88話 最後の夜
「今日で終わり、か」
誰もいない城は初めて。夜なのに誰の話し声も聞こえない。この時間ならローザがみんなと酒盛りをしてそれをクロードに怒られる声が城中に聞こえるのに。
「今日はメイの誕生日だったのに…。ちゃんと祝いたかったな。みんなも準備してくれてたのに」
キッチンにはご馳走の用意もケーキもあったのになぁ。勿体無いな。もっとみんなと話せばよかった。もっと一緒にいたかった。メイが結ばれてメイの子供を抱えてメイがおばあちゃんになるのを見届けて、そうやって一緒に過ごしたかった。短い時間を一緒に過ごしたかった。でもこれは私が招いたこと。全部は私のせい。私が全部終わらせなくちゃ。
「大きくなってるんだろうなぁ。最後に会ったのは生まれた時だったし。楽しみだなぁ。きっと覚えてないだろうけどそっちの方が都合がいいし、いっか」
あぁそういえば私がいなくなったら魔獣のみんなどうするんだろう。また野生に戻ったらやだな。あとカルヴァロンも。まぁそっちはカルヴァロン自身の問題かな。みんなのことはティターニア様とジョーガに頼んでるから安心だな。
「2000年近く生きたんだ。もう十分だよね。もうすぐいくよパパ、ママ」
ずっと1人だった。パパとママがいなくなってからずっと1人で彷徨ってた。クロードと出会って私は1人じゃなくなった。それからローザとキリアと出会って魔王を倒して玉座についた。ジャッカスと出会って前魔王の残党と戦った。メイと出会って人間と魔族の可能性に希望を見出した。でもダメだった。私がいるから人間と魔族は手を取り合えない。私がいなくなったらきっとうまくいくはず。
「ちゃんとみんなにお別れ言いたかったな」




