55話 12年前の少年
〜12年前〜
「ハァー…まさかタバコ切らしちまうなんて。あー日光が目に染みる‥…」
俺は切らしたタバコを買いに店の外に出ていた。普段から店の外に出る機会がない俺にとって朝日は毒の様なものだ。人通りの多い道は賑やかで精神が削られていく。
「あ、あの!すみません!!」
「うおっ!なんだお前」
急に話しかけてきた男。紫の目の色に髪は金髪でサイドを三つ編みにしている。見たところ14から16ぐらいの歳か?この辺じゃ見たことねぇ奴だが…。
「ここら辺に薬を売ってる場所ってありますか!」
「薬屋?やっぱお前ここら辺の奴じゃねぇのか」
「お願いします!急いでるんです!」
コイツ急いでるみたいだな。走ってたのか息も切れて汗もかいてる。そこまで急いでるってことは中々のことなのかもしれねぇ。仕方ねぇな俺も暇じゃねぇんだがな。
「ここを曲がってその後の曲がり道を左に行って真っ直ぐ行けば薬屋だ」
「???」
「分かんねぇか…。着いてこい。連れてってやる」
「!!ありがとうございます!」
言葉で言っても分かんねぇみたいだから店まで連れってやることにした。それにしてもコイツどこから来たんだ?服装は街に住んでる人間のものじゃない。着古した上着に裾が少し破けてるズボン。そして指出しの手袋。村とかで狩りでもさしてたのか?最近は魔物や魔獣が大人しいからいいが、村からよく街に来たな。
「お前、名前なんて言うんだ?」
「僕ですか?僕はダリアって言います。おじさんは?」
「おじさん、ハァ…まあいいが。俺はレオンだ。ちなみに俺はまだ30だ」
「あ、すみません!道、教えてくれてありがとうございます。このままお店見つけられなかったと思うと…」
「そこまで急ぐ必要あんのか?汗すげぇぞ」
「妹とお父さんが病気で今も家で待ってるんです。早く薬を届けてあげないといけないんです」
「医者はどうしたんだ。お前がそこまでして薬を買いに行かなくても医者を呼べば済む話じゃねぇか」
「……僕の家は家族以外の人を呼んじゃダメだし家の外にも出ちゃダメな決まりなんです」
「ハァ!?なんだそりゃ!病気にかかってもそんな決まりを守んのかよ!」
「それが両親が決めた決まりなんです。僕が薬を買いに行くのもお父さんは反対してたので」
「そこまでするのかよ…」
「僕には両親がなんでそんな決まりを作ったのかは分からないけど、両親が決めたことならきっと何かあると思うんです」
どうやら何かと複雑な事情のある家みたいだな。コイツの様子を見てると本当に街に来るのも初めてなんだと分かる。歩きながら街のいろんなところを見回してる。この年ぐらいなら一度や二度街には行ったことあんだろ。
「まさかお前成人の儀も受けてねぇなんてことは……」
「成人の儀?なんですか、それ??」
「おま、嘘だろ!お前年は!」
「年ですか?14です」
「じゃあ来年じゃねぇか。だとしたら知ってねぇのは可笑しいだろ」
「で、成人の儀ってなんですか?」
「成人の儀はなぁ。15歳になったら教会で成人の儀を受けんだよ」
「へぇー。僕知りませんでした。お父さんも教えてくれなかったので」
「お前の親父どんな奴なんだよ。顔が見てぇよ」
「僕のお父さんは立派な人ですよ!クマとだって正面で戦って勝っちゃうんですから!」
「へぇへぇ。そりゃすげぇな」
「本当なんですからね!!」
コイツ相当自分の親父に入れ込んでやがんな。普通の人間がクマと正面で戦って勝てる訳ねぇだろ。超人かなんかか?
「ほらついたぞ。さっさと買って家に帰れ」
「ここまで本当にありがとうございました!それじゃあ!」
そういうとアイツは店の中に入って行った。さて、俺はタバコを買いに行くか。さっさと買って店に戻んねぇと仕事が溜まっていく一方だ。




