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魔王復活目録  作者: わか3
出会い編
7/111

7話 同行者と旅立ち

「こんなもんだな」


 少し話すぎたな。久々にアイリスのことを話したらつい止まらなくなってしまった。


「ほえー。アイリスさんって凄い強かったんですね」

「まあな。無駄に強かったから、手に負えなかったらしい」


 俺の身分がわからない様にぼかしながら話したがちゃんと伝わった様だな。


「それにしてもアイリスさんって凄い人だったんですね。まさかあの魔獣をまとめちゃうなんて。私を襲った魔獣?っていうの強そうでしたもん」   

「あの魔獣は個体としては1番多い魔獣で、弱い方なんだが」

「そ、そうなんですか。でもクロードさんの話によると魔獣は人間を襲わない様になったんですよね?私普通に襲われましたよ」

 

「それはそうだ。魔獣をまとめていたアイリスがいなくなったんだ。魔獣たちは統率を失って、また昔の様に人間を襲い始めたんだ」

「そっか。そうですよね。今の話を聞いただけだと、アイリスさんって凄くいい人っぽかったですよ」

「アイリスは歴代の魔王の中でも多くの魔族に愛された魔王だった。歴代の魔王は力で魔族たちを抑え込んでいたこともある。人望と強さを両方兼ね備えたアイリスは、間違いなく魔王の器に相応しい奴だった」

「そうなんですね。なんか私、アイリスさんのこと好きになってきました」

「それを聞いたらアイリスも喜ぶだろうな。あいつは人間が好きだから」


「その、少し聞きたいんですけど…」

「なんだ?」

「もしかしてクロードさんってアイリスさんと親しい仲だったりします?」

「!?な、何でそう思ったんだ」

「だってアイリスさんのことを”あいつ“って言ったり、何よりアイリスさんことを話すときのクロードさんの表情、凄く楽しそうなんですもん」

 

 しまったな。まさかあいつがこんなに鋭いとは思わなかったな。まぁ油断してた俺が悪いんだが。


「それでどうなんですか?クロードさんはアイリスさんとどんな関係だったんですか?」

「内緒だ」

「えー!それはないですよー」

「誰しも秘密は抱えるものだ。そう簡単に暴くものじゃない」

「ムー……」


 ジトリとこちらを見つめてくる。まあ仕方ないな。こればっかりは簡単に言えることじゃない。


「さて、長居しちまったな。そろそろ俺は行く」

「え!もう行っちゃうんですか?」

「俺はこう見えて忙しいんだ」

「でも…」


 こんな短い間話した奴をここまでに感情移入できるものなのか。俺はここまでお人好しじゃないから考えられないな。


「すまない。短い間世話になったな」

「ま、待ってください!」

「だから…」


 こいつもなかなかに面倒臭いな。いい加減引いてくれないか。


「クロードさんはアイリスさんの体を探してるんですよね」

「まあ、そうだが。それがどうした」

「でもクロードさん、この10年で1つも見つけられてないんですよね」


 こいつなかなかに痛いところを突くな。俺がこの10年で得た情報というのはアイリスは体をばらされて封印された。その体は人間の偉い奴が持っているということ。魔族の俺が調べられることはたかが知れてる。しかもこれは仮説に過ぎない。


「確かにそうだが」

「だったら私を連れてってください!私、絶対に役に立ちます!!」

「俺がお前を連れて行くメリットはなんだ。そもそもお前は何で俺について行きたいんだ」

「……私、お兄ちゃんがいたんです。でもある日いなくなっちゃって。でも私1人だとお兄ちゃんを見つける前にきっと死んじゃいます」

「だから俺について行って兄を見つけたいと」

「はい。それに昔、両親から街の方には行っては行けないと強く言い聞かされていたんです」

「お前の両親は心配症だったのか?」

「わかりません。そういう感じではないはずです。理由を聞く前に死んじゃったので」


 両親は死んで兄は行方不明か。相当複雑な様だな。俺も昔は家族がいた。家族というものはかけがえのない存在だからな。それに両親が死んだ後兄と2人暮らしか…。


「それに人間でしかできないことだってありますよね」

  

 俺は魔族だから簡単に人間に話を聞くこともできない。ローブがあるかと言ってもローブの魔法も完璧じゃない。魔法は姿を隠すだけで魔族という存在自体は隠しきれない。人間と魔族の魔力は違って、感のいい奴には俺が魔族だってバレてしまう。


 その時に人間のこいつがいればアイリスのことを聞けるかも知れない。だがそれだけのことで連れて行く価値はあるか?それに国のトップを敵にまわすんだ。その時にこいつを連れていれば足手まといになる。


「お願いします!私、兄を探したいんです!!」


 こいつは俺と一緒だ。どこにいるかも分からない人のために命をはろうとしている。こいつだってきっと俺に着いて行くことが危険なことだって分かっているはずだ。それに俺もこいつの気持ち分かる気がする。


「仕方ない。俺だって人間相手に情報が手に入るなら好都合だ。ただし俺に着いてくるなら命の保証はしないからな。」

「本当ですか!ありがとうございます」


 そんなに嬉しいのか瞳に少し涙を浮かべている。


「私、クロードさんの役に立てる様一生懸命頑張ります!!これからよろしくお願いします」

「ああ、よろしく」


 差し出された手を握る。これでアイリスに一歩近づけるといいが。


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