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魔王復活目録  作者: わか3
トレイダ街編
78/128

78話 最悪と最善




「ここ、は……ゲホッ」


 さっきまで俺は外にいたはずだ。なのに、目の前には天井があり今ベットで寝ている。一体ここはどこなんだ……。


「気がついたのね。よかった…って言いたいところだけど貴方今非常にまずい状況よ」

「ローザ…幻じゃ、なかったの、か」

「この美しさだから幻と思っても仕方ないわね。って冗談言ってる場合じゃなかったわ。

 今の貴方の状況を説明するわ。今の貴方には正体不明の毒が打ち込まれているの。解毒方法は未だ不明。とりあえず毒の巡りを遅くする薬を投与したけどそれでいつまで延命できるか分からないの。解毒方法が見つかるか、それとも貴方が力尽きるのが先か。どっちが先かしらね」

「ははっ……笑えないな」

「まぁ頑張ることね」


 あのローザでもすぐに解毒できない代物。本当にやばいものが俺に打ち込まれたみたいだな。本当に俺は長くないのかも知れない。なら……。


「ローザ……」

「ん?なに?」

「頼みが、ある…。フェンリルを連れた銀髪の人間の女、が居るはずだ…。頼む…助けてやってくれ」

「人間嫌いの貴方がねぇ…。私もその子のこと気になってたし、まぁいいわ。助けてあげる」

「知って、たのか…ゲホッ…!」

「蛇たちが貴方を見つけてから監視させてたのよ。だから貴方達がこの街に来てからのことは大体知ってるわ」

「なら、もう少し早く会いにきたら…どう、だったんだ…ゴホッ!」

「私がこの街いることを人間側に知られたくなかったのよ。ここには私以外にも傷ついた仲間が沢山いるの。沢山の子たちを連れてまた違う隠れ家を探すのは大変なのよ。だからできるだけ貴方たちに会うのは避けたかったんだけど、こればっかりは仕方なかったわね」

「お前以外にも…いる、のか」

「そうね。アルバもいるわ。他の子達に会わせるのは貴方が元気になってから会わせてあげる。今はもう大人しくしてなさい。出来るだけ体力を温存しておくことね」

「あぁ、そうするよ…」


 そうか、他の仲間も無事だったのか。本当によかった。10年前、全員バラバラになってローザ達以外の仲間もどこに行ったのか分からなかったがローザのところにいたのか。ローザのところなら安心だな。あぁ…意識がまた朦朧としてきた。俺の命の灯火がどこまで持つか………。




 ****




「さて、始めましょうか」


 注射器に解析道具を揃えて眠っているクロードの前に立つ。一刻も早く解毒方法を探さないと…。クロードはアイリス様にとって欠かせない存在。絶対に失う訳にはいかないわ。


「失礼するわね」


 クロードの腕から血液を採取して解析道具に載せる。本当に見たこともない毒…。ここ10年で人間側がこんな毒を開発してたなんて。


「それにしてもいくら処置をしたからって毒の巡りが遅い気がするわね…。何かある筈……」


 症状は吐血、咳、目眩に難聴…。類似している毒は沢山あるけど、今までの毒とは何か違う特徴がある。毒の巡りが普通の毒に比べて緩やかね。あの状況でクロードにこの毒を打ち込んだ。なのに態々弱い毒を打ち込むかしら?いや、解毒方法が分かっていないから時間稼ぎとして丁度よかった?


「ガハッ!!ゴホッゴホッ!ひゅー…ひゅー……ゲホッ…!」

「クロード!?どうして急に症状が…!?」


 いきなりクロードが血を吐きはじめた。どうして!?さっきまで容体は安定していたのに!まさか毒が周り始めた?でもどうしていきなり…。


「解析を早くしないと…」


 血液中の毒を魔道具を使って分離する。この毒になにかしら細工があるはず…。急に症状が進行したってことは時間が経つことで症状が急激に進行する細工…。時間…血液中の酸素?いや、今のクロードは過呼吸でむしろ血液中の酸素は少なくなってるはず…。


「血液…酸素、時間差……まさか!?」


 分離した毒に魔力を流し込む。すると毒が泡立ち始めて色が濃くなる。やっぱりこの毒は魔力に結びついて毒が強くなる。クロードの容体が急に悪くなったのは空に近い魔力が回復して毒もそれに反応した。だけど……


