73話 突撃オークション
〜数日前〜
「で、団長どうしますか。この人」
「ルイから渡されてきたんだ。仕方ないが仕事するか」
「全くこっちは忙しい時期だってのに迷惑な野郎だな!」
僕の店でルイ副団長に誘拐されてから数日。馬車に乗らされてどこかに連れてこられた。僕は今椅子に縛られて2人の男の人に睨まれてます。
「ふー……ったく面倒持ち込みやがって」
1人はサングラスにタバコを吸ってていかにも輩って感じの人。それに左頬に大きな火傷がある。白くて長いジャケットを肩に羽織ってるし団長って呼ばれてるから多分団長の人なんだと思う。僕、セリオス団長以外の団長の顔知らないからどこの団の人なのか分からないな。
「全くだ!今度会ったら文句言ってやる」
この人は多分副団長の人だ。副団長の腕章をしてるし多分そうだと思う。この人もこの人で白い服の至る所に黒いシミがある。あれなんのシミ?まさか黒くなった血じゃないですよね…。
「んじゃ、早速やるか」
そう言うと団長の男の人がサングラスを外して僕の目をじっと見始めた。
「正直に答えろよ。お前がクロードについて知ってることを全部話せ」
「…クロードさんは僕の村の恩人なんです。村を襲ってたゴブリンを倒してくれました。クロードさんが魔族なのは知りませんでした」
「成る程…。ふー……コイツは黒よりの白だな。取り敢えずこいつの村の奴らは結構怪しい。アシュレイ、報告書に纏めて上層部とセリオスに送っといてくれ。あの辺りの管轄はセリオスだからな」
「分かった。あと、ルイからの伝言がもう一つ」
「なんだ?」
「その人尋問が終わったらオークションの方に送って欲しいらしいんだけど…どうする?」
「はぁ?……まぁアイツは頭はきれるしな。一応オークションの方に回しといてくれ」
「分かった。それじゃあそうするように手配しとく」
「頼む」
あれ…?僕一体何を喋ってたんだろう……。記憶が少し飛んでる様な気がする…。
「よし、それじゃあ行くぞ。俺たちは忙しいからきびきび動けよ」
「あ、せめて縄を……」
縛られてる椅子ごと引き摺られて副団長の人に部屋の奥へ連れて行かれる。縄さえ解いてくれれば自分で動くのに…。
「ふー……クロード、ね。会えるもんなら会ってみたいな」
***
「おい、起きろ」
「んぁ…もう朝ですか…」
クロードさんに起こされて眠い目を擦る。昨日はそのまま裏路地で寝て、今日に備えてたんだった。今日はオークション当日。ルイさんに連れて行かれたノアさんが売られてしまう前になんとしてでも救出しなきゃいけない。昨日のうちにオークションの場所は調べたから準備はいつでも会場には行ける。
「天気、悪いですね」
空はどんよりとしたおもい雲が浮かんでて朝なのに薄暗い。今にも雨が降りそう。
「曇りの方が暗くて目立ちにくいから有難いな」
「確かにそうかもですね」
「それじゃあ行くぞ。準備はできてるか」
「はい!」
「キャン!」
鞄の中から取り出しておいたナイフを懐にしまっていざって時にすぐに使えるようにしておく。これで少しは安心かな。
「それじゃあこっちです。ついて来てください」
クロードさんと一緒に昨日の場所へ向かう。少し遠いけど朝の街を歩いて行く。朝だけど歩いてる人が結構いる。歩いてる人の中にはドレスやスーツとかの高そうな服を着てる人もいる。もしかしてあの人もオークションに行く人なのかな…。あ、だとしたら私たちが行く場所と被るかも…。
「あ、違うとこに」
「どうしたんだ」
「あ、いやドレスを着た人がいて、あの人もオークションに行くのかなと思ったんですけど私たちとは違うところに行って」
「もしかしたら入り口は複数あるのかもな。俺たちが今行くところはその1つに過ぎないのかもしれない」
「成る程……あ、ここですクロードさん」
「確かに少しだけ魔力を感じるな。意識しなければ分からないほど微弱だがな」
昨日の裏路地に着いた。やっぱり一見ただの裏路地だよね。クロードさんは何か感じ取ってるみたいだけど。
「こっちです。ここの行き止まりの先に会場があるはずです」
行き止まりの壁にそっと手を当てると飲み込まれるようにズブズブと吸い込まれていく。昨日見たあの2人みたいにやっぱりこの壁が入り口だったんだ。
「クロードさん行けますよ!」
「惑わしの魔法、昔からよく使われる魔法だな。さて、行くか」
「はい!」
「キャン!」
