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魔王復活目録  作者: わか3
ヒスイ街編
63/128

63話 団長


「団長そろそろお時間です」

「あぁもうそんな時間ですか」


 自室で書類仕事をしてると部下が時間を知らせに訪れた。壁に掛けてる時計を見ると見回りの時間が迫っていた。いけませんね。仕事に夢中になって時間管理を怠っていました。


「あと、お耳にいれておきたいことが一つ」

「なんでしょうか?気にせず言ってください」

「その、ルイ副団長がまたいないんです……」

「またですか!?最近ルイ副団長の行動が目に余りますね。一体何をしているのやら。いやサボりだとは思うのですが最近は特に酷いですね」

「それでどうしますか?ルイ副団長に連絡をした方が良いでしょうか」

「いや、今から呼び出しても時間に間に合いません。それにサボりなら街にいるでしょう。今回は街の見回りですから後で合流しましょう」

「了解しました。全員準備は整ってます」

「では早速行きましょう。皆さんを待たせてしまってますしね」



 ****




「今日もヒスイ街は綺麗ですね。さすが国一番美しいと言われる街です」

「それは団長のおかげです。団長のこうした定期的な見回りのおかげで街の秩序が守られ街が美しく保たれているのです」

「私だけではありませんよ。私は本部にいることが多いです。私が不在中の街を守っているのは皆さんです」

「「団長〜〜」」

「まあルイ副団長には困ったものですけどね」


 綺麗な建物に道ゆく人たちの笑顔。この街を守るということは人々の笑顔を守るということ。実にやりがいのある仕事なものです。私が団長に就任してから実に10年。大怪我をして竜の騎士団を退団しようとも考えましたがこの街や人々を見ていると辛くても続けていて良かったといつも思います。


「セリオス団長!今日が見回りの日だったんですね!」

「はいそうなんです。最近何か変わったことはありましたか?何かあったらすぐに第六団屯所にご相談くださいね。お力になりますから」

「いつもありがとうございます。後で差し入れを届けますね。いいものを仕入れたんですよ」

「ありがたく受け取りますね。マイソンさんの差し入れは部下がいつも喜んでます」

「それはありがたい!いつも街を守ってくださっているお礼ですから喜んでもらってこっちも嬉しいですよ」


 マイソンさんの店は青果店。質のいい野菜や果物を仕入れていることで有名なお店。よく屯所に果物を差し入れをしてもらって部下が嬉しそうにしているのを見かけてますね。高いものばかりなのにいつも申し訳ない。


「それでは私はそろそろ行きますね」

「頑張ってくださいねセリオス団長!」


 マイソンさんに挨拶をして次に進む。見回りの主な業務は不審な出来事があったかの聞き取り、不審人物の取り締まり。この街では少ないですが人攫いもいるのでそちらの捕縛もですね。いつも国王に奴隷制度の撤廃を進言しているのですが一向に聞き入れてもらう様子はないのですよね。困ったものです。奴隷制度が撤廃されるだけで国全体の治安がよくなると思うのですがね。


「おい止まれ」

「ん?なんですか貴方は。見ない顔ですね」


 突然道の真ん中に現れた男の人。黒いフードを深く被って顔がよく見えませんがこの街では見たことない顔です。観光客でしょうか。しかしこの魔力量、ただの一般人じゃない。それにこの魔力の感じ………


「お前がセリオスか?」

「そうですが…貴方何者ですか?この魔力の感じ。貴方人間じゃないですね」

「そうか…。お前が団長か。なら話は早い。アイリスの体について詳しく聞かせてもらうぞ」

「アイリス…。やはり魔族ですか。魔法で姿は隠してますが魔力までは隠せないみたいですね。なぜ貴方がこの街に入れたかは分かりませんがすぐにこの街から出ていくなら手荒な真似はしません」

