66話 敗戦のその後
「はぁ…はぁ……」
「ここなら大丈夫でしょ。さて、まずはこの氷をなんとかしないとね〜」
私はクロードに敗戦し突然現れたルイ副団長に助けられた。クロードの魔法の氷は未だに私を蝕んでおり斬られた脚からどんどん氷が上半身へ蝕んでいく。氷の第八呪文の氷はそう簡単には溶かせない。生憎私は炎魔法が使えません。あのままあそこにいたら間違いなく私は死んでいたでしょうね。
「狐火。セリオスの氷をなんとかして」
私を周りに狐火が飛び交い私の氷を徐々に溶かしていく。ルイ副団長の祝福は便利ですね。密偵に攻撃。狐火が意志を持って行動する。羨ましいですね。
「貴方移動魔法使えたのですか…」
「ん〜短い距離限定だけどね〜。まあギフトの延長線かな」
偶に部屋から忽然とルイ副団長がいなくなるのは同じ原理なのでは…?サボる為にわざわざそこまで…。
「これで大丈夫かな。あとは止血しよっか。まぁ、見たまんま右脚が酷いねぇ」
「……ルイ副団長。何故私を助けたのですか」
「なんでって、僕が副団長でセリオスが団長。部下が上司を助けるには当たり前でしょ」
「ですが貴方は私よりも強いんですから、クロードにも勝てたのでは?」
「え〜だとしても僕はクロードとは戦いたくはないかなぁ」
私の質問に答えながら手際よく私の治療をしていく。白い制服は私の血で真っ赤に染まってしまった。新しく仕立ててもらわないとダメですね。
「うわ!致命傷ギリギリじゃん。よく助かったねぇ。いや、クロードが意図的に外したのかな?」
「クロードは私から情報を引き出したかったみたいですしギリギリ殺さないようにしたのでしょう。恐るべきコントロール力ですね……ゲホッ…」
「あんまり喋んないほうがいいよ。致命傷じゃないとはいえ結構深いからねぇ。今は取り敢えず応急処置。あとは本部の方で治療してもらった方がいいねぇ」
「そう、ですね…。その間ヒスイ街は貴方に任せることになりますが…」
「任せといてよ!」
正直心配ですね。サボり癖のあるルイ副団長が真面目に仕事をしてくれるでしょうか。破壊されているところもあるので早急に復旧してほしいのですが大丈夫でしょうか。
「あとさ。セリオスなんで死のうとしたの?」
「!!……貴方には気づかれてしまいますか」
「当然。僕に隠しごとができると思ってるの?」
「思いませんね。本当に貴方には隠し事ができない」
「で、なんで?」
まっすぎ私を見てくる視線に耐えきれず私は話し始めた。
「はぁ…仕方ありませんね。長くなりますよ」
「いいよ〜」
「私は知らなかったとはいえアイリスの身体を移植してしまいました。ゴホッ…。その後私の右脚がアイリスのものだと分かった時私は深い後悔に襲われました。ゲホッ…ゲホッ……。アイリスの身体と分かった時にすぐにでも右脚を取る手術をするべきでした」
「でもしなかったんでしょ」
「えぇ…。私は10年前の大戦でクロードによって右脚を奪われました。その後私は使い物にならなくなり退団を考えました。その時に私は国の研究者、ネクロさんに声をかけられ最新鋭の義足の非検体にならないかと言われました。ゲホッ…ゴホッ……。私はまだ騎士団にいられる希望があるならと喜んで受けました。そして右脚の義足がアイリスの身体だと分かっても目を逸らし続けました。今この右脚を失えば騎士団にいられなくなる、そう思ってしまったんです。我ながら情けないですね…」
10年前から私はずっと喉の奥に小骨が刺さったような感覚だった。私がしていることは正しいのか、私は間違っているのではないかとずっと自問自答していました。私は強さを求め人間として何かを失った気がした。そして今日右脚を再び失った。もう戦えないかもしれないという不安とやっと解放されたような安心感を同時に抱いている。これでよかったのかもしれません。
「ふ〜ん…でもなんでセリオスにアイリスの身体のことを内緒にしたんだろうね。別に隠すことじゃないじゃん」
「きっと私のことを知っていたんでしょうね。私がアイリスの身体だと分かっていたら移植を受けない。そう思ったんでしょうね。現に今でも私に知らされていないことはありますよ。ゴホッ…!そして今でも心の奥底で後悔していました。今日になってクロードが私の前に現れた。クロードのあの心の叫び。あの叫びがずっと私の耳から離れない。きっと私は間違っていた。10年前からずっと……。その罰を受けるべきだと思ったのです」
「あのさ〜セリオスは考え過ぎ。何がそうさせてるの。団長って立場?それとも罪の重さが故にそうなってるの?」