「毒を完全に解毒する方法が見つからない…!」


 このままだとクロードの魔力はどんどん回復していって毒も比例して強くなっていく。これじゃあ解毒方法を見つける前に先にクロードが………。いや、1つだけ方法が……


「角の完全切断…。魔力を生み出す器官である角を切断すれば魔力は新たに生み出されない。でもそれじゃ……」

「やって、くれ……ガハッ…」

「クロード!でも、角を切断したら貴方は魔法が使えなくなるのよ!そしたら貴方はもう戦えなくなる!!」

「それでも、いいんだ…ゲホッ!はぁ…はぁ……ゴホッ…魔法が使えなくても生きていれば戦える…。ゴホッゴホッ…俺はこの身ひとつになってでもアイリス、の為に、戦い続ける…」

「貴方のそういうところ好きよ。…貴方がそう言うなら分かったわ。私としても貴方に死んでほしくないの。貴方はアイリスにとっての希望になる。貴方が死んだらアイリスが悲しむわ」

「そう、かもな……。それともうひとつ、頼みが………」




 ****




「ふぅ…」

「あ、ロ、ローザ様!そ、そのクロード様は……」

「ローザさん……!」

「2人ともまだ起きてたのね。まぁアルバは当たり前だったわね」

「クロードさんは大丈夫なんですか!?」


 クロードの診察、毒の解析その他諸々。色々してたらすっかり夜になってたけど2人はまだ起きてたのね。アルバは吸血鬼、夜の方が活動時間だから起きててもおかしくはないけどリリィちゃんの方まで起きてたなんて。相当クロードのことが心配なのね。


「クロードのことはひとまず大丈夫よ。毒の進行は完全に止まったわ。これでもう死ぬことはないわ」

「よ、よかった…本当に、よかった…!」

「ワン!!」

「アルバ、後で手伝ってくれないかしら。貴方の力が必要なの」

「わ、分かりました」

「リリィちゃん。今日はもう遅いから寝なさい。ベットを貸すからゆっくり休んで」

「ありがとうございます。ローザさん達はまだ寝ないんですか?」

「私たちは夜の方が活動時間帯だから大丈夫よ。ありがとうね」

「そうなんですか」

「こっちよ。着いてこきて」


 近くにあったランプに火を灯して薄暗い廊下を進む。他の部屋から話し声が聞こえてくる。魔族は夜型の子が多いから夜の方が元気なのよね。特に私の部下だった子は夜型の子が多かったから昔はよくみんなで集まって酒盛りしてたわね。それで騒ぎすぎてクロードとかキリアによく怒られたっけ。懐かしい……。


「ローザさん、ここって他にも人がいるんですか?」

「あぁ言い忘れてわね。ここは傷ついたり居場所がない魔族を匿ってるの。だからリリィちゃんは1人で移動しない方がいいわよ。移動する時は私かアルバを呼んで」

「なんでですか?」

「ここにいる子は少なからず人間を恨んでる子もいるからね。貴方が1人で歩いてたら襲われちゃうかも」

「恨み……」

「私やアルバ、あと一応クロードの方が珍しいのよ。人間に友好的な魔族って。私は人間って好きよ。肌がスベスベで綺麗な身体つきしてるからね」

「??」

「ふふっこの姿は変身能力で変えてるだけなのよ。ほら」


 太腿の一部だけを変身を解いて鱗をだす。好きじゃないのよね、鱗って。だから人間の様なすべすべの鱗のない身体って好き。まぁ人間だけじゃなくて魔人やエルフもだけどね。でもか弱い身体で短い命で一生懸命頑張ってる姿は人間のいいところ。これを昔の仲間言ったらに変な目で見られたんだけどね。


「う、鱗!?え、え!?」

「ワフッ!!」

「あら?クロードから聞いてなかったのかしら。私はナーガ、簡単に言うと蛇の魔物なのよ。今は変身能力でこの姿なんだけど知らなかったかしら?」

「し、知りませんでした」

「まったく…クロードったら本当に自分のことを話さないんだから」

「それってローザさんにもなんですか?」

「そうよ。何かあったかは知らないけどクロードったら本当に自分のことを話さないの。まぁそれは私たちみんなそうなんだけど、その中でも群をぬいてクロードは話さないのよ。クロードのことを1番知ってるのは多分アイリス様よ。アイリス様が最初に仲間にしたのがクロードだからね」

