64話 雷の決着
今回はグロテスクな表現があります。苦手な方は注意してください。
「お前のその祝福魔法効果までは複製できないみたいだな」
「!!」
さっき俺を襲ってきたケラウノスは全てコピーだった。爆発で全て塵になったのがそうだ。そして今アイツが持っているのが本物のケラウノス。あのケラウノスだけ雷を放出した。そもそも全て同じ性質を持っているなら全ての槍で一斉に雷を放出するればいい話だからな。あの量のケラウノスから雷を放出されたら俺でも全ては防ぎきれない。
「バレてしまいましたか……。貴方の言う通り私のギフト、偽りの虚像はあくまでも形だけを複製するもの。魔法効果までは複製できないんですよ」
「やっぱりな」
「ですが、それが分かったところでこの量のケラウノスを貴方に捌けますか?」
さっきと同じようにケラウノスを数十本複製した。また来る。だがさっきので分かった。複製されたケラウノスは魔法を吸収できない。なら破壊できる!
「貫けケラウノス!」
「炎の第六呪文:ブラスト!」
さっきと同じように襲ってきたケラウノスを全て爆発に巻き込んで全て破壊する。爆発した煙で前が見えない。これが狙いか…!なら高速でアイツが襲って……!?
「クッ…!」
「よく避けましたね。この高速移動の攻撃は簡単には避けられないのですが」
「勘だよ」
横に転がりながらなんとか攻撃を避けられた。だが完全には避けきれなかった。腕を少し掠ったな…。この程度なんでもないが、あの高速移動はなんとかしないと確実にやられる…。
「そうですか……。貫けケラウノス!」
「ガッ……ア…!クソッ脚が!水の第七呪文:アクアリウム!!」
横になった体制から起き上がる時に左脚が痛んで起き上がれず咄嗟にアクアリウムで防御した。水のドームがケラウノスを防いでいる。だがこの脚と今の残ってる魔力じゃこれ以上持たない!ここからは短期決戦だ。俺の魔力が尽きる前に、やられる前に決着をつけなければ。
「ルイ副団長!貴方今どこにいるんですか!」
「もうなんだよセリオス〜。今いいところなんだけど…」
「そんなこと言ってる場合じゃないんですよ!今、あのクロードが現れて交戦中なんですよ!ルイ副団長今どこにいるんですか!早くこっちに来てください!」
アイツ今何してんだ?他の仲間に応援でも呼んでるのか?コンパクトのようなものに呼びかけている。見たことない魔道具だな。ここ10年で開発された物だろうか。それに今副団長って言ったな。これ以上時間かかったら副団長が来るかもしれない。余計に時間をかけられない。
「全くルイ副団長は仕方ありませんね…。さてそろそろ出て来てもらいましょうか。エアーバレット!」
ドガガガガガッ!!
アイツがケラウノスに加えエアーバレットを撃ち込んできた。アクアリウムも長くは持たない。壊れる前にあの高速移動の突破口を見つけないと…。
「あの高速移動何か予備動作かなんかはないのか?」
魔法にも予備動作がある。呪文を唱え魔力を消費する。あの高速移動が魔道具のものなら何かしら予備動作がある筈…。
「クソッ…もう持たないな」
パァアン!
アクアリウムが割れて水飛沫をあげる。それと同時に降ってくるケラウノスを横に避ける。降って来たケラウノスは全て地面に刺さっていく。刺さっている量を見て本気で俺を潰しに来てることが分かる。
「そろそろ終わりにするか。時間がないみたいだしな」
「そうですか。では全力で参ります!」
そう言ってアイツは高速移動で建物と建物間を跳び回り始めた。目では追えないが魔力探知でなんとか感知できているぐらいだ。だがあの右脚さっきまで感じなかった魔力を感じる。やはりあの右脚をなんとかしないとダメだな。
「はあっ!」
「クッ…!」
建物を跳びながら複製されたケラウノスが次々飛んでくる。命中率はそこまでじゃないがこれはキツい…。脚を引きずりながら魔法でなんとかケラウノスを捌いていく。まずはあの数のケラウノスをなんとかしないとアイツに近づけない!打開策ならい1つある。だがチャンスは一度きりだ。
「!!」
大量のケラウノスが俺に襲ってくる。だがチャンスはここだ!