「そうはいかない。俺はこの時をずっと待ってたんだ」

「そうですか。でしたら力尽くでもこの街から出ていってもらいます。皆さんは安全な場所に避難してください!」


 この魔族只者じゃない。戦いとなるとここら一帯を巻き込みかねない。連れていた部下の人たちに民間人の人たちを避難させる。街を破壊されない様にしなくては。しかしこの声どこかで聞いた覚えが……。


「炎の第三魔法:ヘルフレイム」

「ランドウォール!」


 相手がいきなりヘルフレイムで火炎を出してきた。ランドウォールで炎を防ぐ。後ろにはまだ避難していない街の人たちがいる。火の粉一つ後ろにいかせる訳にはいきません。


「いきなり危ないじゃないですか。後ろにはまだ避難していない人たちがいるのに」

「他の人間に気をつかえるほど余裕があるのか」

「街の人を守るのは当たり前のことです。それが私の仕事ですから」

「たいしたもんだな」

「そもそも貴方何者なんですか。魔力の感じからしてただの魔族には見えません。顔を見せたらどうですか」

「わざわざお前に見せる程じゃない」

「貴方口が達者ですね。どうしても自分の正体の正体を隠したいように見えます」


 私に既に魔族だとバレているのに未だに顔を隠しているように見えます。ただの魔族なら顔を隠す必要はありません。つまり隠す必要があるということ。そもそも普通の魔族が魔王を復活させるために団長の私に正面から、しかも1人で向かってくるなんて普通じゃありえない。数年前には魔族たちが結託して竜の騎士団の団員たちに奇襲を仕掛けてきたことはありましたが、この人は違う。自分1人でも戦えるという自信、そうと感じさせるオーラがある。


「そこまでして顔を出したくないなら、無理やりにでも見させてもらいますよ!」

 ビュオーー!!


 風魔法で強風を吹かせて男のフードをはずさせる。思惑通りにフードは風に煽られて外れる。思った通り男の頭には魔人特有の角が2本生えていた。だが片方だけ角が折れている。それよりもあの顔!忘れる訳がない。右脚が痛みで疼く。そんな筈がないのに……。


「貴方混沌のクロードですね!何故こんなところに…。いや貴方がまさか生きていたとは」


 10年前の対戦後からクロードの話を一切流れてこなかった。大戦で死んだという話も聞かなかったからどこかで野垂れ死んでいるのではという噂がありましたがやはり生きていましたか。あの男がそう簡単に死ぬ筈がないがないと思いました。



****

  



「貴方混沌のクロードですね!何故こんなところに…。いや貴方がまさか生きていたとは」


 相手の風魔法でフードが外れて顔がわれてしまったが仕方ない。できるならバレずにアイリスの情報を聞き出したかったが。これでこいつを取り逃したら俺が生きてることがサナティクトにバレる。そうなると今後行動がしにくくなる。ならここで始末するしか………。


「私を覚えていますか!私は忘れません…10年前の大戦で私の脚を奪った貴方を私は忘れません!」

「脚…だと?それに10前の大戦……」


 10年前の大戦。俺はアイリスのことで無我夢中で戦っていた。その人間のことなんて覚えてはいない。だが、脚を奪ったとコイツは言っているが両脚とも揃ってるじゃないか。


「生憎だが覚えていない。それにお前には脚があるだろ」

「この右脚は義足です。騎士団の研究者に取り付けられたもの。ですが……私のことは覚えていませんでしたか。それに貴方があのクロードとなれば見逃すことはできません。力尽くで貴方を捕縛します」

「やれるものならやってみろ」

「でしたら最初から全力で参ります」

 

 そういうとアイツは空間魔法の空間から金色の槍を取り出した。槍からは魔力を感じる。魔槍か。どんな魔法効果があるかわからない。槍に警戒しないと。


「風の第五魔法:ゲイルアロー!」

「飲み込めケラウノス!」

「な!?」


 ゲイルアローで風の矢を何発か打ち出した途端に槍の先からに全ての矢を吸収された。成程…。あの槍の魔法効果は吸収か。なら無闇に魔法を撃つのはやめた方がいいな。撃つなら吸収されないように全方向からの魔法か、槍に吸収されないように近距離で魔法を撃つかだ。


「氷の第三呪文:アイシクル!」

「!!ですがこの程度ケラウノスで簡単に…」


 アイシクルは頭上に氷柱を生成して攻撃する魔法。これでアイツの注意を頭上に集中させる。その隙に身体強化で懐に近づく。思惑通りアイツは氷柱に夢中だ。そしてそのまま近距離で炎の第二呪文を放つ!


