59話 生真面目な団長とサボり癖の副団長
「リリィちゃん、か。まさかクロードと一緒にいるなんてねぇ」
銀色の髪が気になって態とぶつかってみたけど当たりだってね。つくづく僕は運がいい。マーキングもしておいたしこれで一安心だ。これでちゃんと仕事が果たせそうだ。
「あ、いたいた!!ルイ副団長!!どこ行ってたんですか!?」
「あぁ〜ごめんねぇ。ちょっと休憩に」
「休憩時間はもう1時間以上過ぎてますよ!もうセリオス団長怒りで噴火しそうなんですよ!?早く戻って来てください!」
ハァ〜……休憩時間はもう終わりかぁ。ま、でもいいか。リリィちゃんに会えただけど大きすぎる収穫だし。これは喜ばれるなぁ〜。
「分かったよ。ま、セリオスの機嫌をとるために甘いものでも買って行っこか。じゃ、君はもう戻っていいよ〜」
「ダメです!セリオス団長からルイ副団長を連れ戻すまでは帰ってくるなって言われてるんです!」
「ハァ〜………仕方ないなぁ…。じゃいっこか。甘いものでも渡せばセリオスは上機嫌になるんだから」
「それだけで収まるといいんですけど…」
「あ、お金さっきの会計で使いきっちゃった。お金貸して♡」
「ふくだんちょ〜……今回だけですからね!屯所に戻ったら絶対に返してくださいね!!」
「分かってるって。じゃ適当に買って行くか」
「これで本当にセリオス団長の機嫌がなおるんですか?」
「だいじょーぶだよ。セリオス甘味には目がないし」
近くのケーキ屋で適当にケーキを何個買ってきた。これでセリオスの機嫌も直るだろうね。
「じゃあ転移しますよ。これ以上セリオス団長を待たせられないので!」
「りょ〜か〜い」
「しっかり掴まってくださいね」
部下の子に捕まれば移動魔法で一瞬で屯所に戻ってきた。便利だな〜。僕も移動魔法使えるもんなら使いたいよ。
「戻ってきましたね。ルイ副団長!!!」
「あ、セリオス〜。やっほ〜!」
顔を真っ赤にしてこっちを睨みつけてるセリオスおもしろ〜。冷静になろうとメガネを指であげてるけど怒りが抑えきれてないよ〜。
「団長と呼んでくださいといつも言っているでしょう!!!」
「まあまあ。落ち着いてよ〜。ほらケーキ」
「っな!?そんなものに釣られるわけが!」
「ほらほら〜セリオスの為にわ・ざ・わ・ざ買ってきたんだよ〜。セリオスが食べないんなら僕が3時のおやつにでもしようかな〜」
「う‥……」
「どうすんのさ〜」
「……ケーキは貰っておきます。だが次はありませんよ。全く忙しい時期にサボりとは…」
「まあまあ〜。で、忙しいって?なんかあったの〜」
「ヒスイ街の近くカシワ村の山にて謎の巨大な穴が見つかりました。その調査と原因の究明です。全く2日後にヒスイ街の巡回があるというのに……」
あ、またメガネあげてる。完全に癖になってるんだな〜。
「で、原因はまだ分かってない感じ?」
「はい。カシワ村の村人たちも知らないらしいです。今のところ手掛かりはありません」
「ふ〜ん……忙しそうなこった。で、どうするの?そっち優先?それとも巡回が優先?」
「少々悩みますが巡回が優先です。山でのことも気になるが街の住人を安心させる為にも巡回は必要です」
「なるほど。りょうか〜い」
「それとルイ副団長。その言葉遣いはやめてくれと前から言ってますよね?」
「う〜ん完全に癖だし今更無理かな〜。でも気にしてるのセリオスくらいだし別にいいんじゃない?」
「よくありません!上に立つものはそれ相応の振る舞いをしなくてはなりません」
「だからその言葉遣いってこと、ね。辛くない?」
「辛くありませんよ」
「ふ〜ん……。そういえばセリオス。ダリアって男知ってない?」
「ダリア………あぁ知っていますよ。昔、保護しましたからね」
「へぇ。でその後は?」
「ルイ副団長。おしゃべりはそこまでです。仕事をしなさい。貴方サボってばかりだから仕事が溜まってますよ」
「うげぇ……」
「またサボって何処かに行かれては面倒なので部下に見張らせます。ちゃんと仕事してくださいね」
「はいはい」
「はいは一回です!」
「へぇーい」
「ちゃんと返事しなさい!」
あの調子じゃ本当に仕事を全部終わらせないとこの部屋からは出してくれなさそうだなぁ。
「ねぇお腹すいたんだけど〜」
「そしたら他の者に何か持って来させます。すまない!ルイ副団長に何か食べ物を!!」
「む〜……」
はぁ…目の前の仕事は山積みだしイマイチやる気が出ないなぁ。う〜ん……それにしてもセリオスなにかダリアって子のこと知ってそうだよな。こっちの方で独自に調べてみる、か。
「ねぇーちょっとだけ手伝ってくれない?」
「申し訳ないですがそちらの書類は副団長のみしかできない書類なので」
「そ〜だよね〜………」