「雷の第二呪文:エレクトロマグネ!」
近くにある建物にある魔法をかける。途端に俺を襲ってくるケラウノスが全て魔法をかけた建物に吸い寄せられていく。アイツが持っているケラウノスも反応したようで建物に吸い寄せられている。
「な!どういうことですか!?」
「はぁ…はぁ……上手くいった…」
雷の第二呪文:エレクトロマグネ。魔法をかけた物を電磁石にする魔法。この魔法を習得した時にどこでこんな魔法を使うのか分からなかったが、まさかこんな形で役に立つとは。何百年生きていてこの魔法があって命拾いしたのは初めてだ。それにあのケラウノス。実態がない魔法は吸収できないみたいだ。
「降りてこい!真正面から戦わないのか!お前は臆病者なんだな!!」
「なんですって?上等じゃないですか。いいじゃないですか!貴方の挑発にのってあげようではないですか!!」
思った通りだ。アイツは正義感が強い。ああやって煽れば降りてくると思った。俺にとってあの高速移動で跳び回れる方がキツいからな。それにアイツの高速移動も読めて来た。高速移動をする瞬間右脚に魔力が発生する。右脚の魔力は異様な魔力だから分かりやすい。本物のケラウノスはエレクトロマグネで封じた。ここで決着をつけるしかない。
「まさかエレクトロマグネでケラウノスたちを封じられるとは思いませんでした。私もあの魔法は盲点でしたね」
「そうだろうな。俺もさっきまで存在を忘れてたよ」
「そうですか…。では決着をつけましょう。雷の第五呪文:エレクトロランス」
「氷の第八呪文:フロストバイトエペ…」
アイツは雷の槍を、俺は氷の剣を構える。右脚の魔力に集中しろ。魔力を発し始めたらアイツがくる…。お互いみつめあって攻撃の機会を伺う。
「参ります!」
「ッ…!!」
ギィイン!!
お互いの武器がぶつかる音が響く。アイツはすれ違いざまに攻撃を仕掛け、そのままの勢いで俺の後ろに回る。なんとか高速移動に対応できた…。だがあの高速移動中に俺が攻撃を当てることは難しい。なんとかして足止めをしなければ。だが今の俺の魔力はもう少ない。中級魔法を一発打てるかどうかだ。
「はっ!!」
「くっ!!」
攻撃を仕掛けまた距離をとり高速で近づきまた攻撃をする。その繰り返しだ。なんとか食らいつき攻撃を捌ききる。だがなんなんだアイツの右脚の魔力。ただの魔道具にしては魔力が異端過ぎる。この魔力の感じどちらかといえば人間よりも魔族のに近い…。
「………ッ!!」
完全に捌ききれずに右腕を少し斬られた…。考えごとをしてる暇はない。この攻防がいつまで続くか分からない。こうなったら身を切る覚悟をするしかないな…。これ以上傷を負ったら危険かもしれないが仕方ない…。
ガキン!
「来い!」
剣を地面に刺しアイツの攻撃を正面から受ける覚悟をする。アイツの性格上無抵抗の相手には背後から攻撃はしないはず…。ならアイツがくるのは正面に限られる。上手くいかなければ最悪死ぬ。仕方ない。覚悟の上だ。
「舐められたものですね!はぁ!!」
来る!!
「な、なんですって!」
「やっと、捕まえた……!」
アイツが正面から攻撃を仕掛け俺はその槍と腕を掴む。雷でできた槍は手のひらを焼き血が滴り落ちる。槍の先は俺の腹の数ミリ近くまで迫っていた。あと少し遅かったら腹を貫通してたな。だがこれでアイツの動きを封じた。苦肉の策だったが上手くいって良かった。
「くっ!離しなさい!!」
「なんだようやく近くまで来てくれたんだからもう少し話そうぜ!」
「雷の第八呪文:サンダーショッ…」
「風の第四呪文:エアーバレット!!」
「ガッ…ア…!!」
アイツが呪文を唱える前に風の弾丸がアイツを貫く。アイツは力が抜けて後ろに倒れる。死なないように致命傷は外した。だがあの程度の傷ならまだ動くだろう。地面に刺して置いてた剣を引っこ抜く。刺していた地面は魔法の影響で凍っている。
「ま、まだです!」
「いや終わりだ」
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁああ!!!!」
剣で右脚を切断するとあたりに叫び声が響き渡る。体から離れた魔道具を拾いあげる。この魔道具は危険だ。仕方ないが切断するしかない。切断面は既に凍って血も流れていない。このまま放って置いたら氷が全身に広がりいずれ氷漬けになる。だがその前にアイリスのことを聞き出さなければ。
「おいお前」
「はぁ…はぁ……はぁ………。なん、ですか。情けは、かけないでください。やるなら一思いに…」
「アイリスの身体の行方は何処だ。団長のお前なら知ってるだろう。さっさと話せ。時間はないぞ。このままだとお前は氷漬けになる。質問に答える気がないならさらに刺して氷漬けになる時間短くしてもいいぞ」
「はぁ…はぁ……。貴方の魔王に対する忠誠心は素晴らしいものですね。それほど貴方たちの王は、素晴らしかったのでしょうね」
「質問に答えろ」
「分かっています。アイリスの身体は貴方がもう持ってるじゃないですか」
「どういうことだ…」
身体中が冷える。手のひらから流れてる血がやけに熱く感じる。信じたくないその事実に身体の穴という穴から汗が流れる感覚がする。やめろ。やめてくれ。俺が今考えてる最悪の状況を否定してくれ。
「貴方が持っている右脚。それがアイリスの右脚です。我々団長はアイリスの身体に適合した者たち。国の研究者が適合者を探し出し、私たちの身体に合うようにアイリスの身体を改造した。その結果がその右脚ですよ」




