74話 第二団長オリオン
沢山の人間。そしてステージ上には鎖をつけられた女。忌々しいな。何百年経っても人間は結局変わらない。
「お前、何者だ!!」
「魔王アイリス親衛隊四芒星の一人クロード・モンステラ。この忌々しいオークション会場を破壊しに来た」
「混沌のクロード!?何故こんなところに!」
これでここにいる奴らの注目を引けた。後はあいつ次第だ。頼んだぞ。
***
「おい、会場の方で騒ぎだ。行くぞ!」
「了解!」
裏口の見張りの2人が会場の方へ向かったみたい。これで裏口から入れそう。
「行こうヴァイス」
「ワン!」
ヴァイスと一緒に裏口から会場へ侵入する。ヴァイスも元の大きさに戻って着いてきてくれる。いざとなったらヴァイスに戦いを任せるかもしれない。
「ノアさんどこにいるんだろう。何処かには必ずいるはずなんだけど」
「ワフン…」
「そうだ!ここは会場。ここなら魔法に遮られてないからノアさんの匂いも残ってるかも。ヴァイス匂いを辿れる?」
「ワン!」
ヴァイスが匂いを嗅ぎ始めた。上手くいけばいいけど…。
「…!ワフン!!」
「分かった?」
「ワン!」
ヴァイスが走り出して私もその後を着いていく。中に入っても警備員は全員会場の方へ向かったみたいで裏の方には誰もいない。クロードさんが注意を引いてくれたんだ。少しでも早くノアさんたちを助けないと。
「ワン!」
「ここの部屋?」
ヴァイスに着いて行くと扉の前に辿り着いた。ここにノアさんがいるのかな。えっと鍵、かかってる。
「ヴァイス、この扉燃やせる?」
「ワン!…グルルル……ヴァアアア!!!」
ヴァイスの青い炎で扉を燃やしてもらった。これで中に入れる!
「ありがとうヴァイス!」
「ワン!」
「ノアさん!いますか!!」
「……この声…リリィさん!?なんでこんなところに!」
「ノアさんを助けにきました!今その檻を開けますね」
部屋の中には檻に入ったノアさんがいた。ヴァイスの鼻はやっぱり正確だったんだ。この檻はヴァイスの炎じゃどうにも出来なさそうだから鍵を探さなきゃ。
「えっと鍵、鍵……」
「リリィさんまさかクロードさんもここへ?」
「そうです。クロードさんは今会場の方で時間を稼いでもらってます。早くここを脱出しましょう」
「そんな!!竜の騎士団は僕を囮にクロードさんをここへ誘き出したんですよ!」
「そんな!?それは本当なんですか!!」
「それ以外に僕をここに置いとく理由なんてないですよ!」
それは…まずいかも。早くここにいる人たちを逃さないと。
「ハフッ」
「ヴァイス鍵見つけてくれたんだ!ありがとう。ノアさん開けますね」
ヴァイスから鍵を受け取って檻を開ける。この鍵、束になってて他にも鍵がついてる。もしかしたらこれで他の人たちの鍵も開けられるかも。
「ノアさんは裏口から出てトレイダ街の方まで逃げてください。私たちは他の人たちを助けてからここを脱出します」
「リリィさん…本当に大丈夫なんですか?」
「私にはヴァイスがいるので大丈夫です。それにノアさんは早く帰ってレナさんを安心させてください」
「……クロードさんは本当に、魔族なんですね」
「そう、ですね」
「でも僕、分かりました。クロードさんはいい人なんだって。そうじゃなかったら僕の為にここまで来てくれません」
「…!そう、そうですよね!」
「あ、そうだ。これ、渡しておきますね。ヒスイ街で渡しそびれちゃったので」
「これ、クロードさんの魔石」
「完璧に修復しておきました。リリィさんの分は僕の工房で完璧に仕上げてみせます。仕上げたらすぐにリリィさんへ送ります」
「ありがとうございますノアさん」
「それと僕以外の人たちはここを右に行った方に集められてるみたいです。ここにいる間話し声があっちの方で聞こえてきたので」
「分かりました。ノアさんどうか気をつけてください」
「せっかく助けてもらったんです。ここでヘマはしませんよ。それでは失礼します。リリィさんたち本当に気をつけてくださいね」
「はい。ありがとうございます」
ノアさんは裏口の方へ向かって行った。これで1番の目標は達成できた。後はここにいる他の人たちを解放しないと。
「ヴァイス。行くよ」
「ワン!!」
***
「はぁはぁ……結構人数がいたな」
「う、うぅ……」
これで殆どの警備員は倒せた。思ったより人数がいたみたいで結構体力を消耗してしまった。会場にいた客は全員逃げたか…。まぁいい。今回は時間稼ぎが目的だからな。
「おーおー随分な暴れっぷりだな」
「なんだ、お前」
「俺か?別に名乗るもんじゃないぞ」
「巫山戯るな」
「ふっ…冗談も通じないか。ふー……俺は竜の騎士団第二団長オリオン。まぁお前を一応捕縛しに来た」
「団長…!」
まさかこんなところに団長が来るとは。まさかここの管轄だったのか…?ならここの会場はサナティクト王国が運営しているのか。国自体がこんなことをしているとは…!