「……何も言えませんね」
「今の立場がセリオスをそうさせてるならもう騎士団抜けちゃえば?」
「な!?ゲホッ!ゴホッ!!」
「あ、も〜急に大声出さないでよ。傷がさらに開くよ」
騎士団を抜ける。そう、そうですね……。昔は人々を守るために騎士団に入団した。ですが実際は、国に有益な街しか守らない体制で全ての人を守ることが出来なかった。しかし少しでも多くの人たちを守る為に騎士団に居続けた。……今後のことについて少し考えてみましょうかね。
「セリオス団長!ルイ副団長!無事ですか!?」
「お、来たね〜」
駆けつけてきた部下の方が私を心配してすぐに駆け寄って来た。…私はいい部下を持ちましたね。
「うわ!ひどい怪我!どうしたんですかセリオス団長!?」
「じゃ、よろしく。そのあと本部に連絡して迎え寄越すように頼んで。右脚のこと連絡しなきゃだし」
「右脚?うわっ!?だ、大丈夫ですか!!」
「大丈夫ですよ…ゲホッ!」
「ま、待っててください!今移動魔法できる者を連れてくるので!おーい!移動魔法使えるやつ誰かいないかー!!」
叫びながら人を探しに走っていった。まあ私まだ魔力に余裕があるので1人でも帰れるのですがここは好意に甘えておきましょう。
「じゃ、僕は他にすることあるから」
「すること?まさかサボりではないでしょうね…」
「違うよ〜。クロードと関わりがある人間を捕縛したから第二団に話をしにいくんだよ」
「な!貴方いつの間に…!…ゲホッゴホッ!!」
「だから大声出さないでって。まあ色々あったんだよ。捕縛した人間を尋問する為に第二団に送ったんだよ。まあ色々文句言われるだろうからちょっと言いくるめてくるね〜」
「あ、ちょっと…!」
そう言ってまた炎に包つまれて姿を消してしまった。私たちと別れている間サボっていると思ってましたが、まさか別の仕事をしていたとは…。10年近くルイ副団長と一緒にいますが本当に底がしれない人ですね。
「セリオス団長!移動魔法が使える者連れて来ました!!」
「お待たせしました!聞いてた通り酷い怪我ですね…。今すぐ屯所に向かいます!」
「えぇ…よろしくお願いします」
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「つきました、セリオス団長」
「私の為に態々ありがとうございます」
「いえ!では俺は医者を呼んできます。すぐに戻って来ます!」
「えぇ。ありがとうございます…ゲホッ!」
部下の方に本部まで送ってもらい、すぐに屯所に駐在している医者を呼びに行ってもらった。するとすぐに医者が走ってこちらにやって来た。
「お待たせしました!すぐに治療を始めますね。本部の方には既に連絡しておきました」
「すみません…お手数お掛けします……」
医療用ベットに運んでもらい、回復魔法をかけてもらいながら本部の方が迎えに来るのを待つ。本部の方、すぐに来てくれると良いのですが…。
「とりあえず止血はしました。あとは回復魔法を少しずつかけていきましょう。あくまで回復魔法は治癒力を促すものなので、かけすぎるのは良くないですからね」
「大分、良くなりました。ありがとうございます。相談なのですが、私はどれくらいで復帰できるでしょうか」
「そうですね。新しい義足になれるまで時間がかかると思うのですぐには復帰はできないとは思います。それに以前と同じように動けるかどうかは正直にいうと分かりません」
「そう、ですか……」
確かにあの力はあの右脚があってこそ。この方はアイリスのことは知らないので本当に前のようにはいかないのでしょうね。最悪の場合、ルイ副団長に団長の座を譲ることを考えた方がいいのかもしれません。ルイ副団長は私よりも強いので強さに関しては申し分ないのですが、いかんせんあのサボり癖が問題ですね…。
「失礼します。本部のからセリオス団長のお迎えに参りました」
「もう来てくれたんですね!セリオス団長、動けますか?」
「えぇ貴方のおかげで大分よくなりましたからね。治療、感謝します」
「いえ、仕事ですから。セリオス団長お大事になさってください。第六団の方もセリオス団長を待っていますからね」
「では参りましょう。セリオス団長」
「分かりました。では、みなさんのことをお願いします」
「はい!勿論です!!」
本部の方に肩をかりながら医者の方に挨拶をする。ここを長く開けるのは不安ですがみなさんなら大丈夫でしょう。私もできる限り早く復帰できるように努力しなければ。