「ローザさんはクロードさんと仲がいいんですか?」

「うーん…まぁそうかしら。友達って感じではないけど大事な仲間よ」


 長年一緒にいるけどあんまりクロードのことって知らないのよね。暗黙の了解みたいなもので私たちは出会う前のことは聞かない様にしてるのよね。それでもクロードのことは知らなすぎるけどね。

 

 でもそれ以上に知らないのはアイリス様なのよね。どこで生まれて、どこで生きて、なんでそんなに強いのか。私たちの誰も知らない。みんなが昔の話をしないのは多分アイリス様の影響もあるのよね。アイリス様、無意識だろうけど自分のことを話すのを嫌うのよね。だからその話題にならない様に私たちも昔の話をしない様になったのよね。まぁ気にならないって言ったら嘘になるけど。


「そうなんですか。ローザさんもクロードさんのことをあんまり知らないんですか」

「そうねぇ。でも、貴方ならクロードと仲良くできるかも知れないわよ」

「え?」

「だって、あのクロードが連れてきた人間なのよ。少なからず可能性はあると思うわよ」

「そうだといいですね…」


 ほんとあの人間嫌いなクロードが人間を連れてくるなんてね。昔よりもマシになったとはいえ、ね。まぁこの子のことが気になるのは私も同じだけど。


「それじゃあおやすみ。ゆっくり休みなさいね」

「はい、おやすみなさい」

「ワン!」


 リリィちゃんを空き部屋に案内して送り届けた。さて、私はクロードのところに戻らないと。今夜は徹夜になるわね。


「あ、ローザ様」

「あら貴方。どうしたの?部屋に戻らないと」


 廊下を歩いていると魔人の子が私に話かけてきた。まだ腕に包帯を巻いてるし安静にしてないと駄目じゃない。


「噂で聞いたんですけどクロード様がここに運ばれてきたって。それって本当なんですか?」

「もう噂になってたのね。そうよ、ここにクロードはいるわ」

「本当ですか!僕、クロード様の隊に所属していたんです。僕は下っ端の方だったのであまり関わりはありませんでしたが僕、クロード様のこと尊敬してたんです」

「尊敬?」

「はい。強くて、魔法も沢山扱えてそれでいてあのアイリス様親衛隊の四芒星なんて凄いじゃないですか」

「ふ〜ん。私も一応四芒星なんだけどね」

「い、いえ!!勿論ローザ様のことも尊敬していますよ!弱っていた僕たちを助けてもらったんですから。でも、それ以上にクロード様のことを尊敬しているんです」


 あの、クロードが尊敬ねぇ。確かに私たち四芒星の中で1番強かったのはクロードだったけど、ちょっとだけ人に対して無関心みたいなところがあったりするしここまで信頼されているとはクロードもいい部下をもったわね。


「それで、クロード様に会うことはできますか?」

「そうね……。今は少し厳しいかしら。クロードは今、少し大変でね。会えるようになったら教えるわ」

「そうですか…。でもローザ様がいるんですからきっと大丈夫ですよね」

「えぇ。この私がいるんだから大丈夫よ。だからもう少しだけ待っててね」

「はい。クロード様をお願いします」


 失礼しました。と言って部屋に戻っていった。リリィちゃん以外にもクロードのことを心配してくれてる人もいるんだし私が頑張らないとね。




 ****




「アルバ、お待たせ。待たせちゃったわね」

「い、いえ全然待ってないです。え、えっとクロード様のことですよね。また分離処置を、するんですか?」

「そうね。さて早速始めましょう。あと、今から見る光景はあまり驚かないでね」

「?は、はい」


 クロードが寝てる部屋に入る。クロードは呼吸も安定していて今はゆっくり寝てる。ひとまずはよかったわ。


「ロ、ローザ様…こ、これって」

「やっぱりそういう反応になるわよね。詳しくは処置をしながら話しましょうか。アルバお願いね」

「わ、分かりました」


 輸血する為のチューブとパックを用意する。その間アルバはクロードの様子を見てる。まぁ仕方ないわよね。


「アルバ用意できたわよ」

「は、はい。始めます、ね」


 クロードの腕にメスをはしらせる。その傷口から血液が漏れ出し血液をアルバが操り空中で留める。血液中に含まれてる毒を血液と分離させる。アルバは吸血鬼。吸血鬼は自身の血液と相手の血液を操る。相手の血液を操るのは血液を視認しなきゃいけないらしいけど、こうして医療の役にも立てるからありがたいわ。