「メラルガ!……!?な、なんだと!」


 俺は確かにアイツの懐に潜りこんでいたはずだ。だが目の前には誰もない。そこには地面に氷柱が刺さっているだけ。放ったメラルガの火球が建物を破壊した光景だけが俺の目の前に広がっている。あいつは確かにここにいた筈だ。まさか俺の狙いに気づいて身体強化で逃げたか?


「街を壊しましたね。こうなることは承知でしたが、やはり後のことを考えると心苦しいですね」

「お前いつの間にそんなところへ……」


 アイツは俺がいたところに移動していた。身体強化にしても速すぎる。雷の第七呪文か?だとしても無詠唱であそこまで早く魔法を発動できるものか?


「既に気づいていると思いますがこの魔槍、ケラウノスの魔法効果は魔法の吸収です。そして吸収された魔法はどこへいくと思いますか?」

「まさか!!」

「解き放てケラウノス!」

「水の第三呪文:マリンブークリエ!!」


 ケラウノスからとてつもない魔力を感じ咄嗟に水の第三呪文を発動させ水の盾を作る。その瞬間ケラウノスからとてつもない魔力を帯びた雷が俺に襲ってきた。


「グ……!」


 完璧に盾が作られる前に盾を貫きそのまま俺の右腕を貫通した。盾のおかげで腕を貫く前に威力が衰えて右腕は取れていない。だが肉が電気で焼けて痛む。出血は少ないのが唯一の救いかもしれない。


「ケラウノスが吸収した魔力は槍に溜め込まれ、魔力を電気に変換し解き放ちます。流石の貴方でも防ぎきれませんでしたか」

「クソッ……氷の第四魔法:ホワイトアウト!」


 ホワイトアウトで視界を遮り建物の影に身を潜める。魔力ですぐに場所を割られるだろうが少し時間を稼げればいい。今のうちにルメッドドロップで傷を回復する。多少傷は多少塞がったが、未だに焼けるような痛みがある。


「クソッまだ痛むな……。な!?嘘だろ!」

 

 ドガァーン!!!


 いきなり空に雷雲ができたと思ったら俺がさっきまでいたところに雷が降ってきた。雷が落ちる前になんとか逃げることはできたが地面には穴が空いてる。なんて威力だ…。


「外しましたか……」

「お前さっき街を壊すのは心苦しいとか言ってなかったか?普通に壊してるじゃないか」

「物事には優先順位があります。街はいつでも直せますが、貴方を捕縛するのは今しかできないことです」

「そうか。お前は俺が思ってるより立派なやつみたいだな」

「そう思ってもらいありがたいです。ですが私は容赦しません」

「あぁ俺もだよ」

「雷の第九呪文:ライトニングドラゴン!」

「雷の第九呪文:ライトニングドラゴン!!」

 

 お互いの雷の竜がバチバチと音を立ててぶつかり合う。押し負けないよう魔力を送り続ける。そのまま互いの竜は相殺し煙が巻き起こる。目の前が見えないが落ち着いて魔力探知をする。アイツは何処に…!


「ガ、アッ!!」


 いきなり左脚に激痛が走しり膝をつく。魔力探知をした途端アイツの魔力が猛スピードで俺に近づいてきた。そして今の状況だ。左脚にはケラウノスが刺さってる。無理やりにでも抜き、さっきと同じように水魔法で回復する。こっちは傷が深く傷は全然塞がらず止血程度だった。


「これで逃げられませんね。さてここで降伏すればこれ以上は傷つけませんが」


 アイツは俺の前に堂々と立ち俺を見下している。左脚を庇いながら立つ。左脚の傷は想像以上に深い。立っているのもやっとだ。それにアイツはさっき俺の脚に刺さっていた筈のケラウノスを持っている。俺が抜いたケラウノスは後ろに放られている。もうケラウノスは2本あったのか?