「混沌のクロード…。四芒星の中でも1番の実力者。団長気をつけてくださいよ」
「分かってる。油断はしない」
「今回は副団長も一緒か。面倒だな」
左頬に大きな火傷のある団長。そして服に黒いシミがある副団長。特に団長の方。今の俺よりも魔力がある。これは少し部が悪い。どうするか…。
「さて、大人しくしてもらうってのは無理だな。全力で行くぞアシュレイ」
「了解です」
2人のギフトが分からない以上こっちから迂闊には攻められない。少し様子をみよう。
「ブラスト4連撃!」
「マリンブークリエ!!」
「炎の第七呪文:ボルケーノ」
「くっ…!」
呪文の詠唱が早い!初手の爆撃を防いだと思ったらその次には足元から炎が舞い上がってくる。このままだとまずい。それに脚のこともある。なんとかしなければ。
「グラフティ・ナイト!行け!騎士たちよ!!」
「こっちはギフトか!水の第二呪文:ウォーターカッター!!」
「そんな攻撃じゃ俺の騎士は歩みを止めないぞ」
「なっ!!」
副団長が祝福で生み出したであろう白黒の騎士3人をを魔法で2つに切り裂いた。切り裂いたはずだが何故か動きが止まらない。何か仕掛けが…?
「ほらこっちもかまえよ。エアーバレット!」
「しつこいな!」
飛んできた弾丸を同じ魔法で相殺する。騎士の方に集中してたら団長の方が攻撃してくる。かといって団長の方に集中してたら騎士の攻撃を防げない。2対1は流石にキツいな。
「お前、2対1とでも思ったか?正確には多対1だ!」
「くっ…!お前もくるのか!」
「魔法だけに頼ってる訳ないだろう!」
「厄介だな。お前も、そのギフトも」
まずは副団長の祝福をなんとかしないといけない。斬撃は効かない。なら打撃は?他の属性魔法は?
ブォン!
「…っぶない!はぁ…はぁ…」
騎士の剣が少し掠った。頬から少し血が流れる。…まずい騎士たちに囲まれた。騎士たちが俺に剣先を向ける。絶対絶命か…。
「一か八か、炎の第七呪文:ボルケーノ!」
「…やべっ!」
「燃え、た…。コイツら炎が弱点なのか」
「バレたか……案外早かったなぁ」
「アシュレイ、お前は下がってろ。おい、クロード、アシュレイには指一本触れられると思うなよ」
「なら、先にお前を片付けるだけだな。地の第三呪文:ロックブラスト!」
「ブラスト!」
バゴォン!!!
「ふー………クロードってこんなもんなのか?聞いてたら話とは違うな」
「クソ……やはり魔力差がデカい」
「グラフティ・レオン!」
「ライオン!?」
横から急に飛び出してきたライオンを跳んで避ける。怪我をしている左脚で踏み切ったせいで傷が少し開いた。包帯越しに血が滲むのを感じる。
「ぐ、ぁ…はぁ…はぁ……」
デカい魔法を使いたいが、ここが崩れるかもしれない。もしここが崩れたらアイツも一緒に下敷きになる。ならこの会場の外に出ないといけない。なんとかしてここを出なければ。
「氷の第四呪文:ホワイトアウト…!」
「目眩し…!探せ!騎士たち!!」
「一体何をする気だ」
ホワイトアウトで視界を遮りなんとかして会場の外に出たい。だがあの副団長で祝福で作られた騎士とライオンが厄介だ。炎が弱点だと分かったが燃やしてもきっとまた新しく作られる。できるだけ魔力を抑え会場の椅子の陰に隠れながら出口へ近づく。
「アシュレイ防御魔法」
「了解!」
「風の第九呪文:ドラゴンストーム!!」
「霧が…!」
竜巻であたりの霧が全て吹き飛んだ。風はなんとか椅子の後ろでやり過ごせたのは運が良かった。それにもう出口は近い。強引にでも外に出る!
「魔力強化…脚力!」
「団長クロードが会場の外へ!」
「分かってる。こっちとしても外の方がやりやすい」
「はぁ…はぁ……お前らは強いな。前に戦った団長よりも厄介だ」
「へぇ…お前他の団長とも戦ってたのか。お前が今ここにいるってことはその団長は負けたのか。やっぱり油断はできないな」
「団長、まさかその人って…」
「多分セリオスだろうな。ルイが俺たちにあの男を送りつけてきたってことはセリオスがなんらかの形で動けないってことだろ。あのルイが進んで仕事をするとは思えない」
なんとか外に出られた。これで魔法を気にせず使える。だがそれでも厳しい戦いだ。なにせあの副団長が戦力を作り、その隙を団長の男がカバーしている。それにしてもあの団長。俺と戦いながらタバコを吸っている。そこまで舐められているのか。だがあの団長さっきから魔力が衰える気配がない。さっき第九呪文を使った割に魔力が一切減っていない。
「さあ行けお前たち!クロードを追い詰めろ!」
「一回コイツらには消えてもらうしかないか」
「炎の第五呪文:ファイアフライ!」
「またか!」
火花が騎士やライオンの元へ飛び交い炎を纏わせる。アイツはすぐには新しい騎士たちを出せない。新しく出される前に本体を叩く!
「雷の第七呪文:ダイナモチャージ…はぁ!!」
「グアッ…!!」
「アシュレイ!!」
「少し眠ってろ。スパーク!」
バチバチッ!!
「ぐ、あ…ぁ」
身体能力を向上させた後に腹へ一発入れ警備員たちと同じように感電させる。これで少しの間だが動けないはずだ。
「テメェよくもアシュレイを…!」
「団長の割に口が悪いんだな。前の奴とは正反対だ」
「あいにく俺は貴族生まれのセリオスと違って裏路地育ちの孤児だったもんでな。礼節は教えられてねぇ」
「そうか。同情はできないがお前も苦労してるんだな」
「同情してもらわなくて結構。さてここからは全力でいくぞ…!」
魔力が増えた…!?なんだ、どういう仕組みだ……まさかコイツの魔力量の異次元さアイリスの力なのか!?だとしたらどこの身体だ。それさえ分かればその部分を対処したらこっちが有利になる。