「ロ、ローザ様。クロード様の角、どうしたんですか?」

「切断したわ」

「ど、どうして…」

「この毒は魔力を元にして増殖、毒性を強くするの。だから魔力を作る器官である角を切断した。本人には了承済みよ」

「そ、それじゃあクロード様は………」

「そうね…。もう、戦えない」

「………よかったんですかね」

「死ぬよりはマシよ。生きていればきっと……」

「………………」


 着々と毒を分離していってる。毒と分離した血液をパックに入れて輸血する。毒の進行を止めたからこそできる手段。クロードを運び出した時に同じ分解処置をしたけどあの時は毒がまだ進行していたから分離処置をしても進行を遅らせることしかできなかったけど、進行を完全に止めた今なら完全に分離処置ができる。


「ぁ……」

「クロード、起こしちゃったかしら」

「生きてる、のか…」

「そうよ。私の考察はあってた。貴方の体内にある毒は完全に機能を停止したわ。今はアルバに頼んで体内中の毒を完全に分離してるの。調子はどう?」

「あぁ…良くなってる気がする」

「良かったわ」

「アルバ、すまないな…」

「い、いえ。でも、ク、クロード様が無事で、良かったです」

「ローザ、あいつ、は」

「リリィちゃんのこと?ちゃんと保護したわよ。貴方が人間を連れてるなんて珍しいと思ってね。ちょっと興味があったの」

「そうか…」


 隠してる様だけど安心した顔をしている。随分と入れ込んでいるみたいね。あのクロードが。


「もうひとつの方は、どうだ…?」

「そっちはまだよ。貴方の方で今は忙しいの」

「後ででもいいんだ。必ず、頼む」

「分かってるわよ。それとアイリス様は無事よ。私がちゃんと保護してるわ」

「良かった……。お前に任せて、正解だった」

「あの状況で私以外に預かれたと思った?」

「ふっ…それも、そうだな」

「ロ、ローザ様…分解処置おおかた終わりました。もう少しで完全に処置が完了します」


 私たちが喋っている間にもアルバは血液から毒を分解する作業をしてくれてる。血液操作ができる吸血鬼にとっても血液の成分を分解するのは難しい筈なのに良くやってくれてるわ。


「そう、クロード身体に違和感は?指先や身体の感覚に違和感はないかしら」

「正直、喋るのも、キツイ…。口がうまく動かないんだ……」

「他には?」

「手足の感覚もあまり、ない……目も少し、掠れてる…」

「毒の後遺症ね…」

「治せるか……?」

「正直に言うと不可能ね。詳しく言うと完全には無理ね。リハビリをすれば多少は良くなるかもしれないけれどあまり期待はできないわね」

「そう、か…」

「か、完全に分離処置、完了しました」

「ありがとう。アルバは先に戻ってていいわよ。遅くまでありがとうね」

「い、いえ…。そ、それじゃあ失礼します。クロード様お大事に…」


 アルバは一礼して部屋から出ていった。身長がある割に本当に昔から臆病というか、なんというか。あぁ…でもあの時よりはだいぶマシね。そう考えると今のアルバの方がいいわね。


「アイツは、昔と変わらないな…」

「案外みんな変わってないわよ。10年て言っても私たち魔族にとっては一瞬。でも貴方は変わったわね。昔は髪はちゃんとセットしてたし、隈もそんなに酷くなかったわ。今は髪も無造作に伸びちゃって。せっかくのイケメンが台無しよ」

「そうか……俺は疲れた。もう寝る……」

「そう。おやすみなさい」


 目を閉じてすぐに寝息を立て始めた。あんなに寝てたのにまだ眠いのね。これも毒の後遺症かしら。さて、私はもう少し働かないと。クロードから頼まれたことはちゃんとすませとかないと。




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