79話 六団長会議
「それでは緊急団長会議を始めます」
「今回はセリオスの代わりに僕が参加しまーす」
突然本部から緊急だと通達されて城に集まった。入院しているセリオスの代わりに今回はルイが参加しているらしい。
「今回はヒスイ街、トレイダ街で会敵した前魔王軍魔王親衛隊四芒星、混沌のクロードの件です。クロードと戦闘した第六団長セリオスさんが右脚を奪われ、現在も医療班の別棟で入院中です」
この会議を仕切っている第一団長のリヒト・ロンリネス。俺と歳がひとつしか変わらないのに王国の騎士団のトップに立ってる男だ。物腰が柔らかくて愛想がいいが、俺は少し苦手だ。隙がない完璧超人って感じがして近づき辛いんだよな。10年前に勇者ダンテって奴と一緒に最前線で戦ったらしい。勇者一行の仲間の1人らしい。副団長を唯一つけない変わりものだ。
「その後に俺がトレイダ街でクロードと戦って勝ったてわけだ」
「オリオンさんクロードの死亡は確認したんですか?」
「アシュレイがあの毒を打ち込んだんだ。確認しなくても今頃死んでるよ」
「あぁ…あのマナロトキシンか。おれぁあの毒嫌いだよ。卑怯な戦い方は嫌いだ」
この話に反応したのは第五団長のカルヴァ・エクスレス。もう50近いのに未だに最前線で戦ってるオヤジだ。無精髭にオールバック。筋肉隆々でいかにも脳筋ってやつだ。でも俺はカルヴァ親父のこと嫌いじゃないな。
「僕がアシュレイに預けた毒、役に立ったようで良かったですねー」
「ルイ、お前がアシュレイに渡したのか」
「役に立ったから良かったじゃないですかぁ。結果オーライですよー」
「お前、一応俺が団長でお前が副団長だからな。違う団とはいえ言葉遣いには気をつけろよ」
「はーい」
「テメェ…」
「ルイさん。あんまりオリオンさんのこと煽らない方がいいですよ。オリオンさん怒らせるとおっかないので」
「バロン、一言余計だ」
第四団長バロン・ユーフィニア。優しくていいやつだが少し弱々しいのが勿体無い。それと少し天然なところがある。もともとは何処かの服屋を家族で経営してたらしいが、ギフトを持ってたばかりに兵役にかけられた。コイツは強い、けど戦いには不向きな性格すぎる。
「えーっと話を戻しましょうか。10年間現れなかったクロードが突然現れたってことは何かしら目的があるはずです。もし、他の四芒星が現れたら危険です。残りの四芒星が現れないか警戒しなくてはいけません」
「まぁそうだな。セリオスの右脚が取られたってことは魔王の復活でも考えてるんじゃないか?」
「そうかもしれませんね。でもクロードはもう死んだんですよね。ならもう大丈夫なんじゃ?」
「他の四芒星が企むかもしれえねぇじゃねぇか。警戒しておいて損じゃねぇよ。な、お前もそう思うだろモネ団長」
「…………………」
「お前も変わっちまったな」
やたらもの静かで否定も肯定もしない女は第三団長のモネ。コイツのことはよく知らない。10年前に一度会ってからそれ以降話すことはなくなった。上からの指示で任務の時はよく一緒になるが話すことはない。仕方ないな……。
「他の3人は他の四芒星は発見しましたか?」
「僕は見てないです。魔族がいたら直ぐに分かるので」
「俺も見てねぇな。もし分かったら直ぐに報告する」
「見てない」
3人も見てないのか。まぁそうだろうな。
「それではもし他の四芒星を発見したらすぐに報告してくださいね。それでは他の議題に移りましょうか」
****
「はぁー……やっと終わった」
あの後オークション会場を襲撃されたことをぐちぐち言われて精神的に疲れた。会議が終わった後直ぐに部屋から出ていった。あータバコ吸いてぇ…。場内で吸ってるところ見られると侍女さんに怒られるんだよなぁ。裏庭に行けば誰もいないよな。行くか。
「あれ見て第二団長様よ」
「本当だ!かっこいいよねぇ」
「でもさ、オリオン団長って孤児だったらしいわよ」
「え、そうなの?」
「しかもストリート育ちだって噂もあるみたいよ」
「えー…ちょっと幻滅したかも」
「振る舞いも少し横暴なところもあるし、育ちがでてるわよね」
「確かに!あはははっ」
廊下を歩いてると遠くから侍女2人の話し声が聞こえる。どうやら俺の話でもしてるみたいだ。話してる内容に間違いはねぇがいい気はしねぇな。
「聞こえてるっつーの」
思わずため息がでる。結局は育ちの良さ、金だ。スラム出身で俺のことを受け入れてくれたのはアシュレイとアイツだけだ。自分の団員にも陰口を言われる始末だ。ここは、俺にとって居心地が悪い。早く終わらせて楽になりてぇな。
「よし、誰もいねぇな」
裏庭について周りに誰もいないことを確認する。定期的に手入れされているのか花も草木も整えられている。流石王都の城だ。金持ってるな。芝生に座りこんで懐から箱を取り出してタバコを一本咥える。着火用の魔道具を取り出して火をつける。
「すぅー……ふぅー………」
肺いっぱいに紫煙を吸い込んで口からはきだす。青い空に煙が舞いあがる。久しぶりに吸うとやっぱり美味いな。数時間ぶりだ。
「はぁー………。後でアシュレイの見舞いでも行くか。暇だしな」
たいしたことはなかったらしいが一応検査で入院している。俺から見ても大丈夫そうに見えたが何かあったら大変だし入院を勧めておいた。本人は嫌がってたがな。
「オリオン」
「うおっ!?な、なんだお前!急に後ろから話しかけんなよ!」
