザさんも仲間のことを知ったら嬉しいんだろうな。
「あ、す、すみません。急に黙ってしまって」
「いえ!でもジャッカスさんのこと伝えられてよかったです」
「そ、そうですね。ジャッカス様は心強いお方。生きていることが分かってよかったです」
アルバさんの表情から本当に嬉しいことが伝わる。10年間無事かわからなかったんだもんね。本当によかった。
「ほ、他にはいませんか?ま、魔族の方とかは」
「うーん……いない、と思いますね」
「そ、そうですか。あ、ここが書斎です。あ、あっという間でしたね」
アルバさんと話してるとあっという間に書斎についてしまった。他の部屋と違って木製のしっかりとした扉だ。アルバさんが両手で扉を開けるとギィっと音がしてゆっくりと扉が開く。中は思ったよりも広くて壁沿いに本棚がズラッと並んでる。本棚いっぱいに本が収納されていていろんな種類の本がある。静かな部屋の中に誰かの足音が聞こえる。誰かいるのかな?
「あら?アルバにリリィちゃんじゃない。どうしたの?まだ朝なのに」
「ロ、ローザ様こそどうしてここに!お、お休みになってるはずじゃ…」
「休んでなんかいられないわよ。クロードの角を治す方法を見つけなきゃいけないの。少しでもいいから手がかりを見つけないと」
「で、ですがローザ様、クロード様が来てからまだ休んでいないじゃないですか。お、お願いですから少し、や、休んでください」
「…仕方ないわね。もう少ししたら休憩するわよ。それでリリィちゃんはどうして書斎に?」
「私魔族のことについて知らなさすぎるので少し知識をつけようと思って」
「確かにここは魔族が多いし、これから魔族に遭遇することもあるだろうし知っておいて損はないわね。少し待ってなさい」
そう言うとローザさんは部屋の奥の方へ歩いていってしまった。アルバさんが言った通りローザさんが休んでないなら少し心配だ。化粧で顔色を隠してるけど声に少し覇気がない気がする。ローザさんはクロードさんのために休まずにずっとクロードさんを助ける方法を探してるんだ。私にも何か手伝えることはないかな。私もクロードさんを助けたい。その気持ちはきっと同じなはず。




