72話 海の街
〜4日後〜
「着きましたね。トレイダ街…」
「そうだな。予定通りだ」
四日間歩き続けて私たちはなんとかトレイダ街に到着することができた。ヒスイ街に行く途中の魔獣の寝床程ではなかったけど魔獣や魔物が時々襲ってきたりしたけどその度にクロードさんとヴァイスがやっつけていった。そのせいでクロードさんの脚は少ししか回復しなかった。夜な夜な魔法で治していたみたいだけどなかなかよくならなかったみたい。クロードさんは大丈夫って言ってったけど本当の大丈夫かな…。
「まずはオークション会場がどこか見つけなければ…」
「うーん…地図にはのってないですね」
「オークション会場は秘匿されてるみたいだな。金持ちが多いから襲撃されないように場所を隠してるんだろう」
「どうやって探しましょうか…。そうだ!ヴァイス、ノアさんの匂いで分かったりしない?」
「やってみる価値はあるかもな」
「お願いヴァイス」
「キャン!」
目立たないように小さくなったヴァイスが匂いを辿っていく。けど……
「キューン……」
「ダメ、か」
「匂いまで断つほどの強力な結界なのか、それとも時間が経って匂いが薄れたのかのどっちかだな。どっちにしてもヴァイスの鼻で探すのは無理そうだな」
「どうしましょうか…」
「手がかり、目印になりそうなもの、か」
手がかり、か…。うーん何かあったかな?なんかありそうな気がするけど……。
「あ!そうだ!!」
「なんだ、いきなり大声出して」
「ノアさん攫われる時と一緒にクロードさんの魔石もいっしょに持ってたんです。もしかしたらそれで場所が分かるかもしれません!」
「なるほど、引き寄せの魔法か。既に修理が終わっているはずだからうまくいくはずだな」
「クロードさん早速やってみましょう!」
「そうだな」
クロードさんが片耳のピアスを外して手のひらにのせる。するといきなりピアスの石が光り始めた。
「クロードさんこれって…」
「魔術が上手く発動している。これなら探せるな」
「やりましたね!」
「この光り方からして結構遠いな」
「光り方で分かるんですか?」
「2つの魔石が近くなればなるほど光り方が強くなる。まだ光り方が弱いから遠くにいるな」
「なるほど…」
「とりあえずオークション会場を探す前に作戦を立てよう。無闇に突撃する訳にはいかないからな」
「そうですね」
「キャン!」
取り敢えず身を隠せそうな裏路地に行って作戦を立てることになった。クロードさんが空間から紙とペンを出してくれて早速作戦を立てる。
「取り敢えず目的は魔石工房の店主の奪還だ」
「そうですね…。なんとしてでもノアさんを助けないと」
「次にオークション会場に囚われてる他の人間も解放する」
「え!?」
「ついでだ。せっかくだし嫌がらせしてやろう」
「そうですね!」
「キャアン!」
「その後は無事にこの街を脱出する。これが一番難しいだろうな。騒ぎを起こせば必ず竜の騎士団の奴らが出てくるはずだ」
「クロードさんはその脚ですからね…。なんとかして戦わずに脱出しないと」
一番の目的はノアさんの救出。そのためにここまで来たんだ。ノアさんを助けられなかったらレナさんに顔向けできない。私たちをあそこまでよくしてくれたんだ。恩をちゃんとかえさないと。
「まずはオークション会場にどうやって潜りこむかだ」
「普通にじゃダメなんですか?」
「きっとオークションは会員制かなんかだろう。俺たちみたいな格好のやつはきっと中にも入れない」
「そう、ですか…。じゃあどうしますか?」
「強行突破だ」
「強行突破、と言いますと……」
「俺がオークション会場を破壊する。その隙にお前は人間たちを救出しろ」
「そんなの危険すぎますよ!」
「キャンキャン!!」
ヴァイスもそうだと言うように鳴いている。クロードさんまた無茶しようとしてる。それに今は怪我をしてるんだから前よりも断然危険すぎる!