「誰が降伏するか。それにしてもお前随分と速いな。雷魔法とも身体強化とも違う。何か細工でもあるのか?」

「さあどうでしょうか」


 この感じからして何かしらの細工はある筈だ。一つ心あたりがある。アイツの右脚、何か変な雰囲気を感じる。普通の人間とは違う異様な雰囲気を左脚にだけ。もしかすると左脚の義足に何か仕掛けがあるのか?それに左脚にだけ魔力を一切感じない。そんなこと普通あるか?


「なんとなく分かった。その左脚に何かしら細工があるんだろう。随分と凝った魔道具だな」

「さて、もう話は終わりにしましょう。大人しく降伏してください。その脚ではもう何もできないでしょう」

「こんな傷で俺は諦める訳ないだろう。地の第五呪文:ロッククリエイト!」


 地面に岩を生やしアイツに距離を取らせる。クソッ…さっきの雷の第九呪文で大分魔力を使った。昔と同じように魔力を使うとダメだな。


「もう分かりました。貴方を半殺しにしてでも貴方を本部に連れて行きます。そうでもしないと貴方は着いてきてくれなさそうですしね」

「あぁその気でかかってこい」

祝福(ギフト):偽りの(フォールスフッド)虚像(イメージ)


 そう呟くとアイツのケラウノスが何倍にも増え何十本のケラウノスが空中に留まっている。成程…ケラウノスは一本だがアイツのギフトでケラウノスを増やし俺の脚を貫いた。そういう訳か。だがあのケラウノスがあんなに増えたら厄介だな。まともに魔法をうてなくなる。


 祝福(ギフト)……。選ばれた人間のみが持っている固有の魔法。人間によって魔法が違う厄介な魔法だ。別名ギフトと呼ばれている。魔族にはない人間固有の能力。祝福のおかげで人間は魔族に抗え魔族と人間は均衡を保っている。やはり団長レベルとなればギフトは持っているか。


「貫けケラウノス!」

「地の第二呪文:ランドウォール!!」


 何十本ものケラウノスが俺に向かってくる。咄嗟にランドウォールの土の壁で受け止める。


 ドガガガガ………


「クソッこのままじゃ持たない!」


 土の壁が壊れると同時に横に転がりケラウノスを避ける。クソッあの数のケラウノスをなんとかしない限りアイツに攻撃ができない!


「まだまだです!ケラウノスさらに行きなさい!!」

「クソッ!」


 脚を身体強化で脚を速くして走って次々と襲ってくるケラウノスを走って避ける。ランドウォールで防ぎきれない上にマリンブークリエじゃあの数は全部防ぎきれない!それに左脚がこんな状態じゃ長くは持たない!


「こうなったら一からバチかだ…。炎の第六呪文:ブラスト!」


 ドガァーン!!!


 ブラストは爆発する魔法だ。一か八か襲ってくるケラウノスを爆発に巻き込む。ケラウノスは魔法を吸収する。こんな魔法はケラウノスに吸収されるかも知らないが一か八かだった。我ながら頭でもおかしくなったと思った。だが……爆発に巻き込まれたケラウノスは全て塵となり消失していた。


「!?どういうことだ」

「…解き放てケラウノス!」

「クソッ!!」


 アイツが持っているケラウノスから雷が放出され俺は咄嗟に避ける。この左脚で良く避けられたな…。それにしても何故俺を襲ってきたケラウノスは魔法を吸収しなかった?あの程度の魔法なら吸収できた筈だ。俺を襲ってきたケラウノスは全て魔法によって複製されたものだった。まさか………。あぁ成程そういうことか。複製も完璧ではないということだな。


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