76話 2つの化身
「どうした!怖気付いたか!!」
「そんなわけないだろ」
アイツの魔法は強大だ。並大抵の魔法じゃ炎の化身に燃やされる。なら俺も最上級魔法で対抗するしかない。だが俺は昔に比べて魔力が大幅に減った。今の俺に最上級魔法が扱えるか分からない。だがやるしかない、やらくちゃいけない!!
「………雷よ。我に抗うものに天罰を。咎人よ雷を受け己の罪を悔い改めよ!雷の第十呪文:クライム・ジャッチメント!!!」
「ははっ!!お前も使えるのか!そうだよな!それくらいしてくれないと張り合いがない!!」
「はぁ…はぁ……はぁ…」
俺の背後に髭を貯え槍を持った雷の化身が現れた。よかった上手くいったみたいだ。だが俺の今持ってる魔力を殆どこの魔法に注ぎ込んだ。もしこの魔法が防がれたらきっと俺に勝ち目がない。ここで確実に決着をつける!
「炎の化身イフリート!燃やし尽くせ!」
「撃ち落とせジャッチメント!!」
グオアアアアァァアアア!!!!
オオオァアアアアアア!!!!!
2つの化身が衝突する。衝撃がこっちまで伝わってくる。だが俺の魔力が尽きる前に決着をつける。あっちの魔力が尽きるのは期待できない。なら俺が決着をつけるのみ!
「ジャッチメント落とせ!!」
「オォォォオオオ……!!!」
ドガアアァァアアン!!!!!
「はぁ……はぁ………どう、だ?」
「その程度じゃイフリートはびくともしない」
「グオオァアアア!!」
「くそっ…」
びくともしてない…。強力な雷を落としたんだぞ。やはり昔よりも魔力が衰えて魔法の威力も落ちたか。一発でダメなら何度でも打ち込むだけだ。
「イフリート!!」
「グオオァアア」
「くっ…!炎が…ジャッチメント!」
イフリートが業火を繰り出しジャッチメントがモロにくらってしまう。なんとか耐えられたが次は耐えられるか分からない。
「ジャッチメント突き刺せ!」
「イフリート燃やせ!」
ジャッチメントが雄叫びをあげながら槍をイフリートへ向け突き刺す。しかし、イフリートが突き刺さった槍を鷲掴みし槍を炎で燃やしジャッチメントの方へ炎が迫ってくる。
「離れろ!」
「逃すなイフリート」
グアアアアァァアア!!!!
オオオォォォオオオオ!!!!
イフリートとジャッチメントがさめぎ合っている。このままだとジャッチメントに炎で燃える。仕方ない…。
「槍をはなせ!」
ジャッチメントに槍をはなさせ炎の侵攻を打ち切る。これで燃える心配はなくなるが残りの魔力で新たな槍を作り出すことは出来ないが仕方ない。
「逃げたか…まぁいい。アイツの魔力も残り少ない」
「そうだな…。そろそろ決着をつけるか」
「イフリート全力だ!アイツを灰にしろ!!!」
「ジャッチメント!!空を切り裂け!!!」
グアアアアァァアアアアア!!!!!!
オオオォォォオオオオオオ!!!!!!
2つの大きな魔力が衝突し空気がビリビリと衝撃がはしる。イフリートの猛火にジャッチメントの雷が拮抗している。だが若干ジャッチメントが押されている…。まだだ!俺の残っている魔力をこの攻撃に注ぎ込め!!!
「ああぁぁあああ!!!!!!!!」
「いいぞもっとだ!!イフリート!!もっとだ!!」
あっちも更に火力を上げてきた。俺ももっとだ!もっ、と……
「あ、なん、だ……?急に、からだ、が……」
「??どうしたんだアイツ…」
「ガハッ…!?」
口から血が湧き上がって吐き出す。身体に力が入らなくなって膝をつく。なん、だ。なんなんだ…?
「はぁ…ゲホッ…なん、だ?小人…?」
俺の足元に白黒小人らしき生き物が注射器のような物を持って立っている。白黒…まさか……!
「だんちょ、大丈夫っすか?」
「アシュレイ!お前!!」
「ははっ…!咄嗟に魔力で防御したからギリギリ意識保てましたよ」
油断、したな……。なんだ、この感じ…。 毒、か…?魔力が保てなくてジャッチメントが消えていく…。
「あんたに打ち込んだのは騎士団が開発した新種の毒。解毒方法はいまだに解明されていない劇物だ」
「お前なんてもんを!」
「いいんすよ別に。このままじゃ団長もたたじゃすまなかった。これでよかったんですよ」
「はぁ……ゴホッ!ゲホッ……!」
まずい…目の前が掠れて見える…。毒が回ってきたか…?
「どうします団長。トドメ差しますか?」
「いや、いい。どうせ死ぬんだろ…。お前は先に戻ってろ。怪我人がいないか確認しといてくれ」
「了解。瀕死とはいえ気をつけてくださいね」
副団長の男が魔法で姿を消した。はぁ…はぁ……クソッ…本格的にマズイ…。もう力が…。
「お前このままだと本当に死ぬぞ」
「ゲホッ…ゴホッ!!」
「解毒薬がない今お前は本当に死ぬ。ここで俺がお前にトドメをさせば確実に死ぬ」
「ガハッ…!」
「だが俺はお前にトドメは刺さない。お前の目は俺の知り合いに似ててな。それに俺はお前に感謝してるんだ。俺もあのオークションは嫌いだったんだ。お前がぶち壊してくれて感謝してる。俺にも立場ってものがあるからな」
なに、か言ってる…。毒の影響でよく聞こえない…。
「雨でサングラスが濡れてよく見えないな…。それじゃ俺はもう行く。せいぜい長生きしろよ」
「ま、て…ゲホッ…!!」
あぁ駄目だ意識を保つのもキツくなってきた。もう全身に力もはいらない。さっきまで煩わしく思っていた雨音さえも聞こえなくなってきた。俺、ここで死ぬのか?
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「クロードさん大丈夫かな…」
会場にいた人たちを全員逃がしてヴァイスに合図してもらったけどクロードさんの方は大丈夫かな。クロードさんが1人で時間稼ぎをしてくれたけどヒスイ街のこともあるから心配だ。それに雨も降り始めた。なんだか嫌な予感がする…。
「クゥン…」
「大丈夫だよヴァイス。すぐに来るよ」
「!ガァウ!!ガァウガァウ!!」
「なにあれ!?」
空に急に現れた二つの謎の生き物。まるで物語にでてくる化身の様ななにか。あの化身凄い魔力だ。ここからでも分かる程の強大な魔力。
「あの方向…オークション会場の方だ。クロードさん!」
「ワン!ワンワン!」
「ヴァイスお願い!クロードさんのところへ行かせて!!」
私がクロードさんのところへ行こうとするとヴァイスが服の裾を引っ張って止めようとする。ヴァイスが私のこと行かせたくたくないのは分かる。だけど今行かないと後悔する気がする。
「お願い…クロードさんが心配なの」
「キューン…」
「ヴァイスが行かせたくないのは分かるよ。私は弱くって何にも出来ないかもしれないけど…。それでもクロードさんを助けたいの!」
「キュー…ワフッ!!」
「ヴァイス!ありがとう!」
ヴァイスが服を放してくれた。それに私と一緒に着いてきてくれるみたい。ヴァイスがいるなら心強い。
「行くよ!ヴァイス!!」
「ワン!!」