「すまない」
タバコを吸いながらぼーっとしてたら後ろから急にモネが話しかけてきた。咥えてたタバコを落としかけたが、なんとか手のひらでキャッチした。手袋をしてたから熱さを感じなくてすんだ。そのままタバコの火を消す。
「なんだよ。お前から話しかけてくるなんて珍しいな」
「クロードを本当に殺したのか?」
「あ?あぁさっきの話か。死体は確認してないが確実に死んだはずだ」
「わかった」
「それだけかよ」
「あぁ」
たったこれだけのことを聞くためにわざわざ聞きに来たのか。
「…………」
「ん?なに見てんだ」
「あれ」
「たぬき、だな」
モネが指差す方に目線を向けるとたぬきが草陰に隠れていた。王都にたぬき?珍しいこともあるもんだな。隠れながら俺たちを見てる。逃げないんだな。
「好きなのか?」
「食べると、美味しい」
「キュッ!?」
「お前たぬき食べるのか…」
モネの発言にたぬきも驚いたような鳴き声をあげる。俺がいたところはたぬきなんていなかったから食べたことはないがコイツ食べたことあるのか。どんな生活してたんだ。
「あれ〜?オリオン団長にモネ団長じゃないですか。珍しいですね」
「ルイ…。お前こそこんなところになんのようだ?」
「天気がいいから昼寝でもしようと思ってちょうどいい場所探してたんですよ」
「堂々とサボりを…」
「人のこと言えないじゃないですか〜」
「お前…」
「それにしてもモネ団長とこうして話すのは初めてですよね〜。任務で同じになることもないじゃないですか。よく噂になってますよ〜。ミステリアスだって」
「……………」
「ありゃ黙っちゃった」
「キュ、キュー……」
「あれ?なんでこんな所にたぬきがいるんだ〜?」
「キュッ!!」
「たぬきは僕が外に逃しときますね〜。それでは失礼しまーす」
ルイがたぬきを抱えて戻っていった。アイツ本当に何しに来たんだ。
「私も行く」
「そうか。ってか話しって本当にそれだけかよ」
「あぁ。それじゃあ」
あれだけのことを聞くために俺を探したのか?アイツの考えてることは分からん。そもそもアイツ、いつからあんなに話せる様になったんだ?はぁー……めんどくせぇな。
「言い忘れてた。タバコ、体に悪いから控えた方がいい」
「お、おう」
振り返ってそれだけ言うとまた帰って行った。調子狂うな…。わざわざあれだけのことで戻ってきたのか。
「はぁー…見舞いに行くか」
****
「来たぞアシュレイ」
「団長!どうしたんすか。こんなところまで」
医療班の入院別棟まで来てアシュレイの見舞いに来た。ベットに座ってるアシュレイは見た感じ元気そうだ。手元にはスケッチブックと鉛筆が握られてるから絵でも描いてたんだろう。
「本部で会議があったからついでに寄ったんだ。調子はどうだ?」
「全然元気っすよ。そもそも入院するほどのことじゃなかったんで」
「雷魔法浴びたんだから一応検査受けろって言っただろ。もし手に麻痺でものこったらどうするんだ」
「……ありがとうございます。久しぶりにゆっくり休んだんでめっちゃ元気になりました」
「おう。それならよかった」
「明日には退院できるので仕事頑張ります」
「頼むな」
明日には退院できるならよかった。アシュレイがいないから書類が溜まり始めて大変だったんだよな。うちの奴ら全員書類仕事苦手だから溜まる一方なんだよ。
「失礼します。アシュレイ副団長いらっしゃいますか」
「セリオス!お前大丈夫なのかよ!?」
「えぇ大分回復しました」
「俺に何か用ですか?セリオス団長」
セリオスがアシュレイの部屋を訪れてきた。俺が余ってた椅子を引っ張ってきてセリオスをそこに座らせる。セリオスは今右脚がなくて立つのもキツいだろうからな。今も松葉杖をついて歩いてるから辛そうだ。
「クロードと交戦したんですよね。貴方たちに大きな怪我がなくてよかったです」
「お前は右脚を取られたんだろ。これからどうするんだ?」
「明日義足をつける予定です。リハビリなどもあるので長期間の休養を要請しました」
「そうか。じゃあしばらく休みなのか、いいな」
「えっと、それでセリオス団長は俺になんの用なんですか?」
「あぁ忘れていました。すみません…。クロードにマナトキシンを投与したらしいですね。どうやらうちのルイが勝手に渡したらしく。私の管理不足で申し訳ありません」
「もう話がそこまでいってたんですか。まぁいいですよ。俺も上層部から結構怒られましたけどね。勝手に重要物を相手に使うだなんてって。別に俺は気にしてないんでいいですよ」
「セリオス、ルイの奴なんとかできないのか」
「申し訳ありません…。ルイ副団長には私も手を焼いていまして。はぁ……長い付き合いなのに…」
「セリオス団長……」
「まぁ気にするなよ。お前はこれから長期休みなんだろ。ゆっくり休んでまた戻ってこいよ」
「ありがとうございます。それでは私は失礼します。お詫びの品はまた後日送らせてもらいます」
セリオスは頭を下げて病室を出てった。お詫びの品、ねぇ。
「きっと凄いの送られてくるぜ」
「え?どういうことっすか??」
「アイツでっかい貴族の家出身だからお詫びの品って言ったらきっと凄いの送ってくるぜ。覚悟しとけよ」
「覚悟って……そんな大袈裟な…」
「だといいけどな。それじゃ俺ももう行くか。ゆっくり休めよ。明日からはどんどん書類仕事まわすからよ」
「分かりました!また明日!」
「おう!」