「大丈夫だ。お前が人間を連れ出す間の時間稼ぎをするだけだ。目的を達成すれば俺もすぐに撤退する」
「それならいいんですけど……本当に今回は無茶しないでくださいね」
「あぁ。それに今回の作戦はお前にかかってるからな。お前が早く人間を救出しなきゃ俺がずっと戦うことになる」
「う……確かにそうですね………頑張ります…。でもヴァイスも一緒なのでなんとかなりますよきっと!」
「そうだな。頼むぞヴァイス」
「キャン!!」
今の作戦の内容を紙に纏めていく。
1.クロードさんがオークション会場を襲撃して騒ぎを起こす
2.その隙に私とヴァイスがノアさんや捕まってる人たちを救出する
3.ノアさんたちを街の外へ逃して私たちもトレイダ街を脱出する
文字に起こすと簡単そうに見えるけどきっと簡単には上手くいかないはず。怪我をしてるクロードさんに無茶をさせない為に私が頑張らないと。
「よし、作戦はこれでいくぞ」
「はい」
「さて、本題のオークション会場を探さないとな。あと、出来るだけ顔を隠しておけ」
「?なんでですか??」
「あの副団長が俺たちのことを上に報告していないとも限らないだろ」
「確かにそうですね…。帽子、いつもより深く被っとこ」
「後、お前だけでオークション会場を探しに行ってくれないか?」
「別にいいですよ。あ、やっぱり脚の調子が…」
「まぁ、本番までできるだけ回復させときたい。それと俺の方が目立つ。こんな格好だしな」
「あー……確かにクロードさんの格好怪しくは見えなくもないですからね。黒いフード被ってる人少し目立ちますし。分かりました。クロードさんはゆっくり休んでてくださいね。ヴァイス行こ」
「キャン!」
「頼んだぞ。あと、ここはオークション会場があるからやっぱり人攫いが多い。十分気をつけろよ」
「了解です!」
クロードさんから魔石を受け取ってヴァイスと一緒に路地裏を出る。魔石は最初に見た時と光り方は変わってない。少し遠出することになりそうかな。
***
「はぁ…クソっ………」
アイツらがここを出たのを確認してからズボンの裾を捲り上げる。包帯を巻いてるが血が滲んでいる。あの魔槍回復も妨げる効果でもあったのか?ルメッドドロップが全然効かない。最初は正直歩くのもキツかったがヴァイスのおかげで助かった。歩けるぐらいまでには回復できたが、正直今でも痛みが引かない。今回は出来るだけ戦いは避けたい。作戦が上手くいけばいいんだがな。
***
「うーん…ここら辺だと思うんだけど」
手のひらにのせたピアスの魔石が強く光ってる。多分ここら辺にオークション会場があると思うんだけど建物が一軒もないただの路地裏だ。何か建物があったらしらみ潰しでいけそうだったけど、ここには行き止まりと沢山の箱しかない。どうしよう…。もしかしてここじゃなかったのかな。一回戻ろっかな。
「キャフン」
「ヴァイス?」
ヴァイスがいきなり服の裾を引っ張ってきたと思ったら、少し近くから人の話し声が聞こえる。ど、どうしよう!隠れた方がいいかな!?
「えっとえっと…!」
「キャン!」
「あ、そこだ!」
咄嗟に道の脇に置いてあった空き箱にヴァイスと一緒に入る。少し狭いけどなんとか入れた。これでやり過ごそう。
「今回はどんな商品があるか楽しみですわ」
「なんでも買ってやろう。好きなのを言いなさい」
「流石ですわ!」
箱の隙間から覗き見るとドレスを着た女の人と燕尾服を着た男の人が歩いて来た。なんか話をしてる。でもこんなところになんの用だろう。
「!!」
2人が壁の中に消えていった!そうか魔法で隠されてたんだ。じゃああの向こうに会場があるんだ。早速クロードさんに教えないと。
「うんしょっと…。ふぅ…狭かった」
「ブルルルル!」
「クロードさんのところに一回戻ろうか」
「キャン!」
ヴァイスを抱えて路地裏を出る。この裏路地に来る時に少し見えたけどこの街は海に面してるみたい。遠くから見ても太陽の光に反射して青くキラキラ光っててキレイだった。機会があるなら近くでみてみたいな。海が近くにあるから露店も魚とかの海鮮物が多く売ってる。真珠も売っててこの街も素敵だな。出来ることならゆっくり観光したいけど無理だよね。
「クロードさん戻りましたよ」
「あぁ…どうだった」
「無事見つかりました!会場は魔法で隠れてるみたいです」
「なるほど。やっぱりそのくらいはしてたか」
「それとピアスお返ししますね」
「あぁ」
「それでこれからどうしますか?」
「取り敢えず今日は休もう。この街に来るのにも疲れたからな」
「じゃあ宿とりますか?あ、でも顔が割れてる可能性があるから取れませんかね」
「そうかもな。だから今日はここで野宿だ。すまないな。あとずっと気になってたがその両手に持ってる焼き魚はなんだ」
「あ、これですか?ちょうどお昼なのでいいかなって思って買って来ました。クロードさんお腹空いてませんか?」
クロードさんのところに戻る途中で買って来た焼き魚を1つクロードさんに渡す。いい匂いでおいいしそうだったからつい買って来ちゃった。
「お前が腹減ったんじゃないのか」
「そ、そんなことないですよ〜」
グゥ〜……
「ほらお前も食べろ」
「はい……ヴァイスもほら」
「キャウゥン!」
ヴァイスにも焼き魚をあげてから私も齧り付く。パリパリした皮に脂の乗った魚の身。今まで食べたどんな魚よりも美味しい!
「美味いな」
「ですね!やっぱり海がある街だから魚も美味しいんですかね」
無心になって魚を食べてるとあっという間に食べ終わっちゃった。美味しかったなぁ…。
「それじゃあ明日の昼に計画を実行するぞ。それまで体をちゃんと休めろよ」
「分かりました!」
「キャン!」