調べたいこと沢山あるのになぁー。せっかくクロードの足取りが掴めそうだったのに。まあクロードの知り合いっぽいリリィちゃんにマーキングしたし取り敢えずは平気かな〜。でもな〜急がなきゃな〜。
「よっし!やるか!」
「頑張ってくださいルイ副団長」
ルイ副団長は部屋に押し込めて部下に見張らせたから大丈夫でしょう。さて私も仕事をしなければ。明後日の見回りの準備に部下たちの訓練などすることがまだまだある。それに最近平和とはいえ警戒を怠るのは良くない。ヒスイ街は魔獣が多く棲息している魔獣の寝床の近くにある街。いつ襲撃されてもおかしくはない。
「さて、まずはカシワ村の付近の山の件を片付けなければいけませんね。人員を向かわせてはいるが解決までにいくら時間がかかることか…」
資料を見たところあの大穴は魔物や魔獣のものではない。あの山には一度行ったことがあるがあの大穴を開けるほどの力を持った魔物や魔獣は確認できなかった。なら人為的に作られたものか?だがあそこまでの穴をあける力を持った人間がいるとは…。
「大穴の周辺の草木は炭になっていた…。発見者は定期的に見回りをしていた私の団の隊士。カシワ村の村人はここ最近おかしなことはなかった、と」
私が直接現地に向かいたいが生憎明後日にはヒスイ街の見回りに行かなくては行けない。見回り後にカシワ村に行けるように予定を調節しなくては。
「ここまでの大穴を開ける手段は魔法以外考えられませんね。大穴の周辺が炭になっていた、ということは炎魔法か雷魔法。だがここまでの大穴を開けられる魔術師はそうそういない…。まさかウォルトカリアから逃げてきた魔族が?確かにカシワ村はウォルトカリアからは近い村です。だが態々目立つような行為を何故?」
ううむ。考えれば考えるほど謎が浮かびあがってくる。これは本部の調査団にも依頼をした方がいいのかも知れませんね。ですがそう簡単に本部が受け付けてくれるとは思えませんね。もし魔族が関わっているとするならその関連性を見つけないと本部は動いてくれないかも知れませんね。はぁ……本部のこういうところが私は嫌いなんですよ。
「ふぅ……息抜きにルイ副団長が買ってきてくださったケーキでも食べますか」
冷却庫にしまっておいた白い箱を取り出す。箱を開ければ色とりどりの宝石のようなケーキが沢山!……これでルイ副団長のサボりを許す訳じゃないですが後でお礼でも言っておきましょう。
「ま、まさかこのケーキ最近新しくできたお店のケーキ!?ルイ副団長まさか私がこのお店が気になっていたのを知って………いやそれはありませんね。ルイ副団長が私のことをそこまで考えてるとは思えませんし」
「ハックション!!」
「大丈夫ですか?ルイ副団長、風邪ですか?」
「ん〜誰か噂してるのかもな〜」
「さて、頂きますか」
まずは王道のショートケーキから。シンプルが故にスポンジの味にショートケーキの出来が左右される。ショートケーキはスポンジが全てと言っても過言じゃない。ケーキにフォークを入れればふんわりとしたスポンジの感覚が伝わってくる。
「頂きます………!?こ、これは!程よい甘さのクリームにふわふわのスポンジケーキ!このお店は当たりでしたね!明後日の見回りに買いに行きましょう。う〜ん美味し〜!」
「団長失礼します!」
「!?なんでしょうか!」
「ルイ副団長が逃げ出しました!」
「なんだって!?見張りの部下は!」
「それが一瞬目を離した隙に窓から逃亡したようで…」
「ルイ副団長〜〜!!!!!」
「今頃セリオス怒ってるだろうな〜」
部下が食事を受け取ってる隙に窓から飛び出して逃げ出すことに成功した。ま、戻ってきたらまた怒られるんだろうな〜。でもあの量の仕事は流石にやる気が湧かないんだよな〜。
「え〜と10年前の行方不明者の資料は、っと。あったあったこれだ」
セリオスは何か知ってるような感じだけどな〜んか隠してるよな〜。あのセリオスが隠してるってことはよっぽどのこと。セリオスは隠し事はしない主義の人間だから何かしらあると思う。
「え〜っとダ、ダ……。ありゃないな。う〜んそしたら徴兵者の方のリストかな〜」
こっちのリストは10年前のウォルトカリアとの大戦で徴兵されて大戦で死亡した者とそのまま見つからなかった者のリストだ。犠牲者自身は少なかったからこっちリスト方が薄いな。行方不明者の方は人攫いにあった人間も含まれてるし仕方ないかなぁ。
「ありゃ?こっちにも載ってないや。ん〜おかしいな。ますます怪しい…。セリオスのこともあるけど資料までにも載ってないとするともしや国絡み?セリオスが黙秘するってことはセリオスよりも上の人間…。これは捗るな〜。久しぶりに頑張っちゃうか〜」




