85話 涙の真実
「とうちゃーく。お疲れ様!」
「死ぬかと思った……」
人魚の人たちに舟を運んでもらってトレイダ街の港の近くまで到着した。物凄いスピードで舟が進んでいくから振り落とされない様に舟に必死にしがみついてなんかどっと疲れて舟のへりに寄りかかる。ヴァイスとアルバさんは全然平気な様子で舟に乗ってたしむしろヴァイスに至っては楽しんでいるように見えた。尻尾凄く振ってたし。
「す、すみません…ここまで送っていただいて」
「いいのよ。私たちが好きでやったことだから」
「それと〜ローザ様によろしくお願いね〜」
「は、はい。お伝えします。リ、リリィさん、もう少しで着きます。だ、大丈夫、ですか?」
「は、はい……」
「キューン…」
「ヴァイスもありがとうね。ここまで送ってもらってありがとうございました」
「それじゃあまたね!」
「元気でね」
「ばいば〜い」
人魚のみんなは手を振って再び海に潜っていった。でも、本当に人魚にあって話したなんて、昔の私に言ってもきっと信じてもらえないだろうな。
「それじゃあもうひと頑張りですね!」
「は、はい」
少し先に見えるトレイダ街の港へ向けてオールを持って漕ぎ始める。シーサーペントに襲われたりとか大変な航路だったけど人魚の涙を無事に手に入れられた。これでクロードさんを助けられる。待っててくださいクロードさん!
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「ローザさん戻りました!」
「ワフン!」
あれからローザさんの隠れ家まで無事に戻ってくることができた。出発したのは朝だったけど時計の短針は2の数字を回ろうとしている。
「あら、もう戻ってきたのね。お疲れ様。アルバもありがとね」
「い、いえ…ローザ様の命令を遂行したまでです」
「硬いわねぇ相変わらず。まぁいいわ。さ、こっちに座って」
ローザさんに手招きされて正面の椅子に座る。アルバさんはローザさんの後ろに立っている。忠臣なんだな。
「その髪の色、銀色に戻ったのね。その髪の色じゃ目立つだろうし定期的に薬使う?」
「い、いえ。この色気にってるので大丈夫です。それに帽子もかぶってるので」
正直なところあの薬を毎回飲むのは勘弁したい。あの味じゃなかったらまだよかったんだけど…。
「そう?でも銀色の髪なんて目立って仕方ないから十分気をつけるのよ」
「思ったんですけど銀色の髪ってそんなに珍しいんですか?確かに今まであったことはないですけど」
「私が今まであったことあるのはリリィちゃんを含めて3人だけよ。それぐらい珍しいの銀色の髪って。まぁ話はこれぐらいにして。人魚の涙渡してくてれる?」
鞄から大事にしまっておいた人魚の涙を取り出す。真珠みたいな見た目だけど色合いや輝きが違って見える。ローザさんに渡すと天井の光にかざして眺めてる。
「成程…確かに本物ね。よく頑張ったわね。大変だったでしょ」
「あはは…確かに大変でしたけどクロードさんの為ですから」
「本当にクロードのことが大事なのね…」
「これでクロードさんを助けられるんですよね。お願いします!クロードさんを助けてください!」
「結論から言うと無理ね」
「ど、どうしてですか!?人魚の涙は怪我や病気を治せるんですよね?だったら治せるはずじゃ…。それともまだ足りないものがあるんですか。だったら私が取りに行きます!私なんでもします!だから…クロードさんを………」
人魚の涙でもクロードさんを治せない?でも、でも!それでも私はクロードさんを助けたい。私にできることがあるならなんだってやりたい。弱い自分にできることがあるなら……。
「人魚の涙に怪我や病気を治せる効果なんてないわ。人魚の涙はただの宝石よ」
「な、なんでそんな嘘を言ったんですか!?」
「ワフッ!?」
ヴァイスが私の声に驚く。急に大声を出したからヴァイスも驚いてしまった。少し冷静にならなきゃ。
「貴方を試したかったの」
「試す?