クロードさんたちと一緒に壁の中に吸い込まれて行く。すると一瞬でさっきまでとは違う光景が目の前に広がった。さっきまではカモメが沢山飛んでて白い建物が綺麗な街並みだったけど、ここはさっきとは違って沢山の電飾が眩しくて豪華な建物が並んでいる。歩いてる人もドレスとかの高そうな服を着てる人にそれを警護している人でさっきまでのトレイダ街とは大違い。まるで裏の世界だ。
「2番…見た感じ全部で5番まであるな。入り口は全部で5個あったのか」
上の方を見ると吊り下がってる旗に2番って書いてある。他のところにも1〜5番までの旗が下がってる。クロードさんの言う通り入り口は私たちが通ったところ以外にもあったんだ。
「離れるなよ。逸れたら面倒だからな」
「は、はい!ヴァイスは鞄の中にいて。ここに子犬がいると目立っちゃう」
「キャン」
ヴァイスを私の鞄に入れて背中に背負い直して人の流れにのって歩いて行く。みんな行く場所は同じみたいだから多分オークション会場なんだと思う。遠目から見るとテントみたいな大きな建物にみんな集まってる。あそこが会場なんだ。
「ここで一旦オークションが始まるまで待ってよう」
「それじゃあオークションが始まったら作戦を始めるんですか?」
「あぁ。その前に確認しよう」
会場近くの人が少ないところで腰を落とす。鞄も下ろしてヴァイスも顔を出す。
「まず俺がオークションが始まったら俺が騒ぎを起こす」
「その隙に私たちが潜り込んでノアさんたち捕まってる人たちを解放する」
「その間俺が連れ出すまでの時間稼ぎをする。しっかり頭にいれたか?」
「はい。あ、私がノアさんたちを連れ出した後の合図はどうしましょうか」
「お前はヴァイスと一緒に行動するだろう。ならヴァイスの炎で合図をしよう。ヴァイスの炎は蒼炎だから分かりやすい」
「了解です」
「会場にお集まりの皆様!もう間もなくオークションが開始致します!会場に入場されていないお客様はお早めに入場なさってください!開始後は入場はできかねますのでご了承ください!!」
会場の前で黒いスーツと仮面をつけた男の人がオークションがもうすぐ始まるって言ってる。それじゃあもうすぐで作戦を始めるんだ。
「それじゃあ私は裏口かなにか潜り込めそうな場所を探してきます」
「あぁ、またあの裏路地で落ち合おう。気をつけろよ」
「クロードさんも気をつけてくださいね」
「キャァン!」
クロードさんに別れを言ってヴァイスにまた鞄の中に入ってもらって会場の裏の方へ向かう。会場裏なら裏口かなにかあるはず。
「やっぱり裏口あった。けど、こっちにも人はいるか…。取り敢えずクロードさんが騒ぎを起こすまでここで隠れてよう」
***
「さて、やるか」
脚の調子はいいとは言えないが多少は動ける。1時間でも時間を稼げればいいだろう。それぐらいならなんとかなる筈だ。
「オークションを開始いたします!こちらの入り口は終了まで締め切らせてもらいます!」
黒スーツの男が会場の扉を閉め切った。オークションが本格的に始まるまでまだ少し時間があるだろう。扉の前には2人の警備員、見た感じ強くはなさそうだな。あれくらいなら簡単にどうにでもできる。まず、あの2人の警備員を倒してから会場に入る。その後は適当に暴れればいいだろう。あれくらいの人間が大勢いるぐらいなら今の俺でも楽に倒せる。問題はアイツがどれくらいで捕まってる奴らを逃がせるかだ。長時間となれば俺もキツい。
「そろそろ行くか。魔力は十分。存分に暴れようか」
入り口の方へ堂々と歩いて行く。2人ぐらいなら簡単だ。
「申し訳ありません。オークション開始後はご入場できません」
「いいさ。無理やりにでも入るからな」
「は?一体何を…」
「少しの間眠ててもらおうか。スパーク」
「あ、がががが…!」
「ぐががが……」
警備員の2人の肩に手を当てて電気を流す。威力を少し調節して気絶する程度にしたが俺も少し痺れるな。手のひらがピリピリする。やっぱり第一呪文で感電させようとするとあんまり上手くいかないな。
「鍵をかけてるか。まぁこれくらいならどうにでもできる」
腕に魔力を纏わせて扉を思い切り殴る。破壊音が響きわたり木製の扉が崩れていく。
「な、なんだ!!?」
「侵入者か!警備員はどうしたんだ!!」
会場の中に入ると中の人間たちが一斉に俺を見て騒ぎ始めた。全員高そうな服を着てるな。ここにいるのはほとんどが貴族か。私服を肥やして更に奴隷まで買おうとは愚かなものだな。
「思う存分暴れるとするか」