「そう。貴女は人間。私たち魔族の問題に関わらせるのは危険だと思ったの。それで貴女にどれほどの覚悟があるのか試してみたかった。もし人魚の涙をとってこれなかったら私は貴女を無理矢理にでも家に帰そうと思ったの」
「それの為に私に人魚の涙を…」
「そうね。でも貴女は無事にとってきた。私は貴女を認めるわ」
私は知らない間にローザさんに試されてたんだ。無事にローザさんに認められてよかった。でも人魚の涙じゃクロードさんは治らないんじゃどうしよう。このままじゃクロードさんは助けられない…。
「クロードについてだけど今のところは手詰まりなの。クロードの後遺症の治し方、魔力を元に戻す方法は未だにわからないわ」
「そんな……」
「キューン…」
「でも引き続き調べ続けるわ。クロードにここでリタイアされたら私たちにとってもよくないもの。それと貴女にも話しておきたいことがあるの。でも今日はもう休んでおきなさい。お風呂沸かしておいたからゆっくり温まっておきなさい。見た感じ海に落ちたんでしょ。風邪、ひかない様にね」
「は、はい」
「アルバ、案内してあげて」
「は、はい。分かりました。リ、リリィさん、つ、着いてきてください」
アルバさんに案内されて後ろを着いていく。確かに海に落ちて服と髪が完全に乾いてなくて少し寒いしありがたかった。でもこれからどうすればいいんだろう。人魚の涙にクロードさんを治す効果はなかった。それにローザさんもクロードさんを治す方法は今のところはないって言ってたし。ローザさんが治す方法を見つけてくれればいいけど、私の方でも探してみないと。
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「はぁ〜あったまる〜……」
「ワフ〜ン…」
アルバさんに案内してもらったお風呂場でゆっくりと湯船に浸かって海で冷えた体をあっためる。湯船に浸かったのなんて家にいた時ぶりだ。クロードさんと旅をしてからずっと身体を拭いて済ましてたからさっぱりする。ヴァイスも小さくなって桶に溜めたお湯に浸かって気持ちよさそう。ヴァイスの毛が濡れて随分ほっそりしちゃってちょっとだけ面白い。
「ふぅ〜……でもゆっくりしてる場合じゃないよね。クロードさんを治す方法を探さないと。でもどうやって探そう…」
ローザさんでも知らないとなると簡単には見つからないはず。根気よく探さないと見つからない。頑張らないと。今の私にできるのはこれくらいしかないんだから。
「のぼせる前にでないと。ヴァイスもあがろ」
「キャン!」
ヴァイスを抱えてお風呂場を後にする。脱衣所には用意してくれたのか新しい着替えとタオルがある。ヴァイスを降ろしてタオルで髪の水けを軽く拭き取る。その後に身体を拭いて用意してくれた着替えに袖をとおす。着替えはワンサイズ大きいブラウスみたいだ。ズボンも用意してもらってるけどこれくらい大きかったらブラウスだけでいいかも。ワンピースみたいでちょうどいい。
「ブルルルル!!」
「わっ!ちょっと!ヴァイスも拭かないとね」
ヴァイスが身震いして水滴を派手に巻き飛ばす。こっちまで少し飛んできたけど、そこまで被害は大きくない。こっちの着替えも済んだしヴァイスも乾かさないとね。ヴァイスを乾かすのは骨が折れそうだなぁ。
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「ふぅ……やっと終わった…」
「ワフッ!」
ようやくヴァイスを乾かし終わった。ヴァイスの毛はいつもよりもふっかふかでいい匂いもする。ヴァイスも満足そうだ。でもそれ以上に疲れた…。もう部屋に戻って寝よう。もう体力使い果たして目がしょぼしょぼする。
「ふわぁー…。部屋に行こっかヴァイス」
「ワン!」
眠気と戦いながら部屋へと戻る。廊下をふらふら歩きながら壁に立てかけてる時計を見る。まだ夕方前なのにこんなに眠いなんて。少しだけお昼寝したい…。
ぼーっとしながら歩き続けてようやく部屋に辿り着く。部屋に入った瞬間にベットに飛び込む。うつ伏せになりながらうつらうつらと眠気に身を任せる。ヴァイスも私の隣に潜り込んでまるくなる。ヴァイスも疲れてたんだね。ちょっとだけ、ちょっとだけ寝よう………。




